第005話 『タダで助けるわけにはいかない』
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冒険者達は、戸惑っていた。薬草の採取の帰りにいきなりゴブリンに襲われたからだ。そして奇襲された一人の壁役が大きな傷を負って、戦線が瓦解した。他にもまた奇襲されるか分からない為、迂闊に動けない。最悪の場合には、壁役を見捨てて逃げる必要もある。
「俺を置いて先に行け!」
「傷を負ったお前を置いていけるか!」
今現在此処に居るのは、剣士と壁役、あと魔法使いと弓使いの4人組とゴブリンが数十匹。ゴブリンには奇襲役が数匹居る可能性があるので、冒険者達の生存は絶望的だ。
「ここでお前を置いて行けない、これはお前以外のパーティーの総意だ!」
このパーティーは、此処で死ぬ気らしい。しかし、みんなで生き残ろうとする気もあるらしい。
「意見を変える気は……無さそうだな」
「あぁ、みんな覚悟を決めた」
その時、
ガサッ。
冒険者達とゴブリンの群れの間の木が揺れた。
「な、奇襲か!」
「ギギャ?」
ゴブリン達にも心当たりはないらしい。そうしてその木から、人影が現れた。
「さぁ冒険者達よ、助けて欲しければ童の頼みを叶えて貰うぞよ」
その人影は、和服を着た少女だった。冒険者達と歳がそう変わらなさそうに見えた。とても荒事に向かなさそうだ。それを見た冒険者達は、声を荒げた。
「おいそこの女子、死にたくないなら早く逃げろ!」
だがその少女は、呆れ呆れに言った。
「童の話を聞いてたかの、助けは要るかと聞いたはずじゃが……」
その時、少女の背後からゴブリンが襲って来た。恐らく、奇襲用のゴブリン達だろう。そのゴブリン達は、成功した顔をしていた。
「あっ、危ない!」
冒険者達のその言葉は、もう遅かった。何故なら、
襲って来たゴブリン達の頭が無くなっていたからだ。
「こんなもの、奇襲に入らないぞよ」
その少女は、片手を振るった。そしてゴブリン達のだろう、血油が飛んだ。
「さてもう一度聞くぞよ冒険者達、
童の願いを聞く代わりに助けは要るかの?」
その問いにリーダーの少年は即答した。
「俺達に出来る事はするから、助けてくれーー!」
少女は笑って、こう言った。
「契約成立じゃ」
そう答えた後にもう一人の人影が姿を現した。その人物は、黒いメイド服を着ていた。
「はよ、あいつらを狩るぞよ」
「了解しました」
こうしてゴブリン達は、数分も経たずに全滅した。その姿を見ていた冒険者達は、こう思った。
あんな人達は、何を頼むつもりだろうと。
そんな言葉を思った直後、背筋が寒く感じた。
ありがとうございました。