怒り・・・からの勘違い
「いぎゃああぁあぁあぁぁ」
子供たちの感動の場面をぶち壊す悲鳴が背後から部屋全体に響き渡る。
「ボ、ボボクのでがあぁぁああぁ!!」
一瞬の出来事だったためなのかサイコパス野郎は、やっと自分の片手が無くなった事の気が付き呻き声を上げた。
その響く声の反応した女の子が兄である男の子を抱きしめながらガタガタと震えだす。
俺はそんな震える女の子の肩に手を置き。
「大丈夫だからな。」
と安心させる言葉をかけ女の子を落ち着かせてから、ゆっくりと振り返り未だ手首から先が無い腕を見つめ叫び続けるサイコパス野郎に向け。
「喚くな、このサイコパス野郎!」
吠える様に一喝しすると俺の言葉に反応し叫ぶのをやめ、顔をだけぐるりとこちらを向きフード越しにヤツと目が合う。
「おおおお、お前!・・お前がぁぁあぁあ!!」
血走った目を限界まで開き、手を奪った俺に怨みの籠った憎悪の視線を向け、残った手に握った槍の穂先を俺へと狙いを定め。
「ぢねぇええぇぇぇええ!!」
金切り声の絶叫と共に突撃してくる。
勢いが乗って入るが真っ直ぐで単調な突撃だ。躱すのは簡単だが俺の後ろには2人の兄妹がいるので躱せない・・・いや、躱す必要すらない。
数十、数千以上の戦闘をBCW内で繰り返し行って来た俺にとってこんなぬるい攻撃は躱すまでも無いのだ。
慌てることなく流れる様にホルスターから《スターリィ・イーグル》を引き抜き、魔力を込めながらトリガーを引き、再び白く光かる棒を銃口から作りあげると迫る槍の穂先に軌道を合わせ切り上げた。
ジュッと焼ける音が響き俺に迫っていた穂先は斬り上げられ、しばし空中を彷徨ってから何もない地面へと転がった。
その出来事に突撃をかましたサイコパス野郎は走るのをやめ、驚愕なのか口を半開きにし槍頭の部分を失い残る長い柄を手から力無く落とした。
この銃口から伸びる白く光る棒は某、宇宙戦争や白い巨大ロボットに出ていた物をイメージした魔法だ。
BCWでの魔法はゲーム自体が作った既製品とプレイヤーたちが自身で考え編み出しオリジナルの二種類に加えて既製品を改良したものが存在する。
魔法職を極めて行けば誰しもがオリジナルを作れるようになる。逆に初心者は既製品で魔法で慣れたり改良でオリジナルモドキを作ったりする。
この魔法は既製品の《ファイアーニードル》と言う魔法改良したもので、本来は無数の炎の針を目標物に向け飛ばすモノだが俺はそれを一本に絞り熱量を高め、飛んで行かない様にし魔法使いでも近距離戦闘がこなせるようにと考えたものだ。
まぁ、BCWでは詠唱の遅さから使う前に攻撃されるので、殆ど使う事の無くお蔵入りしていたのだが、この魔石に事前魔法を組み込み、魔力とトリガーを引くだけで詠唱を破棄できるシステムのお陰でこうして実戦で使えるようになったが。
もともと副産物のシステムなので、上級魔法や長時間の使用には耐えられず魔石マガジン自体が消耗し最悪砕け散るだろう。
なのでこの《ファイアーニードル・ソード》長いので《ニーソ》も長時間使用すれば魔石マガジンを破壊する可能性があるので使用は控えたかった。
だが、この子供を嬲り者にして笑うこの男をただ電撃で気絶させるだけでは足りないと思った。
なので、武器を失い茫然と立つサイコパス野郎に魔法の刃を向け。
「さて、覚悟はいいな。」
静かだか激しい怒りの感情を込めて言い放つ。
「ひっ、ひぃいぃいぃいいい」
甲高い悲鳴を漏らしサイコパス野郎は滑る様に身体を捻らせ俺に背を向け部屋の出口に逃走しようとする。
奴が逃げる事など容易に想像していた俺は高くジャンプしそのまま天井を蹴り、サイコパス野郎の前に飛び出て逃走経路を塞ぎ「逃げれると思ったのか?」と言いながら再び刃を向ける。
サイコパス野郎は恐怖のあまり「ひぃ」と小さく悲鳴を漏らし、その場でもつれる様に後ろに倒れ少しでも俺から離れたいのか後ろにずりずりとすり下がり。
「いい、命だだけでも・・・」
顔を引きつらせながら命乞いをしてきた。
先ほどの男もそうだったがこいつらの脳は腐ってでもいるのだろうか。
何故、自分が犯したことを自分がやり返されると思わないのか。自分たちは己が欲望を満たす為だけに殺したんだぞ!・・・それなのに命乞いだと!
