第97話 絡みが凄いのよ
私の目の前にはいやらしい吐息を放っている美女3人。
「ん……はぁ、はぁ」
アクシスの息遣いも上がってきている。
――もう少しってことなんだろうねぇ。はぁ……まさか女の子相手にこんな恥ずかしいことをすることになるなんて。眠れる姫を起こすのは王子様の役目なのに……。
私は意を決してアクシスへ口づけを行う。そして、乙羽とマヌケがやっていたように自身の舌を侵入させる。すると、私の舌に自分の舌を絡ませてきたかと思ったら、急激にそこから生命力や魔力などをもの凄い勢いで吸われてしまった。とんでもない疲労感に襲われるが、何故だかとても気持ちいい。
アクシスは一際身体をビクンと大きく撥ねたかと思ったら、ゆっくりと目を開けた。
私はそれに安心して口を離そうとしていたのだが、ガバッと頭を掴まれてそれを拒まれた。とても長い間口内を弄り回されてしまったので、私はもう体に力が入らず一歩も動けない程に足がガクガクの状態になっていた。
「うふふふふ、とっても美味しい生命力でした。おかげで助かりましたわ、アンブちゃんにヘタレちゃんにマヌケちゃん。」
『全くアナタはいつになっても吸い方がお子ちゃまで乱暴ですわね、アクシス。』
「んなッ?! マ、マネシスなの?! なんでアンタがマヌケちゃんの中にいるの?! その子が神機の力を受け継ぐ者だったの?! 私はてっきり、コピーされただけの子かと……」
『おほほほほ。これだからアナタの幼稚な頭は。』
《再会を喜んでイチャイチャしているところ悪いけど……来るわよ。》
「まだ、完全には程遠いけど……この子達が守ってくれた命、今度は私が守る番だね。」
「……一足遅かったですか。まぁいいでしょう。ここで死んで滅んでしまいなさいな、神邪アクシス。」
クレープ屋さんの外にはマネシスの姿をした邪悪なオーラを纏ったAIマネシスが現れた。
「私の大好きなその姿でそれ以上、好き勝手しないでくれない? 滅ぼすわよ?」
「ッ?!」
アクシスは空間転移を行い、AIマネシスの背後に移動する。それを見越していたかのように後ろへ拳銃を構えているAIマネシス。
アクシスが現れたその瞬間に引き金を引くが、その弾丸はアクシスの前でピタリと停止する。そして、それを何倍もの力に変えて逆にはじき返しAIマネシスの触手を吹き飛ばす。
しかし、それには全く構わずにアクシスの脇腹へ回し蹴りを行う。それにより海の方へ吹き飛ばされて大きな水しぶきを上げるが、アクシスはその勢いをそのまま利用してまた空間を移動し、AIマネシスの頭上に現れて鋭い蹴りを入れる。
今度はAIマネシスが海の方へ飛ばされて大きな水しぶきを上げることになった。
「カースドプリズン」
アクシスが両手をパンッと叩いたと同時に、AIマネシスが飛ばされた海の一帯が瞬時に氷付く。
「スペースジップ」
AIマネシスが氷付いた部分だけに掌を向けて空間支配で持ち上げると、その周辺の空間を圧縮してガチガチに締め上げていく。どんどん氷にもひびが入っていくが、AIマネシスは涼しい顔をしていた。
「おほほほ。その様子ではまだまだ力が戻ってはいないようですわねぇ。しかし……簡単には殺せませんか。仕方ありません、まずはあの方の元へ戻ることにしましすか。そして、私が作ったあの兵団をこの星へ差し向けることにしましょう。」
「本当ならあなたをこのまま滅ぼしてしまいたいところなんだけど……それは無理なようね。でも、簡単に事が進むとは思わないことね。」
「なかなかいい強がりですわねぇ。アナタお1人で何ができるのでしょうか? せいぜい余生を楽しむとよろしいですわ。」
AIマネシスはそう言うと、瞬時にアクシスの氷を破壊して上空へ飛んで行ってしまった。
「流石に……疲れたわ。」
アクシスが地上へ向けて逆さに落ちていくところを、私は何とか空間支配で落下スピードを遅くしてふわりと地上に降ろした。
その後、私達はそれぞれの家に帰えることにした。
ヘロヘロで全員動けなかったので、スマコからお母さんへ連絡を取ってもらった。すると、とんでもない速さで迎えに来た両親。
私の顔を見るなり、お母さんは涙を流しながらギュッと抱きしめて「おかえりなさい」と言ってくれた。
その後、一旦乙羽を自宅まで送り、マヌケとアクシスは私の家で寝かせることにしたのだ。私の部屋にはベッドが一つしかなかったが、私の異空間内のログハウスのベッドと入れ替えて対応した。
「それじゃあ、まずは3人ともしっかり休みなさいね。お話は起きてから聞かせてね。」
お母さんたちはそう言った後、部屋を出て行った。アクシスはもうぐっすりと寝息を立てている。余程疲れが溜まっていたのだろう。
「……あれが桜夜の両親なんだね。凄く良い人達だ。」
「うん。」
「……それにここ、桜夜の匂いがいっぱいしててとっても幸せな気分。」
いつも通りにがっちりとくっ付いてくるマヌケ。私はその柔らかい体の温もりに包まれながら幸せな気持ちで眠りについた。
――ん? なんだ……この感覚は?!
眩しい朝日に照らさせて目を覚ました。
すると、両手に抱き着くように裸で眠っている美女が2人。
――またなの……か。って、え?! 私まで裸じゃないの!
《さすがは桜夜ちゃんですね。マヌケちゃんはいつもの事ですが、神であるアクシスまでもあんな顔にしてしまうとは……恐れ入りましたよ》
『全くですわ。あのような人同士の交わりを私は初めて見ましたので些か興奮が抑えられませんでしたのよ。何といってもあのマヌケちゃんとアクシスの幸せそうなあの顔は……おほほほ。』
私は変態神2人の会話を華麗に無視して、身体を起こす。そして、近くに転がっていた変化服のキューブを起動して瞬時に服を着る。
「さくちゃん? 起きてるかしら?」
そう言いながら部屋に入ってくるお母さん。そして、無残なマヌケとアクシスの姿を目の当たりにする。
「……さくちゃん、あなたもなの?」
「え?」
私はお母さんの言葉に思わず、反応してしまった。
「お母さんもね、よくこういう経験があるのよ。お友達が隣で寝ていたら何故か起き時に裸だし、こんな感じで幸せそうな顔で失神しているのよ。なんでなのかしら?」
「ッ?!」
私とお母さんは見つめ合い、がっちり同士の証である握手を交わした。
《桜夜ちゃんのあの寝相は……お母さん譲りだったのね》
『末恐ろしい親子ですわね』
因みにスマコであるウラシスの声やマネシスの声はお母さん達には聞こえない。そして、マヌケとアクシスはお友達ということにしておいた。
更に私の心の声はウラシスとアクシスには聞こえるが、乙羽やマヌケやマネシスには聞こえていないのだ。