第93話 具現せよ、ガルガドス
やがて異空間の開放が始まり、星の崩壊が始まり出した。
人々を迷宮内へ避難させた龍魔の5人、ヨゴレにロリババアになんちゃって勇者、そしてインチキにエドルド、全員がログハウスの前に立っていた。
皆も危ないから迷宮へ入れと言っておいたのに、それはしないようだ。ただ、じっと私達を見つめて、立ち尽くしている。どうやらこの星の行く末を見守るようだ。
――全く……突然変なところに連れてこられるわ、身体を改造されるわ、なんども死ぬ思いをさせられるわ、変な奴らに付きまとわれるわ、星が滅びそうになってるわ……大事な親友と出会えるわ、ホントここに来てからおかしなことばかりだよ。
《だから守りたくなったのでしょ?》
――ふふふ、まぁね。
「ということでいくよ」
「うん! 桜夜、いつでも一緒だよ!」
私達は手を繋ぎ、それぞれに力を開放する。
「雷遁、電界壁雷の術」
「神機フル装備モード」
私は地面に手を置き、広範囲に電磁波を発生させる。すると、私を中心に電磁波のドームが広がっていき、やがてこの星全てを囲うように電磁波の壁が出来上がる。そしてこの星は時空の流れを次元を超えて移動して行くが、その途中で時空間にある無数に星の屑が隕石のように降り注いでくる。それはまるで大流星群のような幻想的な光景でもあり、思わず見とれてしまう程だった。
「バーストブレイカー!」
完全フル装備で起動要塞と化しているマヌケから、ミサイルやレーザーなどが無数に発射され、その隕石を撃墜していく。そして粉々になった流星群は私の電磁波の壁に当たり消滅していく。
そしてそれは何度も何度も繰り返されることになる。
《いい感じです2人とも! このまま耐えて下さい!》
――だ、だけどこれ……マジできつい。
そう、この星を丸ごと包み込む電磁波は当然想像を絶するほどに魔力を消耗するし、疲れる。それに小石程度の隕石の衝突でもあちこちで地上の建物を崩壊させてしまう程の威力を持っているので、それが迷宮内へ届く前に全て弾き返す必要があるのだ。
そして、マヌケも同様に基本バーストブレイカーは全ての武装を一斉放射するのだ。放たれるミサイルやレーザーも魔動力で具現化しているものであり、1日に3回撃つのが限度なのだ。それをもう5回は発射している。
マヌケはフラフラしながら今にも倒れそうな勢いだが、一斉放射をやめることはない。しかし、少しずつ撃ち漏らしが増えていき、私の電磁波にもどんどん直接隕石が当たる。
そしてこの電磁波は神経を研ぎ澄ましておかないと繋げておくことは出来ない為、隕石の衝撃波は少なからず私までダメージを与えるのだ。巨大な隕石の衝突は身体を弾丸で貫かれたような痛みを伴うものだった。
「きゃああ?!」
私は初めて苦痛を声に出してしまった。
「桜夜?! ご、ごめんね……アタシが撃ち漏らしたから」
「……だ……大丈夫」
《2人とも……ごめんなさい、今の私には何もできない……》
「バースト……ブレイカー!」
マヌケはまた迫りくる無数の流星群へ6回目のバーストブレイカーを放った。
「はぁ……はぁ……はぁ……そん……な」
マヌケが放ったバーストブレイカーは何とか流星群を全て撃ち落とした。しかしその後ろに迫っていたのが、この港町を丸ごと飲み込んでしまうほどの大きさの隕石が3つ。これはいくらマヌケのバーストブレイカーでも消滅させることは不可能だった。
《いけない! 桜夜ちゃん、今すぐに電界壁雷を解くのよ! あれは受け止めきれないわ! 下手すると、電界がショートしてあなたの中の神経回路が破壊されてしまうわ!》
――でも私がこれを解くとこの星が崩壊してしまうでしょ?
《そ、そうだけど……》
「だから……いや」
「うおぉぉぉ、ツインバスターカノン!」
マヌケが必死に高出力レーザー砲で迫りくる隕石を狙い撃つ。しかし、無残にも少し欠ける程度で隕石の勢いは止まらない。そして気が付けばマヌケの魔動力もいつのまにかすっからかんになっていたのだ。カチカチと引き金を引く音だけが虚しく聞こえる。
――アタシは……なんて無力なの。また誰も助けられないの? アタシには無理なの?
――あなたはそうやって自分を責めているだけでいいのですか?
「え?! 誰?!」
――あなたの大事な人を守りたい気持ちはそんなものなのですか? また目の前で見殺しにするのですか?
「ち、違う! アタシは……アタシは!」
――解き放ちなさい。アナタは……。
「我は神機の力を受け継ぐものなり! 具現せよ、ガルガドス!」
マヌケの魔動力が急激に上昇したかと思ったら、突然機械で出来た巨大なロボットが1体現れた。それは人型で真っ白なボディに赤と青と緑の装飾が施されており、背中にはマヌケと同じような機械式の天使の羽根を生やした見た目がとても奇麗なロボットだった。
《あ、あれはガルガドス?! 紛れもないマネシスの分身……マヌケちゃんあなたは……》
「桜夜流、分身の術だよ! いけ、無限キャノン!」
マヌケは自身と、そのロボット分の巨大なキャノン砲を具現化して構え、引き金を引く。すると、迫りくる3つの巨大な隕石を目掛けてキャノン砲が発射された。
それは見事に隕石へ直撃し、大爆発を起こした後にバラバラに砕け散ったがそれがまた流星群のようにこの星に降り注ごうとしていた。
「ガルガドス! モードチェンジ、ポセイドン! 小型レーダーミサイル全弾発射!」
ガルガドスは全身に大量のミサイル砲を搭載した形へと変形し、その全てのミサイル砲のハッチを開けて全弾発射した。
発射されたミサイルは途中で何度も分離しながら広範囲に広がり、大量の流星群を全て消滅させてしまったのだ。
《こ、これではまるでマネシスの闘い方ではありませんか……そこにいるのですか? マネシス……》
しかし、残った1つの巨大な隕石がそこまで迫っていた。
「ガルガドス、いや……マネシス。一緒に戦おう!」
――はい、行きましょうマヌケさん。
「神機、アルティメットモード」
ガルドスは、マヌケの身体に合わせて小さなギアメタルに変化した。それはどんどんマヌケの身体に装着されていき、それはやがて一つになる。
「グランド・ゼロキャノン!」
マヌケが持っていた2丁拳銃が形を変えて1つにドッキングし、その銃口が巨大化する。そして引き金を引いた瞬間に途轍もない威力の高エネルギー粒子砲が発射される。
それは巨大な隕石をも飲み込むような勢いで全てを消滅させてしまった。
――いやいやいやいやいや、引くわぁ! なにあの威力?!
《マネシスの最終奥義まで……本当にマネシス、アナタなのですか?》
『……久しぶりですね、ウラシス。』