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30話 嫌な予感がするぜ……急ぐぞ。


 「明らかに約束守らなさそうな顔してるだろ、こいつら」


 「ま、まさかその声は……マウテリッツ辺境伯!?」


 突如として聞こえた声に、ライノーラは驚愕の声をあげる。


 なにせ、自分の人生が終わるであろう決断をする寸前に、父の悪友であるマウテリッツが、数人の部下とともに現れたからである。


 「ば、バカな!?お前達どうやって!?」


 先ほどから狂気じみた芝居をしていた男性が明らかな動揺をして見せる。


 「うるせぇ。とりあえず周りは死ねや。お前だけは生かしとくが」


 そう言ってマウテリッツと部下たちは小型ボウガンでガストビ商会の連中を射ってみせる。


 「ぐあああ!」


 「グギャア!!」


 連中たちの悲鳴に交じって魔物の悲鳴も聞こえる。


 「くそっ!お前達魔物を放せ!」


 「こ、この攻撃で放そうにも……ぎゃああ!!」


 芝居の男は部下に怒鳴るも、怒鳴った矢先に矢が刺さりどうにもならない。


 「くそ!こうなったら!」


 芝居の男はそう言って奥にある天井から垂れ下がる紐を引っ張る。


 引っ張った瞬間、近くの床がせりあがり、地下への道が現れる。


 「ふはははあ!!地下は大型の魔物の飼育所になっている!!貴様らなぞ一捻りだ!!」


 高笑いをする芝居の男。


 「おおっ。典型的な悪役の台詞じゃねぇか」


 呆れたように笑うマウテリッツ。


 「馬鹿にしやがって!地下にはオーガだっているんだ!本当に貴様らなぞ一捻りだ!!」


 「だとよ、どうするんだ、オレイユ」


 マウテリッツは笑うのをやめて呆れたように言う。


 「え?何を言ってr」


 芝居の男はそう言い終える前に、意識が消え、床に崩れ落ちる。


 「首を撥ねるのは簡単ですが、幹部階級は生かしておきますね」


 その男の背後には先ほどまでいなかったオレイユがたたずんでいた。


 「流石オレイユだ。いい仕事してるな」


 素直にオレイユを褒めるマウテリッツ。


 ちなみに今、オレイユはメイド服ではなく黒めのフード付きコートを着て両手に鉈のように大きなナイフ……いわゆるククリナイフを持っていた。大方、峰うちで気絶させたのだろう。


 「いえ、当然の事をしたまでです。地下の魔物達はエドワードフ商会の方々と共に処理を完了しています」


 「いやあ旦那! 流石セシャソン家の人間って奴でさあ! 少々てこずるかと思ったら簡単に血祭でさあ!」


 そう言って笑いながら地下から現れるエドワードフ。



 「なっ。え? ど、どうなって……」


 この間わずか10分。


 既に芝居の男や部下たちは気絶しているか死んでるかの二択であった。


 先ほど狂気を笑いを見せた男が凄腕のアサシンとも言える女性に気絶させられ、強力な魔物が出てくるはずの地下通路から出てきたのは、帝都の裏社会を牛耳ると言っても過言ではない男が友好的な笑みを浮かべて現れ、そしてそれらは全て父の友人であるマウテリッツという辺境伯が中心のように見えてしまい、非常に混乱するライノーラ。


 「おう、ライノーラだったか? しばらく見ねぇうちにデカくなったなぁ……親父さんは元気か」


 その混乱をねぎらうかのように檻へ近づくマウテリッツ。既に檻の鍵は入手済みであった。


 「え? ええ……そ、それより、これは一体……?」


 「うん、まぁ話せば長くなるんだがな……」


 そう言って檻の鍵を外すマウテリッツ。



 「お、こいつはレッドゴブリン、分泌液が上等の媚薬になるって噂の魔物じゃねぇか。 んお!こいつは感度5000倍になるクスリじゃねぇか、出所ここだったかやっぱ」


 「……そのクスリ。訓練の時に使いましたけど、感度上昇は精々2・3倍でした」


 「使った事あるんでさぁ!?」


 「主に爪剥ぎの時に……」


 等々檻での会話の横で、物資や死骸を物色するエドワードフを冷めた目で見るオレイユ。ちなみに、使い道が爪剥ぎ用と聞いて蒼くなるエドワードフであった。


 「妹の居場所、分かるか?」


 「いえ……私も探しに来たのですが、この通り……」


 マウテリッツはそう言ってライノーラに尋ねるが、首を振るライノーラ。


 「さて……この感度5000倍になる2・3倍の薬を使ってあなた方の爪を剥ぎたいと思いますが、あの方の妹様の居所を知っていたら教えてくれると有り難いのですが?」

 

 そう言って懐から恐らく爪剥ぎに適していると思われる名称不明の小道具を取り出して、降伏したガストビ商会の男に問い詰めてみせるオレイユ。助手とばかりにエドワードフが笑顔で袋からその感度上昇のクスリを出して見せている。


 「どうやらそちらの妹様の居場所はガストビ商会のボスの部屋で、その部屋はこの施設の奥にあるそうです」


 しばしの受け答えの末にオレイユは情報を引き出す事に成功する。


 「だ、そうだ。立てるか? ライノーラ」


 「え、ええ……」


 流れるような尋問により、逆の意味で恐怖を感じるライノーラ。多くを聞かない方が身のためであると肌で感じている。


 「ん、オレイユ。ところでオドレイは?」


 ふと、マウテリッツは連れがオレイユと一緒でない事に気が付く。

 

 「ロジータと一緒に施設内の襲撃に加わっていますが」


 事もなげに答えるオレイユ。


 「そうか。……嫌な予感がする。早い所ここのボスをぶち殺しに行くぞ」


 そう言って先ほど使用した小型ボウガンの弓を再装填し直すマウテリッツ。


 「ガストビ商会のボス、噂じゃあ妙な術を使うってのがもっぱらな噂でさあ。なんでも遺跡から出た妙な遺物アーティファクトを使うって話でさあ」


 ここぞとばかりにエドワードフが意味深な話をしだす。


 その情報に、妙な胸騒ぎを起こすマウテリッツであった。




 「一体、何がどうなってるの……?」


 いまいち状況がつかめずに困惑するが、とにかく付いていくしかないライノーラであった。

次回の投稿は6月の24日です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まぁ感度○千倍とかどう考えても「少し風が吹くだけで全身激痛」とか言う醒鋭孔になるだけやしな 真っ先にダメージ受けるのが目で、光の刺激が急激に強くなるとかもうね 太陽直視なんか目じゃないぐら…
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