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クラフトマスター建国記  作者: ウィースキィ
第一部 第四章 新たなる世界 【第二次王国 編】

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第11話 案山子、猫、魔剣にパンツ


「ただいまぁ」


 ライトの私邸に戻り、玄関の扉を開けると、扉の前にはリルアが待っていた。窓からこっそり覗いていたのが見えていたので、驚きはない。しかし、目に入ったのは、リルアの肌の色に合わせて作られた義足。まだ不安定ながらも、彼女はそれを使って自力で立っていた。その姿には少し驚かされる。


「おにーちゃん、お帰りなさい!」


「ただいま。あれ?もう義足ができたのかい?」


「うんっ!まだしさく?だけど、とりあえずって貸してくれたの!」


「そっか。それは良かったね。でも、まだ無理はしちゃダメだぞ?怪我したら大変だからね」


 リルアは案山子のように両手を広げ、器用にバランスを取っている。少し危なっかしいが、本人は満足げだ。愁が頭を優しく撫でると、リルアはバランスを崩しつつも素直に「はぁーい」と返事をし、愁の腰にしがみついた。


 シャウラの件以来、リルアは愁に甘えっぱなしだ。恐ろしい目に遭ったせいだろうと、愁も彼女を甘やかしているのが原因かもしれない。そんな二人のやり取りを見ていたシャウラが、少し呆れたように廊下から顔を出し、口を開いた。


「まったく、過保護すぎだな、愁は」


「あ、シャウラさん!リルアの義足、ありがとうございます」


「まだ試作だけど、予定通りには完成しそうだから、心配いらないぞ」


「頼もしいです。引き続き、よろしくお願いします。それと、今日、いろいろあってお客さんを連れてきました。紹介しますね」


 愁の言葉に続いて、玄関の外から静かに前に出てきたのは、レイネスだった。彼女はシャウラとリルアに軽く頭を下げる。


「はじめまして。レイネス・アスタリスクと申します。本日、訳あってお世話になることとなりました。どうぞよろしくお願いします」


 レイネスの薄緑色の髪がふわりと風に舞い、光の加減によって僅かに色を変える。その不思議な髪と、盲目であることを示す目元を覆う布にシャウラは驚いた様子で一瞬目を見張ったが、すぐに冷静さを取り戻し挨拶を返した。


「あ、ああ。私はシャウラだ。ここでは私も世話になっているが、よろしく頼むよ」


 シャウラは挨拶を済ませると、愁に顔を近づけ、手招きして耳打ちをする。


「なあ、愁、このお客さんって魔族なのか?」


「え?そうなんですか?ていうか、見ただけでわかるんですか?」


「見ただけでわかるって……お前、知らないで連れてきたのか?魔族は特有の魔力を持ってるんだよ。こう、じわじわぁっと感じるだろ?」


「……そうですか?いや、特に何も感じませんでしたが……」


 愁は言われてもいまいちピンとこなかった。魔眼に頼りすぎていることを反省しながら、改めて『じわじわぁ』を感じ取ろうとするが、やはり変化は感じられない。


「まあいい。愁が連れてくるなら、危険な人物じゃないだろ。リリーニャは奥の部屋にいるから、声を掛けてきたらどうだ?」


「そうですね。リルアのこと、よろしくお願いします」


「ああ、任せとけ」


 愁はレイネスを連れて、リリーニャの元へ向かう。長い廊下を進むと、『リリーニャ』と書かれた小さな看板がかけられた扉が目に入る。ここが彼女の部屋だろう。


 扉の前で、愁は二、三度ノックするが、返事はない。


「あれ?寝てるのかな?……どうしようかな……そうだ、レイネスさん、少しこっちの部屋で待ってもらえますか?」


 愁は隣の客間へとレイネスを案内する。その部屋は広々として清潔感があり、まるでホテルのスイートルームのようだった。


「この家の家主代行みたいな人がいるので、少し話してきますね」


「はい……なんだか、ご迷惑をおかけして、すみません……」


「そんなことないですよ。ゆっくりしていてくださいね」


 そう言って、愁は再びリリーニャの部屋の前に戻り、今度は声をかけながら扉をノックする。


「おーい?漓理?」


 しかし、やはり返事はない。


「……駄目だな。部屋入るぞ?」


 中に誰かがいることはわかっているので、扉を開けると、薄暗い部屋に月明かりが差し込んでいるだけだった。部屋の奥には豪華なベッドが一つ置かれ、右手には木製の棚と化粧台、そして左手の奥には机が置かれている。リリーニャはその机に突っ伏して眠っているようだった。


