71話 夏は過ぎ、秋が訪れ、そして冬になる。のじゃ
『竜の子供と賢者』
遥か昔、別の世界の片隅に一匹の竜の子供がおりました
竜の子供は大変賢く、また凄く強く。その上優しい心を持った竜でした。
ある時、竜の子供は人間達が憎み合い、奪い合い、そして争い合ってる姿を見て悲しくなりました。
しかし竜の子供にはどうする事もできません。
人間の世界は広く、竜の子供の力だけではどうする事もできませんでした。
ある時、一人の人間がやって来ました。
人間は賢者でした。賢者もまた人々が争い合う事が悲しくて、どうする事もできない仲間でした。
竜の子供と出会った賢者は言いました。
「お前が大人の竜になった時、国を一緒に作ろう。そのために勉強が必要だ」
と言って、その日から竜の子供と賢者は一緒に暮らして、竜の子供はすくすくと育って行きました。
豊かな春が過ぎ、
暑い夏が流れ、
恵みの秋が訪れ、
寂しい冬がやって来て、
また春が来る。
それを10回ほど繰り返した後、竜の子供は立派な大人の竜になりました。
大人になった竜は賢者から学んだ事をしっかり守り、争いで困ってる人を助け、川が暴れて困ってる人達を助け、お腹が減ってる人々にご飯を与え、荒れ果てた畑を直し、山や森を開いて新しい畑を作り、助けを求めてやって来た民達に与えていきました。
人々は竜に感謝し、竜を王様と認め、共に国を作っていくと誓いをたて、共に歩くことを決意しました。
ついに竜は王様になる事ができたのでした。
人々は竜に守られ感謝を送り、また竜も人々を守り共に栄えていきました。
人々と竜は、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
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「オドレイ様。何読んでるのですか? あむ」
クラリエルは先ほど露天で買った『タピオの米ヨールルト煮』を匙ですくって食べている。
秋空の元、私はクラリエルを連れて広場のベンチなる長椅子に座り、本を読んでいた。
「『竜の子供と賢者』という本じゃ」
本の名をクラリエルに告げる。
「そういえば昔からオドレイ様はその本シリーズが好きでしたね」
「うむ、この話はいつ読んでも、良いのじゃ」
『竜の子供と賢者』はいわゆる童話という分類の物語。つまり御伽噺である。
しかしこの現世においてはあまり人気がない。
何故ならこの現世において竜は神話にも言われているように、魔王に作られ勇者と戦った悪い魔物であるからして、それが国をつくって皆が幸せに暮らしましたとさめでたしめでたしにはならない。という声があるのである。
まぁまぁ御伽噺なんだからという声と、大半は竜の子供が賢者に教えを授かり改心したと言う話になっており、存在を許されているのであるが。
そうそう、一応言っておくが現世における竜というのは巨大トカゲの背中に巨大な蝙蝠の羽を付けたような、なんというか、いかにも異界の生き物である。
我々の知る蛇に似た竜ではない。
「それよりクラリエル。タピオの米ヨールルト煮は美味いのか?」
「はいっ!とっても美味しいですよ!! オドレイ様もどうぞっ」
そういってクラリエルは匙で温めた米ヨールルトと、タピオの玉を掬ってみせた。
勇気を出して食べてみる。
うん。弾力があるが、しっかり噛めば問題はない。
飲み込む、問題はない。
「うむ、美味しい。美味しいのじゃが、やはり見た目が。のう……」
「やっぱり、これカエルの卵ですよね……」
さて、先ほどから言っているタピオという謎めいた食物なのだが。
事の始まりは、マウテリッツとの雑談である。
なんでもエドワードフの奴が新しい商売を始めたらしいという話である。
エドワードフとは、ディバタールの裏社会を牛耳る無法者であるが、先の奴隷商人のガストビ商会との戦によりガストビ商会の利権や縄張りをごっそり頂くことができ、ますますその力を強めているのであるが
そもそもガストビ商会の本拠地は南方植民地のウエストフェールであるからして、そこから送られてくる品々が益々増えていた。
その中に、奇妙な乾燥した食物があった。白だったり黒だったりする丸っこい小さな『何か』である。
それは水やお湯に浸けるとふやけて食せるようになる物であった。
それこそが『タピオ』なる食物の名前である。
既にウエストフェールの都市では露天で牛乳煮や米ヨールルト煮にして露店で売り出されているとの事である。
マウテリッツ殿もそれを試しに食べてみたが、見た目に反して美味いとの事である。
そう、このタピオなる食物。見た目が完璧にカエルの卵である。
しかも、ふやけたタピオはぬるっとしていて、なおさらカエルの卵感が増している。
だが、食べてみると分かるが、これはカエルの卵ではない。
元は背の低い木の根を粉にして丸めた物らしい。
どうして木の根を粉にして丸めた物を食べようとしたのか。これがわからない。
いやいや日ノ本人だってタケノコを食すではないか。あれなんかほっとけば竹になるではないか。それと似たような物である。
まぁ話が逸れたが、とりあえず私達は実りの秋の空の元、タピオなる謎の食物の米ヨールルト煮と牛乳煮を食べたのであった。
もうすぐ寂しい冬がやってくる。それを乗り越えればまた豊かな春がやってくる。
こうして私達は帰路へ着く。
その道中、思わぬ拾い物をするが、それはまた別の機会に話すとしよう。
つづく。
「オドレイ様っ。このカエルの卵みたいな変なのの牛乳煮。美味しいですねっ」
「オレイユ。それはカエルの卵ではないのじゃ」
あむっあむっと食べるオレイユであった。
ついに11月中に一度も更新できずに申し訳なかったです。
甘酒とタピオカは合うのかは不明です。
タピオカの黒は黒糖の黒だそうですが、気にしてはいけません。
ストローが麦の穂という小さいものしかないので、匙で掬って食べる形となります。
また1週間後の12月15日に更新します




