約束
「少し待てろ」
彼女(フードで顔が隠れていて、声だけの判断だけど)、スピカさんは小さく呟くと、僕たちがいる通路の角から飛び出て尋常じゃなスピードで壁をかけ走る。
その先には、2人の山賊が部屋の入り口に立っているけど壁を走るスピカさんの姿にまだ気づいていないのか楽しげに会話している。
そんな山賊にスピカさんは自身の武器である銀色の“じゅう”を奥側のいる男に向け、その先端が輝いた時には奥の男は崩れ落ち、それに気付き手前側にいた男はこちらを振り向くけど。もう既に男の懐まで走り寄ったスピカさんはそのまま手に持つ“じゅう”の持ち手部分で振り向いた男のあごを的確に打ち抜き意識を刈り取った。
驚く事に彼女はそれを僕が瞬きをする間もないくらい、一瞬で事も無げに行ったんだ。
僕の目でスピカさんの動きを見ようとしたのだけれども、全然目では追いきれずにただ白い物が凄い速さで移動して位にしか映らなかった。
そんな僕たちにスピカさんのした動きを教えてくれているのが妹のファルの腕の中にいる小さな白い生き物のアルさんだ。
彼(?)も不思議な生き物だ。人の言葉を理解しあの最強の生物と言われているドラゴンを小さくした姿に、身体はファルの話だとクッションよりも軟かいらしく、ファルが強く抱き締め過ぎた所為でアルさんを気絶させかけた時は驚き冷や汗が止まらなかった。
でも何とか僕とスピカさんでファルを宥めて強く抱き締める事をきつく注意し、軽く抱き締めるよ言い含めてからアルさんに頼み再びファルに抱かせて貰っている。
それでも、不安なんだろうか時折アルさんがチラチラと不安げな視線を送ってくる。
そんな姿を見るととても最強の生物とは思えない。
この不思議な2人が僕たち助けに来てくれた、今が夢や幻なんじゃないのかと思えてしまう。
ほんの少し前で僕たちここの山賊に捕まっていた。しかも、捕まえた僕たちを閉じ込めていた部屋に突然現れた細身の男が槍を片手に僕たちに襲い掛かってきた。
ファルを守ろうと僕は全力で抵抗したが槍で石突きで殴打され、穂先で切られ、刺され、嬲り者にされてファルの首には壁に繋がれた鎖の付いた鉄の首輪を嵌められた。
さらにファルの前にボロ雑巾みたいになった僕をぶら下げ、男はファルに「この子を返して欲しけりゃ取り来なよ!」金属を引っ掻いたような甲高い笑い声を漏らしながら言う。
それを聞いたファルは、僕へと走り手を伸ばすが鎖の付いた首輪の所為で僕まで届かない。それでもファルは首輪を首に食い込ませながら必死になって手を伸ばし続け、男はその光景見て高笑いしている所で身体中の痛みから僕の意識は途切れた。
次に目が覚めた時には身体の痛みは無く、首輪の無いファルが僕の顔を除いている姿で。
死んでしまったのだろうか。
ぼんやりとした頭でそんな考えがよぎったけど、周りの景色があの洞窟の部屋だと解ると意識がはっきりして直ぐさまに飛び起きて、ファルの両肩を掴み大丈夫なのか問い詰めてしまう。
目覚めたばかりで気が動転している僕の事を宥めたのがフード深く被ったスピカさんだった。
初めは、フードで顔を隠していた怪しさと僕よりも小さな子供が助けに来たなって言われても信じる事が出来なかった。
でもファルが間に入って僕のケガの事や僕たちを襲った細身の男が部屋の隅で泡を吹きながら倒れている姿を見て信じる事は出来たのだけど、こうしてスピカさんが戦う姿を目撃すると驚きが隠せない。
自身よりも倍の身長の大人の男を“じゅう”を使っているとは言え、一発で気絶させているのだからあの小さな身体のどこからそんな力が出せるのか僕には解らない。
そんな、すごい力を持ったスピカさんは通路に気絶した男たちの装備をはぎ取り両手両足をきつく縛りあげるとこちらに手を振り、僕たちを呼んだ。
「これで残る数は5名だな。」
僕たちが近づいた時にスピカさんはそう呟いていた。
そう、彼女は驚くべきことにここに気絶している2名を含め、25名もの山賊たちを気絶させ生け捕りしていると言う。
でも、なんで山賊を殺さず生け捕りにしているのか疑問で転がる山賊を見てしまう。
「どうかしたのか、ルクス?」
僕の様子に気付いたスピカさんが心配して声を掛けてくれたので僕はその疑問を口にした。
◇
「どうして、山賊を殺さないんですか。生け捕るよりも簡単でしょ。」