 愁は静かに彼女に近づき、声をかける。


「漓理?寝てるのか?」


 反応はないが、近づくと、彼女の耳がかすかにピクリと動いたのが見えた。


(……これは、寝たふりだな)


 愁は、昔にも見たことのあるこの光景を思い出し、リリーニャが拗ねているのだと確信した。


 原因がわからないまま、愁はリリーニャの椅子の後ろから垂れているふわふわの尻尾に目を留める。さらさらしたその毛並みに惹かれ、つい手を伸ばし、そっと掴んでみることにした。すると――


「にゃっ!?」


 可愛らしくも聞き慣れない声がリリーニャの口から飛び出し、彼女の体が軽く跳ね上がる。愁は思わず驚いてしまったが、その反応にさらに「にゃ?」と聞き返す。


 リリーニャはジト目で愁を睨み返し、その瞳には明らかな抗議の意思が宿っていた。


「し、しっぽを触るなんて……愁くんのエッチ!へ、へーんーたーいっ!さいてーっ!」


 口を開けば怒涛のような文句の数々。顔を真っ赤に染めたリリーニャは、顔からして相当ご立腹の様子だ。


「お、おい……何もそこまで怒らなくても」


「い、いいからっ!は、な、し、てっ!」


 フシャーっと威嚇するかのように尻尾や耳の毛を逆立てるリリーニャ。その様子に、愁の心の中にあるほんの少しの『いたずら心』が顔を覗かせた。何度も離せと言われているのに、愁はわざと尻尾を掴んだまま、くすぐるように弄り始めた。さらさらの毛並みが手のひらに心地よく触れる。


「ちょっ、ちょっとぉ!やめてよ!くすぐったいってばぁ!もぉ~!ばかっ!」


 リリーニャは身をよじらせながら、可愛らしくぽかぽかと愁の腕を軽く叩く。その姿は、まるで嫌がる猫と戯れているようで、愁には微笑ましく思えるものだった。しかし、これ以上しつこくして本気で怒られても困る。愁は名残惜しく感じつつも、そっと掴んでいた手を離した。


「いやー、ごめんごめん。ちょっと面白くてさ、つい……」


「つい、じゃないよっ!もぉ、愁くんのばかっ!」


「ごめんって。それで、漓理は何で拗ねてたの?」


 その問いに、リリーニャは「べっ、別に拗ねてないし……」と、明らかに拗ねた態度を取りながら、そっぽを向く。わかりやすい態度に、愁は思わず苦笑した。


「絶対拗ねてるだろー?俺、何かしたか?」


 ふんっと鼻を鳴らし、再び机に顔を埋めるリリーニャだが、そのまま数秒経つと、くぐもった声でようやく不満を漏らした。


「……………………こなかった」

「ん?」


 愁が聞き返すと、リリーニャは少し声を張り上げて再び言う。


「早く帰ってくるって言ったのに、早く帰ってこなかった!」


 その言葉に、愁は不意に懐かしさを覚えた。病院にいたあの頃も、同じようなことがあった――リリーニャの姿が、子供の頃の彼女と重なる。


「ごめんよ。帝都周辺をマッピングしてたから、ちょっと時間かかっちゃってさ。それに、怪我してた旅人さんを介抱してたんだ」


「ふーん……別に気にしてないもん……」


「いやいや、絶対気にしてるよね!? ……あー、わかった!じゃあ今度、二人で出掛けよう!今日の埋め合わせでさ、漓理のしたいことに一日付き合うよ。だから機嫌直してよ……」


