12話
時刻は朝7時
今日はここを離れ森を進む予定だ。昨日は森を進むための準備とずっと明け方に寝て夕方まで寝ていた為の時間のずれを直す為に使った。
準備したのは飲み物として水とポカリのペットボトルを1ケース程アイテムボックスへ入れ、食べ物に関してはマヨネーズを塗りハムを挟んだ食パンと販売商品にあったお菓子類とカップラーメンを持っていく事にした。お湯は新聞とホテルの客の忘れ物にあった雑誌、壊れたソファーから抜き出した木材、ペットボトルに入れた油とライターがあれば問題ないだろう。他にも鍋や食器、割りばしなんかも用意しアイテムボックスに入れてある。
服装はいつものように、ジャージに無地の白Tシャツ靴は某メーカーのスニーカーだ。できればもっと生地的に強い服装がよかったのだが他にない。武器に関しては剣帯も鞘も無い事だしアイテムボックスに入れている。必要な場合は予め出しておくか、突発的に必要となっても瞬時に出せるからだ。それに加えて仕事に持ってきていた肩掛けのスポーツバッグを持っていく。バッグには水とポカリを3本づつ、それに替えのTシャツ、仕事に持ってきていたタオルをいれている。
必要なものを忘れてないか確認をし、いよいよ旅立つ時が来た
ホテルの入り口の扉へと手をつき、【移転】と唱える
ホテルは粒子となり急速に形を変えていく。後に残ったのは手の平に収まるサイズの六角形の透き通るような水晶だった。かなりの変化に戸惑ったが、足元に落ちている水晶を拾いアイテムボックスに収納する。
「さぁ行くか」
まだ見ぬこの世界を見る為の一歩を今踏み出した
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ホテルの正面方向へと向かって歩いていく事にした。この森は昼でもほぼ光がなく真っ暗だ。その為夜目スキルを取ったのだがLv1でもある程度は意味があったようで助かった。少し遠くになると真っ暗となりよくわからないが、歩くだけなら問題ないくらいは見えるようだ。いずれはLv3程度はほしいスキルだ。
今の現在地は全くわからず、どちらに向かえば森から出られるか全くわからないが、やはり森は奥へと行く程強い魔物が出るものだと考えられる為、ゴブリンがいつも向かってくる正面方向へ進む事に決めていた。
気配遮断・気配察知を発動しつつ歩いて行く。10分程度歩いたとこでまばらにだが気配を感じる。なんとなくだが気配の強さで、魔物の強弱が分かりそうだ。おそらくはゴブリンなのだろう。捉える気配からは脅威になる魔物とは思えない。一応確認に行くと案の定ゴブリンだ。気配遮断を使用中の為かこちらには全く気付いていない。周りには3匹のゴブリンがいる。森から出るまでは戦闘はなるべく回避する予定だったが、気配遮断がどの程度役に立つのか試す必要があった。
一匹のゴブリンの後ろへまわるように近づいて行く。後1Mも進めば攻撃できる位置にまでいけるが、こちらに気づく気配は一切ない。周りにいるゴブリン達にはこちらが見えていてもおかしくない場所にいるのに、気づかないようだ。そのまま意を決してゴブリンに近づき肩へと触れる。その瞬間ゴブリンは気づきこちらへ振り向こうとするが、その前にゴブリンを力いっぱい殴り飛ばす。殴られたゴブリンは2Mは飛んでいきそのまま動かなくなった。周りにいた2匹のゴブリンもこちらへ向かって来る。右からやってくるゴブリンに全速力で近寄ると頭を蹴り飛ばす。やはり吹き飛びそのまま動かない。残りの一匹も同様に殴り飛ばす。どうやらゴブリン達は首の骨を折りそのまま絶命したようだ。
武器も使わず、簡単に対処できた。ステータスの差がかなりある為可能だと思ったが、思った以上に強くなれたらしい。気配遮断に関してもかなり使える。魔物に触れた瞬間にスキルは解けたみたいだがこれならこの後は戦闘もせず移動できそうだ。倒したゴブリンを収納しつつ先へ進む事にする。今ホテルは水晶になっているが外部デバイスであるスマホがあるため収納は可能みたいだ。そう考えると連動の能力もかなり使える事になる。今後街に行けばさらに役立つ能力になるはずだ。
そして再び森の中を歩きだした
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あれから3時間程度は歩いただろうか、途中一度休憩は取ったがMAPを見る限り15k程は進んだ。ちなみにMAPなんだが脳内に詳細な地図が浮かび上がり、一度通った道を完全に記憶しているみたいな感じだ。MAPを見ようと考えるだけでかなり正確な地図がわかる、かなり使えるスキルだった。
その後何度か魔物は見つけたが全てがゴブリンだった。さらにおかしい事にその間鳥やウサギといった小動物、さらには昆虫といった虫さえも一切見かける事はなかった。どう考えても普通の森じゃない。街へ行けばこの謎は解けるのだろうか。
そのまま2時間程再び歩く、途中見つけた薬草や魔力草を採取しながらだが、身体能力が上がってる為10kは進んでいる。合計で25kは進んだが一向に森の終わりが見えない森の入り口から近い場所にゴブリンがいると予想したのだが、一向に太陽の光さえ見えない事を考えると方向が間違っていたのかもしれない。これから向かうならウルフが現れていた右方向だろう。そう考え右へ向かおうとしたとき気配察知のスキルが今まで感じた事もない大きな気配を感知した。
その気配の場所へ慎重に向かってみる。そこには大きな一頭の赤毛の熊がいた。10M程離れた場所からその魔物を鑑定してみる事にした
種族レッドグリズリー
Lv32
HP:380
MP:76
STR:120(192)
VIT:110
AGI:60(96)
DEX:50
MAG:10
MND:34
スキル
咆哮 Lv2
爪術 Lv3
突進 Lv3
やばいなこりゃ、魔法で攻撃すりゃ勝てなくもなさそうだが、咆哮が厄介だ。耐性もなくレベルが低い場合硬直するらしいから下手すると動けないまま殺される可能性がある。
倒してみたい気持ちもあったが咆哮の対策が無いため撤退することにした。気配遮断を発動しつつ息をひそめ下がる事にした。とにかくこの方向は間違ってそうだ。500m程後退し今度は右方向へ進んでみる事にする。MAPがあるため方向がわからないということはない。
そんなわけで進むこと4時間程、当然途中で採取もしつつたまにいるゴブリンは避けつつ進んでいく。時刻は17時を過ぎてしまった。そろそろ時間的にも厳しくなり一度ホテルのあった場所まで走って戻ろうかと考えた時だった。300M程度先の木々の隙間から赤い光が見えていたのだ。
その光を確認できた瞬間走り出していた
全速力で光の漏れている木々の隙間へ飛び込んだ瞬間、視界を赤い光が包み込んだ。
あまりの眩しさに目をつむり右手で両目を覆う
視力が戻り視界に映ったのは唯々雄大な景色だった
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視界を埋め尽くす広大な草原、遥か彼方には空をつらぬかん限りの巨大な山透き通るような空を埋め尽くす緋色の光、その先には燃えるような真っ赤な太陽
その風景をどれくらい眺めていたのだろうか、鳥達の鳴き声が意識を引き戻した
「すごいな」
口から出た言葉はそんな陳腐な一言だった
それ以外に言いようがなかったのだ。
そしてこの周辺には森の中では感じられなかった鳥達の鳴き声も、虫達の囁き、涼やかな風それらから確かな命の息吹を感じる。
そのことに安堵しながら草原を歩いて行く。そして森から2k程度離れた場所で今日は休む事にした。




