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80.5話 ともかくシスティーナへいくのじゃ!


 20年前……否、約25年前……いやもう30年と言った方が良いかもしれない。いや、流石にそこまではいかない。

 だからやっぱり約20年前……。マウテリッツは学生だった事もあり、マルジョリーと付き合っていた。


 だがコルシャーズとかいう年寄り坊主(すごく偉い)に、マルジョリーを寝取られてしまう。


 そのショックにより、彼は学園を休み、逃げ出したのだ。


 その逃げ出した先の宿場町で知り合った町娘と意気投合し、愛しあった。

 意気投合というかなんというか、その、うん。


 強引だったな。とは本人も認める所ではある。

 

 町娘は婚約を控えていたが、マウテリッツは実家の金と地位を利用し、無理やり婚約を破棄させ、奪い取ったのだ。

 今思えば本人もあの時はむしゃくしゃしていたし、今のように法律にも詳しくなかったからやり方が非常に強引だったと白状している。


 町娘の名はロッテ。元婚約者の名はマーティアス。



 「それで生まれたのがマーティアス……という事なのじゃな?」


 私はベッドで休みながら語った……否、自白したマウテリッツに確かめる。


 「ああ、これが20年程前のあらましだ」


 「しかしなんというか……」

 聞いていたライノーラは感想を言いかける。


 「今カレとの子供に、元カレの名前を付けるのって……そういうの良くないと思いますの」

 ミシェルが答える。ばっさりと言う。


 「だから俺が付けたんじゃない」

 マウテリッツが修正するように言う。


 「母が……死ぬ時に付けた名前なんですよね?」

 じっと聞いていたマーティアスがそう言った。

 その言葉にライノーラとミシェルが驚愕する。


 「ああ、お前の母さん、ロッテはお前を産んだ後、すぐに…………」


 マウテリッツは宙を見る。


 「だから、名付けない訳にはいかなかったんだよ。それがロッテの最後の願いだからな」

 「父さん……」

 「父さんはやめろ」


 マウテリッツには、様々な噂がある。

 乱暴者だのと言われていた時期もある。だがそれは彼の一面に過ぎないという事が分かった。

 前世と現世では女の扱い方そのものが違うという節はあるものの、それでもなお、私から見てもマウテリッツ殿は女性関係に関しては真面目なものであると言える。


 前世基準だとはっきり言って女々しい。側室相手に何そんな糞真面目につきあってるのレベル。

 いや、でも、現世基準はあんまりよくわかんないけど、こう、なんか。うん。


 こやつの子供、5人ぐらいは作るべきかな……って思う。


 

 さて、そんな訳で襲撃者と交わした会話の一部始終を聞くことができたので、本題と行こう。


 「枢軸卿しか使えない判子に、枢軸卿M……こりゃどう考えても。な」

 マウテリッツに例の手紙を見せた処、そのような言葉が出た。


 「なにどう考えてもマルジョリー枢軸卿でしょう」

 シリウスがそのように分析をする。

 先ほどまで込み入った話をしていたので別室に居たが、話が終わったのでこちらに戻ってきたのだ。


 「だがあいつは俺を嫌っているし、それにあいつはもうガウンデン陣営なんだろう? なんで俺を助けるような真似をするんだ?」

 当然の疑問を口にするマウテリッツ。


 「ふむ……。これは……」

 意味ありげに顎に手を当てて考える仕草をするシリウス。


 「なんだ? 分かるのかシリウスさんよ?」

 「ええ、どうやらマルジョリー枢軸卿は貴方様に死んでほしくないと考えているようです」

 「いや、だからなんでだよ」

 「時々居るんですよ。憎んでいる、嫌いな筈なのに死んでほしくない、あわよくばヨリを戻したいとも取れる行動をしだす人が居るんですよ」


 マウテリッツの疑問にシリウスは得意げに語る。

 いや、そんな者が本当にいるのかと訝しく思う。


 「本当か?」

 マウテリッツも不信に思っている。


 「ええ、恐らく実際の女性関係の人数ならば貴方よりも私の方が多いでしょう。どうも内情的に貴方は慎重派のようなので」

 「ふんっそうかよ」

 そう悪態をつくマウテリッツ。


 マウテリッツのその後の女性関係を調べてみたが確かに慎重であると言える。

 何故私が知ってるのか? それは私が婚約者である。婚約相手の交際関係を知るのも何も不思議ではないだろう。

 彼が側室に入れている者は全員人妻か未亡人、人妻に関しても元の夫が暴力を振ってたり、他に女が居たり等問題があるような者であった。


 だからこそ、最初のロッテなる女を強引に奪ったという話は驚いたのである。


 「いや、そんな。マウテリッツは私の正式な婚約者なるのじゃぞ。ヨリを戻したい等とそんな事を言われても困るのじゃが」

 根本的な事に気が付く。

 うむ、マウテリッツは私の物であり私はマウテリッツの物である。最初に要らんと言ったのはそちらではないか。


 「まぁ……女心と言うのは中々に奇々怪々な物でございまして……」

 「それ……少しわかる気がする……」


 ええっ。分かるのかライノーラ……


 「……まぁとにかくだ。文章の他に地図もご丁寧に同封されていた訳なんだが……。なぁシリウスさん。これはどうもシスティーナっぽい街の簡易的な地図みたいなんだが……」


 そう言ってマウテリッツが地図を見せる。手書きであり、文字通り簡易的な地図であった。


 「ええ、これはシスティーナですね。間違いなく」

 「じゃあこの印ってのは……」

 「枢軸卿はそこに居る。と考えていいでしょう」

 「明らかに罠としか思えんのだが?」

 「ふうむ、どうやら。内部で意見の相異が発生したと考えてしかるべきでしょうな」


 なんか先ほどの台詞とは違う証言をしだしたシリウス。


 「女心は奇々怪々だの嫌いだけど死んでほしくないんじゃないのかよ?」

 「今となっては意見の相異があったとみていいでしょう。という話ですよ」


 など、シリウスは巧みに話を進める。

 そしてマルジョリーは何らかの証拠を渡す気ではないか?という話に至る。



 「だが行くにしたってここからシスティーナは近いようで遠いぞ」

 「もし行くのであれば当然こちらのも意図も分かってしまうでしょうね……」


 しかしこういう話になり、話が行き詰ってしまう。


 「あの、要はシスティーナに早く付ければいいんでしょう? ならば私にいい考えがありますわ!」

 そう言って立ち上がるミシェル。


 「なんじゃと?」

 訝しがる私。


 「そのためにはクラリエル……いえ、ゴッター家の力も必要だと思いますわけど」

 言葉がおかしくなるミシェル。


 「私ですか?」 

 突然掛けられてキョトンとした顔をするクラリエル。



 果たしてミシェルが考えた作戦とは……?


 つづく。

前回より早く更新できました(白目

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― 新着の感想 ―
[一言] >側室相手になに糞真面目に~ いつも思いますけどこういうズレが楽しい。
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