 その提案に、リリーニャの口元がほころぶ。そして、まるで待っていたかのように顔を上げ、愁を見つめた。その顔には喜びがあふれており、したり顔まで浮かべていた。


「言ったからね!約束だよ?」


「わかったよ……てか、これ狙ってたよね?」


「なんのことかな?リリーわかんなぁい」


 わざとらしくとぼけるリリーニャは、まるで小悪魔のように笑っている。その表情からすると、確信犯であるのは間違いなかったが、愁としては機嫌が直ったのでそれで十分だった。


「はいはい、まあいいか。それでさ、さっきの話だけど、介抱した旅人さん連れてきたんだ」


「え?お客さん来てたの?」


「うん。服とかボロボロだったし、盲目の人だから放っておけなくてさ」


「そっか、わかった!それじゃあ、みんなでご飯にしよう?ご飯は使用人さんが用意してくれてるから、言えばすぐに食べられるよ?」


「了解。じゃあ先にお風呂案内してくるから、ご飯はその後でお願い」


「うん!わかった!私は先に行って用意しておくね」


「おっけー」


 リリーニャは嬉しそうに席を立ち、ふわふわとした尻尾を揺らしながら軽やかに部屋を出ていく。愁はその後ろ姿を見送りつつ、安堵のため息をついた。


(これで、今日のひと悶着は無事に解決……だな)


 愁はリリーニャの部屋を後にし、客間に戻って待機していたレイネスを風呂へ案内する。着替えやタオルを手渡し、風呂場を後にした愁は、自室へと足を向けた。その目的は、レイネスの服を新調するためだ。


 レイネスから許可を得て預かっていた衣服は、質の良い生地で作られており、丈夫で軽やか。旅に適した造りが随所に施され、ポケットも多く、腰には小さなバッグまでついている。配色はクリーム色や灰色が主で、白が基調となっており、普段は黒いマントを羽織るそうだ。ズボンはやや短めで、タイツのようなものを合わせて履いている。破れた部分を修繕するよりも、新しく作り直した方が早いと判断した愁は、細部まで確認した後、新たな服の作成に取り掛かろうとしていた。


 クラフトを始めようとしたその時、扉がノックされる。


「はい?どうぞ」


 愁が返事をすると、扉がゆっくり開き、現れたのはシャウラだった。風呂上がりのようで頬がうっすら赤く、髪にはまだ湿り気が残り、石鹸の清潔な香りが漂っていた。


「少し話せるか?」


「はい、大丈夫ですよ。何かありましたか?」


 シャウラは真剣な顔つきで切り出した。


「リルアの義足の素材についてなんだが、あれは一体何の素材だ?正直、今まで色々な素材を見てきたが、あれほどのものは見たことがない」


 ラリアガルド帝国の工房長を務め、多くの武具を手がけてきたシャウラの目は確かだ。珍しい素材を扱うことも多い彼女にそう言わせるほどの義足の素材、愁は隠さずに説明をすることにした。


「実は、あの素材はあるドラゴンのものなんです。彼は自らを生命の始祖、四聖龍の一柱だと名乗りました。彼の魂の解放を手伝った報酬として、その体を譲り受けたんです」


「四聖龍だと?天と地、海と冥界を司る創造神が最初に生み出したと言われる、最古の生命体じゃないか!」


 シャウラの表情が驚きに満ち、興奮が垣間見える。彼女にとって四聖龍の話は特別なもののようだ。


「詳しいんですか?その辺りの知識は乏しくて……もしよければ教えていただけませんか?」


「もちろんだ。あたしの先祖は千年以上前の神話大戦で、全大陸の覇者となった大悪魔フロストフィレス様に仕えていた。その時、祖先が打った二振りの魔剣の素材は天空を統べる四聖龍の一柱、天空龍様の角だったんだ」


「角を素材に魔剣を?」


「そうだ。フロストフィレス様は亜人にも温情深く、先祖はその角を賜って至高の魔剣を打ち上げた。その剣は神威を持つ者に有効な唯一の武器だったんだ。それに、これはその試作で作られたナイフだ。あたしの家宝なんだ」


