出逢い
雨。
滝のような雨がロウの体を濡らしている。
「わおん…。(寒いな…。)」
ロウはオオカミ少年。かつて赤ん坊の際、母親に捨てられ、人間ながらもオオカミに育てられた少年である。
今、母オオカミに狩りの仕方を教えられ、張り切って獲物を追ったところ、深追いして森の奥深くに迷い込んでしまったのである。
「わおーん…。(おかあさーん!)」
遠吠えをするも縄張りからは遠く離れてしまい、聞こえるはずもない。
幸い、獲物はさっき捕まえたので食糧には今は困らない。
ただ、これを食べてしまうと、まだ狩りに慣れていないロウはまた獲物を捕まえるのは難しい。
ロウはとぼとぼと歩きだした。
体をつたう雨が足を流れていく。
「わう…。(痛い…)」
先ほど獲物を捕まえたとき、怪我をしてしまったらしい。膝をすりむいている。
このような不幸があるならば、母の言うことを聞いて、しっかり狩りを学べばよかった…。とロウは後悔した。
しばらく歩くと、目の前に小さな洞窟が見える。
「わうわう!(あそこで休もう!)」
少しだけ希望が見えた。ここで休めば明日にはここに母が探しに来るかもしれない。
そう信じてロウはここで一夜を明かすことにした。
狩りで捕まえたウサギを噛み千切る。
しかし、オオカミに育てられたとはいえ、体は人間。簡単には噛みきれない。
母はいつも食べやすい大きさにちぎってくれていた。今は自分でやらねば生き残れない。
必死で歯に力を込めた。歯が痛くてあきらめそうになる。
しばらくやってみたものの、やはり噛みきれず、しばらく休憩することにした。
「うううう…。(いまいましいウサギめ…。)」
ウサギをにらみながら、二回戦に取り掛かろうとした時だった。
「だ、誰かいるの…?」
15歳くらいの少女だった。ライトを照らしながらこちらに歩いてくる。
「うううう!!(誰だお前は!!)」
「男の子?何してるの?こんなところで。何で裸なの?」
「うううう!(帰れ、人間は嫌いだ!)」
「ごめんなさい。私、耳が聞こえないの。あなたの声も、周りの世界の音も全く聞こえないの。だからあなたが何を言いたいのか、まったくわからないの。ごめんなさい。」
少女の名前はルノ。12の時、母が離婚し、父と暮らしてきたものの、母に爆薬を投げ込まれ、父が命を張って助け出してくれたが、父は絶命。その時の爆音で耳が聞こえなくなってしまった。
今は祖母と暮らし、食材のキノコを探しに森に入るも、ルノも迷ってしまったようだ。
「ううう!(何しに来た!)」
「あら、濡れてるのね、寒いなら使って?」
そういって差し出したのはハンドタオルだった。
「わう?(何で、優しくするんだ?)」
「寒いなら、ちゃんと拭かないと風邪ひくよ?」
何を言っているか分からないが彼女は自分を助けようとしているらしい。
その時ロウは自分を捨てたはずの人間の優しさに触れた。
(こいつは何かが違う。)
その時から、ルノとロウの人間だがどこか違う日常は始まった。




