80話 当分肉料理は遠慮するのじゃ!
さて、私はマウテリッツの元へと急いでいた。
道中、猛スピードで走る馬車と荷馬車とすれ違った瞬間に、荷馬車にマーティアスが乗っているのを確認し、それを追う騎馬の者を倒す。
こんな事もあろうかとボウガンを持って来て正解であった。狙い撃ちである。
ライノーラも魔法の杖で攻撃を行う。
それらの攻撃を受けてもなおもこちらに来る騎馬相手に、ミシェルが飛び上がって斬り付けた。
騎馬相手にそのような芸当ができるとは驚きである。
「お見事!!ミシェル!」
私はそう言ってボウガンを再装填して狙い撃ちながらミシェルを褒めたたえる。
そのボウガンの矢が騎馬の者に刺さる頃には騎馬達は散り散りに逃げて行った。
「逃げたのじゃ」
「もうおしまいですの?」
「まぁ魔法使いもいますからね」
私、ミシェル。ライノーラが口々に言う。オレイユは「また体制を整えてくるでしょう」と言っている。
「オドレイ様!!」
一息ついてると、先ほどすれ違ったマーティアスがやってくる。
「マーティアス!何がどうなっておるのじゃ!こいつらは一体何者じゃ!」
そう言って私はミシェルがとびかかった斬りつけた黒ずくめの男を蹴る。
幸い、死んでいないようである。
「話すと長くなります!今はマウテリッツ様が敵と戦っているんです!早く助勢に行かないと!」
「なにっ!!!それは本当なのかじゃ!? ならば案内するのじゃあ!!!」
そう言ってマーティアスの案内にてマウテリッツの所へ向かうも、道中、マウテリッツ(となんか教会からきた者)を狙う者達とかち合って撃退する等をして遅くなってしまったし
「ここは私達に任せてお主はマウテリッツ殿の所へ行くのじゃ!!!」
とか言ってマーティアスを先に行かせたりなどをしていた。それにしても数が多い。
そんな訳で片付けた後に駆けつけると、そこには
「それはこいつが俺とあいつとの子供だからだよ」
「なにッッ!!?」
マウテリッツが謎の襲撃者に、マーティアスを息子と呼んでいる場面に出くわした。
「そいつが……お前の……ロッテとの子供……だと?」
「え? 一体どういう状況ですか、これ」
当のマーティアスも困惑している。
どういう状況なのであろうか。
「ふざけるな……ふざけるなよ……<加速><一撃必殺>……!!」
そう襲撃者が呟くと、その刹那、マウテリッツが刺された。
もう一度言う、刺された。
私の婚約者の、マウテリッツが刺された。
幸い、その刹那の瞬間に身を動かして急所は外し、肩に刺さったようである。
「俺が付けたんじゃねえ!!!!!」
マウテリッツが何かを叫んでいる。
肩に剣が貫通しているというのに元気そうで何よりであるが、すぐに襲撃者を亡き者にせねばマウテリッツが危ない!!!
そう思った私は、最早止められない。
しねえええええええええええええ!!!!!!!!!!
私のマウテリッツから離れいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!
オレイユはどうやら止めたようであるが、次の瞬間には私は叫びながら襲撃者の頭を、マウテリッツからのプレゼントであるミスリル刀の『ドラゴン・ロワリング・ブレード』でかち割っていた。
「なん……だと……?」
襲撃者はいきなり現れた私を信じられない物をみるかのような目で見るが、どうでもいい。
すかさず私は心の臓に刀を差し込む。
既に相手の頭をかち割っているし、心の臓に差し込んでいるので、とりあえず安心して説明するが
『現世においては、頭をかち割っただけ、心の臓を刺しただけでは死なない可能性のある現世である』と言える。
驚くべき事にこの世では、目の前の襲撃者のように頭をかち割り、中身が出たり血が噴き出す状態から助かった事例が僅かながらに存在しているのだから恐怖である。
で、あるからして、必ず首を撥ねるか追加で心の臓を攻撃したりなどをする必要があると私は思っている。
こやつは確実に殺さねばならない。
よって心の臓に差し込んだ後ぐりぐりと刀を回してみる。血が割と出る。
既に頭をかち割った際に死んでいた気もしなくはないが、まぁ念の為である。
しかし、あれである。
心の臓をえぐる感触はなんとも吐き気を催す感触である。当分肉は食べなくてよいな。
「オドレイ。お前……えげつねぇなオイ……」
あまりの展開に、マウテリッツがそうぐったりしながら言う。
マウテリッツも肩から血を流している。
「オレイユ!」
私は襲撃者の心の臓から『ドラゴン・ロワリング・ブレード』を引き抜き、そうオレイユに指示を飛ばす。
「は、はい。只今!」
呆気に取られていた様子のオレイユだがそこからが速かった。
オレイユは医者の心得があり、治療に際しては傷口の消毒から縫合、そして小型魔法石による回復は迅速に行われている。
魔法石の所持は制限がなされているが、それでも極小の小型魔法石の販売や所持に特に制限はない。魔法石は使用した後また魔力を込めれば再利用できるとの事だが、小型の魔法石は一回使えば粉々に消滅する。
そして小型の魔法石には予め魔法の印……術式? と呼ばれる細工が施されており、その魔法しか使えないようになっている。なので『買える』が『やはり高い』のである。
ちなみに、傷口の消毒と縫合をするのは『跡が残らないし治りが速い』からである。
理論上、腕が取れても縫合さえすれば治るという話であるからすごい話である。まぁその場合はしびれが残ったり動かしにくかったりと色々と不具合が生じるらしいが。
「いってぇな……」
高純度の酒を掛けられ、縫合をされ、そして小型の魔法石を押し当てられるマウテリッツ。
「赤く熱された鉄を押し当てられたみてぇに痛てぇ」
「治りは遅いですが痛くないように薬草による軟膏もあるのですが、この場合は仕方ありません」
そう言ってオレイユは言う。
「で……マーティアス。三角チーズは?」
「屋敷の近くの衛兵達と合流し、屋敷に入りました」
「そうか、またあそこの渋い隊長が渋い顔をしていただろう? また酒樽が必要だな……」
マウテリッツはそう渋い顔をして呟く。どうやらあそこ辺りの衛兵とは顔なじみらしく、ひとまず安心。という風にため息をつく。
「一応治療は終えました。早くここから離れましょう」
「そうだな。 ッッ……ああくそ目がくらむな」
頭を抱えるマウテリッツ、歩行も少しふらつく。
「急速に治したので血が足りていないのです。早く屋敷へ戻り安静にしなければ……」
「ああ。皆。ありがとうな」
マウテリッツはそう皆にねぎらいの言葉を掛ける。
「特にオドレイ。心配掛けたな。すまない」
「そう言うななのじゃ」
私にもその言葉をかけて、私は笑みをこぼして返す。
かくして私達はマウテリッツと共に無事に屋敷へと戻ったのである。
つづく。
「して、マウテリッツ殿。マーティアスが息子とは一体どういう事なのじゃ?」
「あー………………それはマーティアスに聞いてくれ。俺はもう眠い」
「ええ!? いや、そんな。父さ、いやマウテリッツ様そんな!?」
「それに!ロッテという女とはなんじゃ!お主の側室にはそんな名の女はいなかった筈じゃが!?」
「それも話すと長くなる。本当にキツイから寝かせて。頼む。な?」
「むうううう!!!」
三か月ぶりの更新、おくれて申し訳ありませんでした。
次回も近い内に更新します…