 シャウラがホルダーから取り出したのは、刀身が白く、柄には繊細な彫刻が施された豪華なナイフだった。愁はそれを受け取り、早速〈鑑定の魔眼〉で確認する。


「これは……」


「どうした?」


「いや、これは本当にすごいですね」


 愁が〈鑑定の魔眼〉で確認したところ、そのナイフは、『ノーマル』に始まり、『レア』、『レジェンド』、『ユニーク』ときて、最上位である『神の秘宝』等級だった。そして、固有スキル〈滅界の一閃〉は、持ち主の全魔力を引き換えに放つ強力な範囲攻撃であり、相手の強化を無効にし、同時に自分の弱体化も無効にする。さらに、常時発動するパッシブスキルは上位神威特攻と上位神威特防。まさに神を討つ力を秘めた武器である。これが試作というのだから、完成品である二振りの魔剣はさらに強力であることは想像に難くない。


「試作だと言っていましたが、完成品の魔剣は今どこにあるんですか?」


「残念ながら、行方はわかっていないんだ。フロストフィレス様が大戦に敗れた時、その二振りも姿を消してしまった。強力な魔剣には意思が宿るとも言われているが、新たな持ち主を探しているのかもしれないな」


「そうですか……もし手に入れられれば、かなりの力になりますね」


 愁はナイフを返しながら呟く。シャウラは少し考え込んでから、何か思い出したように口を開いた。


「それについてなんだが……実は、あたしには夢があってな。神話時代の魔剣をもう一度打つことだ。先祖が打った、フロストフィレス様を助けた至高の剣を、あたしも打ちたい。だから、愁がくれた素材が四聖龍のものだと聞いて……少し期待してしまったんだ」


「その素材は角でなくても大丈夫なんですか?」


「確か、胸骨でもいいと聞いたな。角は魔力の核になりやすいが、胸骨は心臓に近く、高い魔力を宿すからだそうだ」


 愁は静かに考えを巡らせながら、シャウラに言葉を返した。


「なるほど……それなら、用意できるかもしれません。少し時間はかかりますが、見つけ次第シャウラさんにお渡しします」


 シャウラの瞳が期待に輝き、彼女の表情が少し柔らかくなる。四聖龍の一柱、地底龍の体の素材はすべて愁の『エンドレスボックス』に保管されているが、地底龍の巨大な体から得られた膨大な量の素材を選り分けるのは簡単ではない。特に胸骨だけを探すとなると、時間がかかることは覚悟しなければならない。だが、シャウラが神話の時代の魔剣を再び打ち直せるなら、それは歴史的瞬間となるだろう。愁はその光景をぜひ見届けたいと思った。


「そうか!それは助かるよ!もちろん、魔剣が打てれば、その魔剣は愁の物だ。素材の件、よろしく頼む」


 シャウラは嬉しそうな笑顔見せるが、その瞳には鋭い鍛冶職人としての情熱が宿っていた。


「はい、わかりました!それと、璃理が『ご飯にしよう』って呼んでいましたよ。今、レイネスさんがお風呂に入っているので、上がり次第みんなで食べるそうです」


「そうか、それじゃあ、あたしは先に行ってるぞ」


「はい!俺も後から向かいますので」


 シャウラが部屋を去った後、愁は一息ついて、レイネスの服のクラフト作業を再開した。服の形状はすでに記憶しているので、後はそれに従って細かい部分を作り込むだけだ。手際よくクラフトし、最後の確認をしていると、不意に背後から視線を感じた。振り返ると、そこには湯上がりのレイネスが立っている。


「うわっ、レイネスさん!? いつの間に後ろに!?」


 レイネスは白いワンピース風の寝間着に着替え、愁の方にそっと顔を向けていた。彼女の目は精巧な刺繍が施された布で覆われているが、それでもまるで、その奥にある瞳でこちらを見据えているかのような錯覚を覚える。風呂上がりの彼女からは、かすかな石鹸の香りが漂い、部屋の静けさの中でその香りがひときわ強く感じられた。


