39話 学園生活は大変なのじゃぞ!
あれからしばらく経つ。
以前は飯の質が落ちただの妹が居なくて寂しいだのいっていたが、別にそんな事はない。単に環境が変わって情緒が不安定になっただけである。多分。
そんな訳で学園生活が始まる訳であるが、やる事と言えば、扇子型の教室で教壇に立つ講師の話を聞いてノートに書き留めたりする程度である。
勉強をしていると言えば言えるが、やってる事は家庭教師の際にある程度もしくはそれ以上のことをやっているので、正直微妙である。つまらないと言える。
それよりもむしろ学園生活の醍醐味は友好関係にあると、私は見出している。
学園生活が始まってまだ1か月程であるが、既に小集団というか、仲が良い者の集団が形成されている。というか以前から親交がある者達で決められているようである。特に上位貴族間と下位貴族間の差ができている。
側室の子という事で、上位貴族の子らがやたらと声を掛けて来てくれる。
しかし、その上位貴族らの総まとめ役が、どうも前世の寺に入った時に出会った先輩に似ている。あまり思い出したくない先輩である。つまりそういう事である。とはいえ、そんな思い出したくない先輩が自分を敬っている様は悪くないものである。
ちなみに男と女は全て分けられている。当然ながら、そりゃそうである。
そう言う訳で、私は完全完璧に女の世界に居る。
女とは、前世においては欲が深くて、その昔は女は悟りが開けないなどと言われる始末であった。
前にそれを否定してみせたが、前言を撤回せねばならないかもしれない程に、色々とドロドロしたものを感じさせる雰囲気がある。
皇族側室の権威には色々と不便や不具合が付きまとうが、この時ばかりは皇族側室の権威に感謝の意を表したい。
こんな女の世界で成り上がりとか上位貴族の総まとめ役の娘とやりあう等、ご免被るからである。
この世界に階級があるとすれば私は大分上の方である。良かったのである。
そんな訳でのほほんと生きていきたいのだが、そうは行かないのが現世である。
女の世界であるからして、男の世界に憧れるものである。
男だった私に言わせればそんな憧れるものではなく、男と女、ともに極楽浄土はないのである。
まぁここは良いよね、広い寺の掃除や便所掃除無くて。本当に辛かったです。
話が逸れたが、男子の誰それが狙い目だとか、誰が位が高いか等、暇さえあれば会話をしておる。
これが自由恋愛という奴である。現世、とくにこの皇国のこの学園においては、貴族の階級を問わずに恋愛ができると言われているのである。
親にしてみれば、いい迷惑である。子は親に従うものであるからして、そんな勝手に好きになられては困るというものである。
叶わぬ恋等、するものではない。別れが辛くなるだけであろうに……。しかしその辛さもまた一興とか言ってる人がいるから現世は中々に奇々怪々である。
「それはそうと、この学園の男子生徒どもは皆美形、美男であるのじゃな」
「いきなりですかぁ!?」
そう驚いてくれるクラリエル。もはやクラリエルだけである。私の話を友として聞いてくれる者は……
「うむ、中には普通に顔がよろしくない者もおるが、概ね美形・美男子が多い」
そう言って私は紅茶に口をつける。
授業のない時間はこうやって茶を飲んで時間を潰していたりしている。
「それで思うのじゃよ……」
「それはなんです?」
私がもったいぶると、すかさずクラリエルが尋ねる。このやりとりが良い。
「私が男であるなら、こいつら全員護衛か従者にするのに……とな……」
「あー。やっぱりそう思います?」
そんな他愛のない会話が、愛おしく感じられる。そんなお茶の時間であった。
ちなみに前世では、武士の間では衆道なる同性の恋愛が、剣道だのそういったもののごとくにある。大半は女が良かったり風習と割り切っておる者が多いが、武田の晴信のように配下と大分仲が良い場合もある。逆に松平の元康のように女の子がいいと言う者もいる。
しかし、そんな衆道は嗜む程度でも、小姓もとい従者兼護衛は皆可能な限り美形・美男子を集めるのである。集めるのである。
年下……いいよね。
つづく。
遅くなりましたが次回は9月30日に更新予定です。
自分の戦国間の武士観は大体こんな感じです。大半は女の子がいいですけど、別腹でやっぱりイケメンな少年を囲ってたい感じです。
松平元康もとい徳川家康も人妻好きといわれる程、あんまり男はノーセンキューだったらしいですが、井伊直正があまりにもイケメンすぎてムラっと来たとかなんとか……