第103話 自由の象徴が敵?!
マギの計算によると約6時間後にこの地球へ巨大隕石が衝突するということだった。
このままではインチキ達がいる宇宙ステーションにも被害が及ぶということで、マギがインチキとエドルドに連絡を取り、すでに安全地帯に向けて宇宙ステーションを移動させている。
全てが太陽光からの自家発電であるステーションはため込んだ電力によりジェットエンジンを動かして宇宙空間を移動することが可能なのだ。
とりあえずそっちはいいとして、問題はこの地球だ。いつの間にか大量の天使族と共にAIマネシスがアメリカに来ており、アメリカを一瞬で落としてしまった。
その事実を世界各国は同時に知ることになり、この日本でも緊急報道を行っている最中だ。各国は一同にあの強力な軍事国家であるアメリカを一瞬で滅ぼしてしまった正体不明の者達を非常に恐れていた。
そして決してやってはいけない判断を行ってしまうことになる。
【ボス、核保有国である中国、イギリス、フランス、ロシア各国がアメリカに向けて核ミサイルを発射しようとしています。】
「直ちにやめさせなさい。そんなものでアイツらは倒せないわ。逆に滅ぼされるだけよ。」
【御意。各国の防衛システム全てに侵入して、破壊します】
マギは各国の防衛システム内へハッキングを行い、各ミサイルの発射を次々に止めていく。
――このマギさん……簡単に世界を滅ぼせるわね。
「さて……それじゃあ、行くわよ。皆私に捕まって!」
私達は全員アクシスと手を繋ぐと、アクシスはアメリカに向けて空間転移を行った。
――アメリカ来たぁ……私初めてだよぉ。
「あらそうなの? なかなか面白いところよ。」
「ど、どどどどどこなのここ?!」
「マヌケ落ち着くんだよ! 大丈夫だから。」
「さて、各自行動開始よ。」
龍魔の5人は近くにいる天使族の排除を行う。私達はAIマネシスの元に向かいながら天使族をなるべく排除する。
――ここは人数がいた方がいいかもね。
「暗遁、闇分身の術」
私は9人の闇分身体を作成し、5人の龍魔達と共にバラバラに散る。
そして私(本体)、乙羽、マヌケ、アクシスの4人でAIマネシスの元へ向かった。AIマネシスは自由の女神の高く突き上げられた右手のトーチの先に立っていた。
「うふふふ。やっと現れましたか。」
「アンタ、どうやってこの地球へ現れたの? 私ずっと関知していたはずなんだけど?」
「企業秘密ですよ。さて、いきますか。具現しなさい、ガルガドス、リアライゼーション」
AIマネシスは自由の女神に手を付いて、魔法を発動する。すると、巨大な自由の象徴である自由の女神がゆっくりと動き出した。そして、右手に持っていたトーチから炎の閃光が放たれる。
私達はそれを空中へと飛び立って回避するが、地面に当たった炎の閃光により大爆発が起きる。
「んな?! 自由の女神が……一体どういうことなの?!」
『AIマネシスはあの巨大な像の内部を作り替えて巨大なロボットへと具現化したのですわ。』
――あんなもん報道でもされれば一気に大騒ぎだね……。
「そこは大丈夫よアンブちゃん。各国が情報を得ようとしているけど、マギとあなたのお母さんが抑えてくれているわ。」
自由の女神が左手に持っていた本を開くと、そこへ魔法陣のような光が現れる。すると、巨大な触手が私達を襲う。その間にAIマネシスはどこかに飛んで行ってしまった。
『皆さん、ここは二手に分かれた方がいいですわ。あの巨大なロボット像はマヌケさんと乙羽さんで対処しましょう。アクシスと桜夜さんはAIマネシスの方をお願いします。』
「マネシス……任せていいのね?」
『うふふふ、誰にものを言っているのです? それよりもそっちを任せましたよ。アクシスとウラシス、そして桜夜さん』
「……乙羽、マヌケ。」
「桜夜、こっちは大丈夫だから!」
「マヌケの言う通りなんだよ! 早く終わらせて皆で帰るんだよ!」
「うん。」
巨大な自由の女神ロボはマヌケと乙羽に任せて、私とクズ神アクシスはAIマネシスの後を追うように飛び出した。私は感知をフルに発動し、アイレンズに位置を表示させながらそこへ向かって全力で移動した。
そして、先ほどとはかなり離れた場所でAIマネシスは止まり、私達は追い付くことが出来た。
「やはりあなたが来ましたね、アクシス。こちら想定通りにアクシスとマネシス2人の神の戦力は半分に出来ました。それにアクシス、あなたの力は想像以上に低下しているようですね。今のあなたでは私には勝てませんよ。」
「私1人なら確実に無理かもね。でも今の私にはアンブちゃんも一緒なのを忘れてない? あなたは神である私達だけを注意しているようだけど、人間の力を侮っていては足下をすくわれるわよ?」
「忍殺……コンボ」
私は瞬時にAIマネシスの背後に回り、龍雷拳を打ち込むがそれを機械の触手で阻まれた。しかし、立て続けに桜雷拳を打ち込むと、触手が内部から破壊される。そのまま次々に忍殺拳で触手を破壊していくが、どんどん触手の数も増えていく。
「まぁあの子は触手で遊ばせておけばよろいいでしょう。人間の子供はおもちゃが好きなようですし。ふふふふ。」
AIマネシスは私には目もくれず、アクシスへと向かっていく。そして、巨大なライフルを具現化すると躊躇なく打ち込んだ。
「無限キャノン」
「漆黒の闇に消えなさい、ダークロック」
アクシスが突き出した掌には漆黒の渦が現れ、AIマネシスの無限キャノンを吸収した。しかし、それと同時にアクシスの背後には長い剣を持った小さなロボットが具現化されて迫っていたが、アクシスはそれに気が付いていなかった。
「雷遁、雷光石火の術」
私は無数に迫りくる触手を稲妻の如く弾け飛ばし、瞬時にアクシスに迫る小さなロボットを蹴り飛ばして破壊した。
「アンブちゃんッ?!」
「あら、あなたがそこまで早く動けるなんてねぇ。ちょっと予想外でしたわ。」
「……クレープ」
「この戦いが終わったらいくらでも好きなだけ買ってあげるわよ!」
「……約束」
俄然やる気を出した私は、アクシスと背中合わせにAIマネシスと対峙した。
*****
乙羽とマヌケはロボットになってしまった自由の女神を何とか行動不能にしようとしていたが、一筋縄ではいかなかった。
この巨大ロボットは装甲がとんでもなく硬いのでマヌケの銃撃も乙羽の斬撃も全く通らないのだ。更に、このロボットは魔動力による強力な魔法までも発動してくるので、それを防ぐだけでも大変だった。
しかし2人は諦めずに何とか打開策を考えている。
「スナイパーモード、ブラスターカノン!」
乙羽が自由の女神を引きつけている間にマヌケが魔動力を全開まで充填した状態でブラスターカノンを打ち込んだ。その強力な砲撃により自由の女神は大きく体制を崩して後ろ側へ倒れ込んでしまったが、すぐに癒しの魔法であるヒーリングを自身へ発動して傷を回復させてしまう。
「そ、そんなぁ……」
「もう打つ手がないんだよぉ……」
2人の姿はすでにボロボロの状態であり、肩で息をしている状態であった。
『お2人とも、私に作戦が有ります。』
マヌケのスマートウォッチから姿を見せたマネシスは2人に向かってそう言葉を発した。