「ごめんね……一応、ノックはしたんだけど、返事がなかったから……」


 レイネスの声は少し遠慮がちで、しかしどこか柔らかい響きがある。その声に、愁はハッと我に返り、集中していたことを改めて認識する。彼女がいつの間に部屋に入ってきたのかも気づかずにいたことに、少しばかりの驚きを覚えた。


「あ、そうだったんですね。すみません、ちょっと作業に没頭していて……」


 その瞬間、開いた扉からひんやりとした廊下の空気が流れ込み、レイネスの周りに漂う石鹸の香りがふわりと広がる。香り自体は他の仲間たちが使う石鹸と同じはずなのに、シャウラやリリーニャ、そしてリルアとはまた違う、彼女独特の清潔感がそこに漂っていた。愁はふと「なんで女の子って、こんなにいい匂いがするんだろうな……』と、無意識に思考を巡らせる。しかし、今はそんな考えを振り払い、平静を保とうと努めた。


「いえ、大丈夫です。それで、何か聞きたいことがあるようですが、どうしましたか?」


「うん、えっとね、このズボンの事なんだけど……」


 レイネスの様子はどこかためらいがちで、声にも少し戸惑いが滲んでいる。しかし、言葉を発するその小さな声と共に、彼女の手がスカートの裾に伸びた。静かに、それを持ち上げていく動作はまるで空気を引き裂くようにゆっくりと、しかし確実に行われ、愁の視線は自然と露わになっていく彼女の膝上の滑らかな肌へと引き寄せられた。


 ほどよく引き締まった健康的な太ももよりもさらに上、そこには下着しかないが、レイネスはそれを晒してしまう勢いでスカートをまくり上げている。なぜか時間が停滞しているかのような錯覚に襲われ、愁はレイネスの着用する純白のパンツの一部がわずかに見えたあたりでやっと我に返る。


「ちょっ、レイネスさん!? な、何をしてるんですか!?」


 愁は一瞬心臓が跳ね上がり、慌てて声を上げる。だが、レイネスは何も意識していない様子で、不思議そうに首を傾げるだけだ。その仕草が、かえって無防備さを強調し、愁の心をさらに動揺させた。


「どうしたの?そんなに慌てて……さっき、着替えと一緒にもらったズボンみたいなもの、これ……これはこの中に着るものなのかなって思って……」


 その言葉を聞いて愁はようやく状況を理解した。レイネスが言っている『ズボン』とは、彼女が新たに渡された下着、パンツのことだ。彼女にとってはそれが下着だという概念がないため、ただ『短いズボン』だと思っているだけなのだ。それゆえ、こんな無邪気な勘違いをしてしまっている。


「レ、レイネスさん……それ、下着なんです。服の下に着るもので、他人には見せないものです……!」


 愁は顔を真っ赤にしながら、精一杯冷静を装って説明する。しかし、レイネスの無邪気な態度に、少し恥ずかしい気持ちを抑えるのは難しい。


「あ、そうなんだ……ごめんね。知らなかった……初めて見たから……」


 彼女は少し申し訳なさそうにスカートを下ろし、元の姿勢に戻った。その動作があまりにも自然で、むしろこちらが過剰に反応していたような気さえしてくる。


「いえ、俺の方こそ説明不足でした。気にしないでください。それと、服が直りましたので、どうぞ」


 愁は手早く仕上げたレイネスの服を差し出した。彼女は指先で新しい服の感触を確かめるように撫で、ほっとしたように微笑んだ。


「本当にありがとう、愁さん。これでまた旅を続けられる……ちゃんと大事にするね」


「どういたしまして。さ、そろそろご飯にしましょう。みんなで一緒に食べましょうか」


「うん!またエスコートお願いね?」


 そう言いながら、レイネスは柔らかく微笑み、差し出された手を愁に向ける。その仕草に、どこか信頼と優しさが感じられる。愁はその手をしっかりと握り返し、彼女を導くように食卓へと向かった。

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