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第94話 マネシスの想い

《まさか……本当にマネシスなのですか?!》


『何度も同じこと言わせないで下さいまし、私ですよ。それよりもアナタの変貌ぶりにこちらが驚いているところですよ? アナタそんなお喋りだったのですか?』


《それはまぁ後で話しましょう。それよりもまずは……》


『そうですわね。まずはアクシスを助けなければいけません。あの子はもう……死ぬ寸前ですわ。』


《なんですって?!》


――一体どういうことなの?!


 マネシスの話によると、まだ事件が起きる前、突然神聖が自分の前に現れたかと思ったら、すぐに手刀で身体を貫かれてしまったそうだ。そしてその時に、「呪いの種」を身体の中に植え付けられてしまったそうだ。それはマネシスの生命力を極端に奪いながら成長を続け、最終的には自身の命を食い尽くして身体を乗っ取り、その後邪悪な自我を発芽させるものだった。


 そして神聖の姿をしたその者は、他の神である4人の命を奪わない代わりに「生命の誕生とそれらが住む星を作れ」と言ったのである。それに抗えるだけの力はもちろんマネシスにはないし、大事な親友たちの命を握られてはどうすることも出来なかった。


 神聖の姿をした者の目的は、マネシスが作り出した生命(人間)を自身の兵士達へ食用として提供し、兵士達を強化する為に利用しようと考えているいた。


 生命という魂は驚異的に悪魔の力を強化することができるものであり、更に一度作ってしまえば、勝手に繁殖を繰り返すので悪魔たちからすると人間は便利な食料なのである。


 神聖が生命の誕生を禁忌にしていたのにはこういった背景があったのだ。


 マネシスの様子がおかしいことにいち早く気が付いたモラシスはマネシスを問いただしたらしい。観念して全てを薄情すると、怒り狂ったモラシスはマネシスにも黙って、たった一人で神聖の姿をしたその者に挑んでしまった。その結果、惨殺されたのだった。


 そして、生命の誕生をやっとの思いで果たしたマネシスは3人に向けて、事の真相を記したメッセージを地球へ残し、自らの命と引き換えに神聖の姿をした者を暗殺しようとしていた。だが、それよりも早くウラシスとツキシスがその者と一緒に自分のところへやってきてしまった。


 マネシスの姿を見て驚く2人の後ろで、今にも黒い槍を突き刺そうとする神聖の姿。必死な叫びも虚しく、2人はそのままモラシスと同じように磔にされて、酷い苦しみを与え続けながら惨殺されてしまった。


 もちろんマネシスは必死に2人を助けようとしていたのだが、到底1人の力ではそれは叶わなかった。


 後悔と深い悲しみから自分を責め続けることしかできなかったマネシスは、生きる希望も失っていた。いっそのこと大好きなアクシスの手で葬ってもおうと考えた。いくら邪悪な意思を持った者が自分の中から生まれようと、自分の分身である以上はアクシスには勝てないはずだと思ったからだ。


 しかし、予想に反してアクシスはマネシスを殺すことはせず、自身の異空間へ収納してしまった。アクシスは闘いの中でマネシスの身体の中の邪悪なオーラとそれがマネシスの生命力を奪っていることを感じ取ったようだ。そこで自身の異空間へ収納して、時間を止めた。そうすることで、マネシスの中の闇を発芽させないようにしたのだった。


 しかし、それはアクシスにとって想像を絶する苦しみと魔力の消費を続けることになるが、自身の生命力を犠牲にしながらも長い間必死に耐えていたようだ。それでもアクシスの力の低下と共に少しずつ時間は経過していくことになる。そして、永久的ではないアクシスの力も残り少なくなっており、儚い命の灯は今にも消えようとしているらしい。


 異空間に入れられたマネシスは、残り少ない寿命で最後の力を振り絞り、この星と人間を作り出して息絶えた。それはやがて自身の力を継承する者を誕生させて邪悪な者を倒す為、そして一番の目的であるアクシスの命を守る為に。


 そうしたマネシスの想いと力を伝承して産まれたのが、マヌケだった。


 マネシスが息絶えた後、すぐにその邪悪な芽は漆黒の花を開いて誕生した。マネシスの姿と神機の力を持ち、その心は邪悪な闇に支配されているAIマネシスとして。


 AIマネシスは異空間から脱出する前に、この星の人間全てを食用として強化した後持ち帰ろうと思った。普通の人間よりも強化した人間の方が生命力も魂も各段に上がるからだ。


 地下迷宮に魔物を作って人間と戦わせることで生体を研究し、やがて人間を機械人へと変化させ、更にはその上の天使族を生産することに成功した。それを量産しようとしていたところに、乙羽や私がやって来た。


 AIマネシスは時間の経過とともに邪悪な力が高まっていくことがわかったので、アクシスも時間を遅らせることをやめることは出来なかった。結果的に命を削り続けることになっている。

 AIマネシスはアクシスの弱体状態を確認する為に、異空間内から定期的に超遠距離攻撃を仕掛けていたり、その攻撃に乗せて地球へ機械人を送り込んだりしていたようだ。


 それがヘタレや私を消滅させたあの光。


 あの時は少し座標がズレてたまたま乙羽に当たってしまったらしいが、その時に乙羽の中に眠る神光の力をAIマネシスは感じ取った。


 それを利用すれば異空間内から脱出することができると考えたAIマネシスは乙羽を異空間内へ引き込んでしまったのだ。


――なるほど……これが全ての真相だったんだね。


《あなた達を巻き込んでしまってごめんなさい。桜夜ちゃんやマヌケちゃんには辛い思いばかりさせてしまいました。》


『私からも謝らせて下さい。これは私達の問題だったのに……』


「別に……いい。」


「アタシも気にしていませんよ。桜夜やヘタレに出会うことができたから! アタシにとってそれはかけがえのないことですから!」


《桜夜ちゃん……》


『マヌケちゃん……』


――それよりも、どうしたらアクシス……あのクズ神を助けられるの?!


 ウラシスとマネシスの話では、先ほどの乙羽の攻撃でアクシスはもうほとんど力は残っていない状態であり、さっきの急激な異空間の崩壊もアクシスの制御からは外れていたようだ。そして、おそらくは地球上のどこかで倒れている。そしてそれは乙羽も同じことであり、アクシスとの力の衝突でおそらくは天上界で倒れているようだ。


 そして、もう30分ほどでこの時空の狭間は無くなり、この星は宇宙空間へ飛び出すとのこと。すると、用が無くなった乙羽は確実に殺されるはずなので、その前に乙羽を助け出す。その後に、地球へ行ってアクシスを助けるということで話はまとまった。


「マネシス、ヘタレとAIマネシスがいる天上界はどこにあるの?!」


『それはこの丸い星の中核地、つまりは迷宮の最下層よりも更にずっと地下にあるはずですわ。』


《国王のお2人と勇者候補の皆さん、そして龍魔の5人は今の内にあちこちに散らばっている各国の人たちをこちら側へ集めておいてください。この星の国民約4万人全てを一時的に桜夜ちゃんの異空間へ収納します。》


「わ、わかった!」


《それでは行動開始です。》


『……それにしてもウラシス、やっぱりあなたがこんなに喋っているのがいまだに信じられませんことよ。』


《もともと喋ってはいましたよ。どこかの誰かさんみたいに心の中ではね? 桜夜ちゃん。》


――いやいやいや、引くわ~。

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