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クラフトマスター建国記〜転生により不治の病を克服した少年は異世界で『至高の国』を再建する〜  作者: ウィースキィ
第一部 第二章 新たなる世界 【第一次帝国編】

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第7-2話 訓練の成果


 訓練開始から二週間もの間、ライトは何度も何度も愁の剣を受け続けた。


 指の皮が剥け、腕は悲鳴を上げ、全身は泥と汗に塗れた。それでも、彼は一度も音を上げなかった。


 努力の成果は確実に表れている。最初は弾かれるだけだった剣も、今では安定した構えで受け止めることができるようになっていた。装備の強化に身体が馴染み、動きも格段に洗練されてきている。


 一方、リリーニャもまた着実に成長していた。


 結界を維持しながら魔法を行使する訓練により、彼女は並行して複数の魔法を扱う力を身につけつつあった。現在は、さらに多様な魔法を習得するため、応用訓練に入っている。


 『WORLD CREATOR』で使われていた魔法は、初級・中級・上級に分類される。


 愁が普段魔石を用いて使っているのは初級魔法であり、リリーニャが杖を使って発動した〈メテオ・インパクト〉は上級魔法。そして、そのさらに上に位置するのが、『神代の魔法使い(ウィザードマスター)』だけが扱うことを許される『神代魔法』である。


 この世界における魔法の仕組みは未だ不明な点が多い。それでも、リリーニャは『WORLD CREATOR』の魔法を実際に行使できている。それが意味することは──


(やはり、魔法体系の違いはそこまで大きくないのかもしれないな)


 愁はそう考えながらも、訓練の手は決して緩めない。


 そしてついに、二週間に及ぶ『過酷な基本訓練』が完了した。これからはより実戦に即した訓練が始まる。


 この二週間、彼らは血の滲むような努力を重ね、繰り返し振るわれた剣は、幾度となく汗と泥にまみれ、握りしめる手のひらには無数のひび割れが刻まれている。筋肉は悲鳴を上げ、限界を超えるたびに意識が遠のいた。それでも、ライトもリリーニャも立ち上がることをやめなかった。


 流した汗と涙のすべてが、これからの戦いに直結する。次なる試練は、彼らをさらなる高みへと導くために待ち受けている。


 ライトはすでに冒険者ギルドで登録を済ませていたため、愁の指示で討伐のクエストをいくつか請け負ってもらうことにした。


 本日の討伐対象は、洞窟などから人里に降りてくる魔物──フェイスイーターの群れ。


 彼らは夜になると家畜を襲い、人を拐い去るという。依頼した村の住民は恐怖に怯え、助けを求めていた。


 愁が〈気配探知〉で依頼書にあった出没情報のあった森を探ると、フェイスイーターは二十九体潜んでいることが判明した。


 今回、リリーニャには初級魔法と結界のみで戦うように指示が出されている。そして、彼女を護衛するのがライトの役目だった。


「それじゃあ、クエストを始めましょうか。説明した通り、リリーが魔法で遠距離攻撃、リリーに近づく敵はライトさんが仕留めてください。その際、リリーは結界や魔法でライトさんを援護しつつ、遠くの敵にも注意を向けること」


 愁はそう伝え、いつでも援護できるように木の上で待機する。


「よし、行こうか。頼りにしてるよ、リリー」


「任せてライト!二人でやっつけちゃおう!」


 二人は気合十分で討伐に向かった。


 森の奥に広がる暗闇の中、フェイスイーターの姿が浮かび上がる。


 彼らの顔には目も鼻もなく、不揃いな歯が並ぶ口のみが存在している。その青白い体は人型に近いが、どこか異様な雰囲気を醸し出していた。そして、数体の個体には干からびた人間の皮と思われるものが顔に貼りついており、さらに一本の錆びた剣を持つ個体もいた。群れのリーダー格だ。


 フェイスイーターたちは二人の存在にまだ気づいていない。その隙に、リリーニャは杖に魔力を込め、無詠唱で〈火球〉を放つ。


 放たれた火球は、一メートルほどの大きさとなり、まるで小さな太陽のように赤々と輝きながら、フェイスイーターの群れのど真ん中へと落ちた。


 けたたましい爆発音とともに、五体のフェイスイーターが一瞬にして焼き尽くされる。これまでの訓練の成果が明確に表れた瞬間だった。


「やった!うまくできたよ!」


「リリー!喜ぶのはまだ早いよ。次に備えて!」


 ライトの声に、リリーニャはハッとして身構える。


 火球の衝撃で目標を定めたフェイスイーターたちは、一斉に二人に向かって駆け出した。


 響き渡る奇声、よだれを垂れ流しながら迫る群れ。森の静寂を切り裂くような恐ろしい咆哮が響き渡る。


「わわ!いっぱい来た!えい!えい!」


 リリーニャは慌てつつも、空気を圧縮して不可視の刃とする〈空撃波〉を連続で放ち、先頭の二体を上半身と下半身に切り裂く。しかし、それだけでは群れの勢いを止めることはできない。


 さらに〈電撃〉や〈火球〉を繰り出しながら、近づくフェイスイーターをできるだけ阻止しようとする。だが、足の速い個体が二人に迫る。


 ──その瞬間、ライトが疾風のように動いた。


「リリー、下がって!」


 鋭い指示とともに、ライトの剣が閃く。刃が一閃し、フェイスイーターの首が宙を舞う。さらに、すぐさま反転し、もう一体の腹部を斬り裂いた。返り血が宙に散る中、二人は距離を取りながら応戦を続ける。


 彼らは息を合わせ、着実に数を減らしていった。


 ──そして、最後の一体をライトが単身で撃破し、二十九体すべての討伐を完了させた。


 見届けていた木の上から軽やかに降り立った愁が、満足げに手を叩く。


「ライトさん、今の動きは素晴らしかったですよ。太刀筋も洗練され、無駄のない斬撃でした。それに、状況に応じた判断も完璧でしたね。リリーも、魔法での牽制が非常に的確だったよ。遠距離での制圧力が格段に上がってるね」


 愁の言葉に、ライトとリリーニャは肩で息をしながらも、達成感に満ちた表情を浮かべた。


 だが、この時の二人はまだ理解していない。──これが、まだ訓練の『序章』に過ぎないことを。


 明日から始まる訓練は、これまでの比ではない。甘さを一切排した、まさに『地獄』とも呼べる実戦形式の訓練が待っている。生半可な覚悟では、途中で折れることになるだろう。それでも、彼らは歩みを止めることはない。


 なぜなら、この戦いの先にあるものこそが──彼らが目指す『未来』なのだから。


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