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クラフトマスター建国記〜転生により不治の病を克服した少年は異世界で『至高の国』を再建する〜  作者: ウィースキィ
第一部 第一章 新たなる世界 【第一次王国 編】

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第12-1話 誕生日にふたりきり

 今日は、澄みきった空気が世界を包み込み、視界も良好であった。


 遥か空の彼方から見下ろす大地は、陽光を受けて輝く湖、風にそよぐ森、連なる山脈が青い影を落とし、壮大な景色を織り成している。


 もしこれが春ならば、木々は芽吹き、草原には色とりどりの花々が咲き誇っていたことだろう。


 その光景を想像すると、少しばかりの物足りなさを感じなくもない。しかし、それは贅沢というものだ。今この瞬間も、文明の発達した地球では決して見ることのできない本当の意味での大自然が広がっているのだから。


 愁とリアは、そんな美しい空の下、王都を目指し飛行を続けていた。


 最初は愁がリアを抱えて飛んでいたが、途中でリアが自分の力で飛んでみたいと言い出したので、安全のために手を繋いだまま愁がリアの飛行をアシストしていた。


 最初こそ怖がっていたものの、今やすっかり楽しんでいるようで、愁のアシストも無しで、一人で風を切りながら笑顔を見せる。


「愁さま!お空を飛ぶのって、とっても楽しいですね!」


「そうだね。俺も最初は楽しくて仕方なくて、毎日飛んでばかりいたよ」


「えへへ、なんだか想像できません」


 実際、『WORLD CREATOR』で空を飛ぶことは簡単ではなかった。


 愁も初めて飛んだときは何度も練習し、三日かけてようやくまともに飛べるようになった過去がある。それでも習得は早い方であったのだが、そんな愁と比べても、リアの習得速度は異常だった。わずか一時間で手を離しても安定飛行ができるようになってしまったのだから。


「まあ、楽しんでもらえてよかったよ。また飛びたくなったら言ってね。いつでも付き合うからさ」


「はい!またお空の散歩に連れて行ってください!」


 彼女の笑顔は、陽光に負けないほど輝いていた。


 しばらく進むと、遠方に巨大な城塞都市が見えてきた。広大な敷地に立ち並ぶ建物の群れ。その中心にそびえ立つのは、堂々たる王城。白亜の城壁に守られたその姿は、まさに王国の象徴と言うべき威厳を放っている。


「すごい……」


 リアが感嘆の声を漏らす。


 アイラフグリス王国の王都オルグリオ──アークルトスの町の何十倍もの規模を誇る大都市。その中心にある王城は、装飾のひとつひとつにまで精緻な技巧が施されており、まるで芸術品のようだった。


「はぁ、立派な城だな……俺も早く城が作りたい……」


「ふふ、お城ですか?でも、愁さまが作る建物は、どれもおしゃれで使いやすいですから、お城もきっと素晴らしいものになりそうですね」


「そう言ってもらえると嬉しいよ。リアには、俺が城を作るとき、一番に見せてあげるからね」


「本当ですか!?すごく嬉しいです!えへへ、楽しみが増えちゃいました!」


 ──楽しみが増えた。


 普段ならば何気ない一言。しかし、リアがそう言うと、愁には少し違った意味を持つように思えた。


 知る限り、彼女は辛い過去を生きてきたはず。それでも下を向かず、今を大切にし、未来を楽しみにしている。その姿に、愁は強く願わずにはいられなかった。


(もっともっと、笑顔にしてあげたいな……)


 リアの幸せそうな笑顔を見ていると、ただそれだけを願ってしまう。


 そんな彼女が、ふと愁の姿を見て首を傾げた。


「おしゃれといえば、愁さまの服も素敵ですよね!あまり見たことのないデザインですけど、どんなものなのですか?」


「お!そうか、気になるか。これはね、『スーツ』という服なんだ」


「すーつ?」


「そう、スーツ」


 『WORLD CREATOR』でも、このファンタジー世界においても、黒のスーツに赤のネクタイという出で立ちは異質と言える。しかし、そのギャップこそが愁のこだわりだった。黒のロングコートを羽織れば、さらに異世界感が増すが、それがまたいい。加えて、彼が持つ漆黒の日本刀『宵闇』とも実に相性が良かった。


「本来は、大人が働くときに着るものだね。俺は単純にこの格好が好きで着ているだけだけど」


 それは幼い頃、いつもスーツを着こなしていた父の姿を見て育った影響でもある。愁にとってスーツや軍服には特別な魅力があったのだった。


「なんだか、スーツの話をしている愁さまはとっても楽しそうです、すごく似合っていますし、本当に素敵です!」


「そ、そうかな……?なんかそこまで素直に褒められると照れるな……」


 リアの無邪気な笑顔に、愁は思わず目を逸らす。そして、ふと思いつきで口を開いた。


「そうだ!今度リアにもスーツを作ってあげるよ。女性用もあるしね」


「本当ですか!?やったっ!また楽しみが増えちゃいました!」


 彼の何気ない提案に、リアは心から嬉しそうに笑う。まるで太陽のように、眩しく、温かく──愁の心を、そっと温める笑顔だった。


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