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28話 仁義なき作戦会議なのじゃ!


 「それで、旦那。今日はどういったご用件で?」


 「おいおい、エドワードフ商会の大元締めのエドワードフ様がご用件を聞くとはな。分かってるだろ? 今日あった事をよ」


 奇妙な雰囲気であった。張り詰めいると言ってよかった。


 薄暗い部屋、そこで一人のドワエルフ特有の立派なヒゲを生やした屈強な男と、マウテリッツがテーブルを挟んで対面している。


 否、マウテリッツのその背後にはマウテリッツの部下である兵士や剣士2名と彼の婚約者と御付きの従者とメイドがいる。最も婚約者と従者は粗末なローブを深くかぶり、顔をうかがう事ができなくなっている。


 無論対面する男、つまりエドワードフの背後にも同数の護衛が控えている。


 対面する男の名は、エドワードフ・ティーサッチ。自分の名前を商会名とする商会を開き、表向きは肉屋兼自警団である。主に貧困街を網羅する規模で展開しており、表通りにも店を展開している『肉のエドワードフ』として有名であり、香辛料の効いた肉が売れ筋ナンバー1である。


 だが、その実態は非合法問わず様々な『香辛料』の流通を一手に引き受け、多額の金と力をもち、幾多の裏社会の勢力を潰すか併呑してきた裏社会の人間であった。 


 「そりゃもちろんでさぁ。御宅の所の婚約者の妹様、もとい側室の皇族様が何者かに襲撃された。なんて生まれてこのかた初めてでさぁ。うちら裏社会の住人が知らねぇ訳がないでさぁ」


 そんな彼が親し気に話している。


 「奴らはガストビ商会だ」


 だがマウテリッツは真顔でそう告げた。


 「……」


 エドワードフの目が据わる。


 「そして、これが奴らのアジトを記したと『される』地図だ」


 マウテリッツは懐から封筒を取り出す。中には地図が入っている。


 「旦那。用件を言ってくだせえ」


 エドワードフがピシャリと言う。


 「赤丸付いた所を俺達が襲うから、青丸が付いた所をお前たちが襲ってほしい。できれば赤丸付いた所を襲う時に兵隊を貸してほしい。」


 「なるほど」


 そう言ってエドワードフは煙草を思い切り吸って、ふうと吹きかける。


 煙が顔に掛かるが、動じる様子がないマウテリッツ。


 「いい煙草じゃねぇか。コリピサ産か?」


 「ウスタウン産でさぁ」


 等、間の合間に小言を言いあう。


 「なるほど。用件は分かった。で、なんで御宅らはそれを知っているんでさ? 御宅らなら近衛騎士団も動くでしょうに」


 「奴らは駄目だ。動きが遅い」


 吐き捨てるように言うマウテリッツ。


 「なるほど……で、旦那。自信ありげですが、そのネタ。どこから拾ってきたんで?」


 「セシャソン家」


 マウテリッツがそう言った瞬間、エドワードフの背後にいる護衛達に明らかにどよめきが走った。


 エドワードフですらその言葉を聞いた瞬間に眉が動いたのであった。


 「旦那。そいつは……」


 エドワードフが護衛の動揺を手で制しながら、口を開く。心なしか声が震えている気がする。


 「マジだ。何故かって? そのセシャソン家の人間が俺のメイドでな」


 そう言って目配りをしてオレイユが前に出る。


 「オレイユ・セシャソンと申します。以後お見知りおきを……」


 一歩前に出てスカートを軽くたくし上げる挨拶を行うオレイユ。し終えたら一歩下がる。


 その挨拶に、再び動揺が広がるエドワードフ陣営。



 「まぁそんな訳だ、頼むぜ。エドワードフ」


 そう言ってふうと席にもたれて懐から葉巻を取り出して見せる。当然火はオレイユが付ける。


 あらかじめカットされている葉巻に、オレイユは専用の火の魔法が刻まれた魔石を使用して炙るように火をつける。



 「すげぇ……あのセシャソン家が煙草に火をつけてやがる……」


 「マジかよ……俺初めて見た……」


 その光景を見て、動揺を隠しきれずに会話をし始めるエドワードフの護衛達。


 流石のエドワードフもその光景を凝視する他ない。


 「……あのセシャソン家の人間を煙草の火付け係にさせるたぁ。旦那ぁ出世しましたなぁ……」


 「だろ?」


 エドワードフの降参と言いたげな言葉に、笑顔を見せるマウテリッツ。そうこうしている内に葉巻が吸える状態になり、吸い始める。


 張り詰めいていた空気が一気に緩和する。無論、空気は煙草の煙で汚染はされているが。


 「ふうむ。確かにこの地図に書かれている丸。確かにこいつは連中の拠点で間違いないでさぁ。こっちで掴んでいた情報と一致してるんでさぁ」


 「そうだろうと思ったさ」


 エドワードフとマウテリッツはそう言って地図を見合って話している。


 「しかし良いんですかね? 青い丸の拠点はこっちが襲って、その取り分はこっちが取るなんざ……」


 「ああ、代わりに赤い丸の所を襲撃する時に兵隊を貸してくれ」


 「兵隊を貸すってぇと、相応の理由が必要になりますがぁ……」


 「この前書類渡しただろう。今まであんた達はクソの処理をしてたが、それまでは二束三文の金で山に捨ててたが、その山の土や便所の土が全部金の山になるんだ。それでいいだろう?」


 「確かにあの書類にゃあそう書かれてますがぁ……」


 しぶるエドワードフ。


 「アルフォンドが書いたんたぜ、あの書類」


 「そうなると途端に信ぴょう性が低くなりますなぁ」


 弟の名前に、そう言ってワザとらしく言ってみせるエドワードフ。


 「まぁ。旦那の事だ。兵隊を貸しだしましょうや」


 「悪いな。エドワードフ」


 そうやってにこやかに笑うマウテリッツとエドワードフ。


 「いえいえ。で、旦那の後ろにいるホビエルフ二人は一体?」


 「気にするな。お前達の言う所の『先生』って奴だ」


 「そいつはおっかないですなぁ」


 そう笑いあう。


 「で、いつ動ける?」


 「明日の夜。こっちも近い内にヤキを入れる予定だったんですぁ。渡りに船とはまさにこれですぁ」


 「わかった。連絡を密にしてお前らに合わせる」


 等としばらく打ち合わせをして、ではまた明日。と言って解散する事となった。



 つづく。

なんでオドレイとクラリエルを連れて来たんだろう…()


次回は6月10日を予定しております

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