そう述べるルクスの表情には若干の怒りが見え隠れしている。
「・・・そうだな、これは俺個人的なモノだが君たちみたいな子供にそんな現場を多く見て欲しくないからかな」
「でも、そんな・・・こいつらは、多くの人を殺してるんですよ。」
「・・・ルクス、君はこいつらを殺したいのか?」
「ッ!?」
俺の言葉にひどく動揺をみせる。
そりゃルクスたちは、ここの奴らに親を殺されてから連れて来られたんだ。こいつらを怨んでいてもおかしくない。
憎いヤツを殺したいと思っても人間なら当然の感情だし、それを第三者である俺が止めるのはお門違いなのかもしれない。・・・でもなぁ。
「ルクス、君が奴らを殺したいと言うのなら、俺は止はしない。」
「スピカさん・・」
「・・でもな、ルクス。君にそんな事をしている暇はあるのかい?」
「え?」
「君には守るものと約束があったんじゃないのか?」
ハッとした表情をしたルクスが後ろを振り向くと、不安げにこちらを黙って見ていたファルの姿をとらえた。
「ファル・・・」
「・・・誰を憎むも怨むも君次第だ。それを他の誰かがとやかく言う事ではないけど・・ルクス、君には今一番にやるべきことが決まっていてそれを約束した人がいるんだろ。なら、こいつらなんかを構っている暇ないだろ。」
「・・・僕は、・・」
視線をファルと地面に転がる奴らを交互に見て、悩む様に顔を伏せて答えが纏まったのか顔を上げ真剣な表情で俺のを見つめ。
「スピカさん、僕は約束を守ります。ですから」
そう応えるルクスの俺を見る真っ直ぐな目には迷いは無かった。
「そうか。」っと俺は短く答え、明るい良い表情をするルクスを見てつい笑顔になてしまう。
「?!」
「どうした?」
「ハッ、あ、いえな、な何でもないですよ!」
「?」
何故かこちらを見て唐突に顔を赤らめるルクスに、俺は疑問に思い声を掛けるけどはぐらかすように首を左右に激しく振って問題ないと言う。
――うん?ホントどうしたんだ?俺の顔はフードで見えないはずだが・・・
結局、考えても答えは出ず
「スピカさん?お兄さん?」
『お前たち行かんのか?』
ファルとアルが不思議そうにこちらを見ている。
とりあえずルクスの事は後で考えてもよさそうなので、一旦考えるのをやめて部屋の入り口をみる。
この部屋のみ、他の部屋と違い鉄製の鍵付きの扉があり部屋を守るための警備も2人いた。
この部屋の奥に他の囚われた人たちがいるのは間違いなさそうだ。
ルクスとファルがいた場所には、子供だったからか扉も警備もなかった。
これは子供と大人の違いなのだろうか。子供なら逃げ出しても簡単に捕まえられるとでも思って警備が緩かったか・・おかげでルクスを助けるのが間に合ったのだけど。
「・・それは置いとくとしてアル、この扉に魔法の類は掛かっているか?」
『いや、なにも魔力は感じんな。』
扉には鍵が掛かっていて気絶させた2人にこの扉の鍵は持っていなかった。ので、少し強引だが扉を壊して入ろうと思ったがトラップ類が無いか調べるのたのだけど。
魔法系のトラップは今の俺じゃあ全く分からないのがアルの目には魔力の流れが観えるらしく、この手のトラップ看破出来るので俺は大助かりだ。
ただ、本人の魔力が高すぎる所為で自身に仕掛けられた罠などは注意しなければ分からないという欠点はある。だから前に簡単拘束する事が出来たのだが、アレはアル自身の慢心もあったからで、そこを俺がカバーしてやれば特に問題ないはず。
コンコンっと軽く扉をノックして中の様子をうかがうが特に返事は無い。
「少し下がっててくれ。」と言いルクスとファルを後ろに下がらせ《ニーソ》の刃を出すと鍵穴に突き刺す。
ジュッウゥと鍵穴が真っ赤に染まり、次第に刃の先端が奥に進み刃が中ほどまで進んだところで引き抜いてみるとぽっかりと穴が開き、軽く扉を押すとギィィと音を立て開く。
中を覗いて見ると複数人の大人の女性が檻に容れられ力無くうなだれていた。
更にその奥に1人だけ檻に容れらた少女がいて、その子が
「何者だ・・・ぶぅ」
と言葉を発した。
ストックが切れてしまいました。
ここからは多分不定期になるかもです。
出来るだけ早く仕上げるつもりですが11月は少し考えていて・・・とりあず何かありました活動報告にあげますのでよろしくお願いします。