正直に言えばこいつらを俺は、同列の人間だと思えない。ペットや家畜などの生物ではなく、害悪を垂れ流すなにか・・・そう、ゲームのモンスターだ。
ただ人を襲う。そこに特に理由は無く、そうプログラムされ行動するソレだ。快楽と言うプログラムの操り人形であるこいつらは正しくモンスターなのだろう。
そんなモンスターをここで消した所で俺になんら影響はないのだが。
ちらりっと視線をモンスターの横に移すと涙の後がうっすら残る女の子がこちらをじっと見つめていた。
小さな子供の前で人の形をしたコイツを殺してもいいのだろうか?いや良くないだろう。それに俺がこのモンスターを殺すのは違うだろ。
コイツを殺すのなら被害者かこの国の法でなきゃいけない。
俺の意思のみでただ殺せばコイツらと大差なく、俺もモンスターになり下がるだけだろう。
「・・・あぁ、殺しはしない・・だがな!」
トリガーを戻し刃を消すとそのままモンスターに近付き、全力で《スターリィ・イーグル》の柄の部分を使いぶん殴るとめぎめぎっと多分歯を数本にあごの骨が砕ける音を出して軽く浮いたのち地面を転がる。
一応確認すると口から泡を吹き、白眼を剥いて気絶していた。
「死んじゃったの?」
女の子が震える声で俺に問いかけて来た。
「いや、死んでは無い。気絶しているだけだよ。」
気絶したモンスターをそのまま放置して、部屋の隅に居る兄妹の所にいく。
改めて女の子を見ると歳は10歳ぐらいでこげ茶色の髪で、俺が目が覚めた時に着ていた貫頭衣と似たボロ布を着ていた。
体には少し殴打された後もあり、特にひどいのが首には鉄製の鎖の付いた首輪が嵌められその下の首にはくっきりと痣が出来ていている。
その姿を見て再び怒りが湧いてきて「ちっ」と舌打ちをし《スターリィ・イーグル》で短い魔法の刃を作ると。
それに反応した女の子が「ヒィ、、ご、ごめんなさい。お兄ちゃんの命だけでもた、助けてください・・」と怯えた表情で必死に俺に訴えて来た。
「え?あっ!いや、これは、君の首輪を切ろうと・・・その、大丈夫だから。」
「えっ、あ!はい・・・」
慌てて誤解を解き。女の子の首に嵌った首輪に切れ込みを入れてから、力を入れ真っ二つに割り外してあげ、手に持つ首輪の残骸をその辺に投げ捨てる。
「よし、あとはこれを飲んどきな。」
素早くインベントリから回復薬《生命の霊薬》が入った小瓶を取り出し女の子の渡す。
「・・・あのう。これは?」
「えーと、君のお兄さん?にも飲ませたお薬だよ。念のために君も飲んどくと良い。」
「そ、そんな高価なポーションお兄ちゃんだけでなくわたしにもだなんて、いただけません。」
――正確にはポーションじゃなくって魔力を含ませて作った上級ポーションの更に上を行く霊薬なんだけど、そんな事伝えたらもっと飲んでくれないだろうし黙って行こう。
「ほら、材料さえあればいくらでも作れるから!遠慮せずに君は飲みなさい。」
無理やり小瓶を女の子の手に握らすと、女の子は俺と小瓶を交互に見ておずおずと小瓶の中身を飲んでくれた。
すると、たちまち霊薬の効果で女の子の首にくっきり残っていた首輪の痣や身体の打撲痕は消え、きれいな肌へと変わった。
直ぐに霊薬の効果が在られたことに驚き、自身の身体をあっちこっち見た後に俺の方に顔を向き。
「お兄ちゃんからわたしまで、ほんとうにありがとうございます。兎人族の人。」
とまた礼を言う、女の子・・・うん?
「・・・兎人?」
「えーっと獣人の兎人族の人ですよね?」
「何故にうさぎ?」
女の子は恐る恐る俺の頭上を指さし。
「りっぱな垂れ耳が・・・」
「はい?」
俺の頭の上に耳なんぞ付いていないはずだが・・・頭の上?あ!
『クッククク!我が、耳だとよ!ガッハハハハ!!』
「ッ?!耳が喋った!!」
どうやら女の子は俺の頭の上に居る、アルの両翼を俺の垂れた耳と勘違いしたらしい。
・・・確かに白い兎の皮から作ったフードコートのフードを被りその上のこれまた白いぬいぐるみサイズアルを乗せていれば兎に見えなくも・・・ないなのかな?
長い、シリアスぽいのが長い。
むずい、戦闘シーンむずい。
ってか、盗賊の話は当初1,2ページで終わる予定だったのに・・・




