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81話 システィーナ警備隊24時なのじゃ!


 「まさか、まさか貴方が裏切り者だったなんて思いもしませんでしたよ。マルジョリー枢軸卿?」


 ガウンデンはそうにこやかな顔で言う。


 「……なんの事?」


 マルジョリーは薄暗い部屋の中央部分に椅子に縛り付けられた状態で答える。


 そこはここはガウンデンの屋敷の一つ。その地下であった。


 「マウテリッツ殿に敵襲を知らせたのは貴方、なんでしょう?」

 「……私はただ、旧知の知人に手紙を出しただけですよ」


 パァァン!


 ガウンデンの側にいる別の枢軸卿が持っていた鞭が床を叩く。


 「嘘はいけませんなぁ。マルジョリー殿。貴方の手紙を運んだ人間も既に我々の手中のなんですぞ」


 その言葉にマルジョリーの目が一瞬泳ぐ。

 

 「そう、だからどうしたというのです?」

 だがそこは枢軸卿になって長いマルジョリー。シラを切る。


 「シラを切り通せると?」

 ぴちん。と鞭を伸ばす。


 「まぁいいでしょう。結局、そのマウテリッツ殿は死んでしまいましたから」

 そうガウンデンは笑顔で言い切った。


 「……なんですって?」

 思わずマルジョリーは聞き返す。


 「死因は肩の大量出血と傷口からの破傷風だそうですよ。いやはや、時間差で死ぬとは……」

 「その証拠にその婚約者であったオドレイ側室皇女様はこちらへ向かっているとの事だからな」

 二人はそう話を合わせるように話す。


 「貴方のやった事は無駄な事だったんですよ」

 ガウンデンはそう言って、他の枢軸卿と共に部屋を出て行った。


 「マウテリッツ……」

 そう言って項垂れるマルジョリー。



 

 「で、本当にマウテリッツは本当に死んだんでしょうな?」

 別室にて鞭を持っていた枢軸卿はそう不機嫌そうに尋ねた。


 「医者の診断書ならここにある」

 ガウンデンが診断書を見せて言う。


 「医者の診断書など、アテにはできますまい」

 やせ細っている別の枢軸卿が苦笑まじりに言い放つ。


 「……確かに、あれ程の事をされては安心できるものもできないですからな……」

 そうガウンデンは言う。


 「まさか我々の刺客の大半が殺されて晒し首にされたとは……思い出すだけで恐ろしい……」

 痩せている枢軸卿が身を震わせて語る。


 「やはりマウテリッツは貴族の風上にもおけぬ無法者ですな。あんな事、悪党組織アウトローでも早々しないでしょう」

 

 ガウンデンは語る。

 マウテリッツがやった事、それは襲撃者の撃退のみならず、その亡骸を広場に晒すと言うものであった。

 ここまでは他の貴族達も泥棒に入られて捕まえた際に時々やることなのでそれ自体は珍しいが異常ではない。


 問題は、首を切断し、首と体を分離した状態で晒した事である。

 これは皇国史上ない、いやミイソス大陸史上でもあまりない事であった。

 

 特に、リーダー格とされる者は頭をかち割った上で首が切断されるという惨たらしさを極めたような手法で、ガウンデン達は心底恐怖した。


 なので時間差でマウテリッツが死んだのは僥倖と言わざるを得なかったが、当然、本当に死んだのか? という疑問は付いて回る。


 「仮に生きていたとして、自分の婚約者に自分の葬式をやるためにここには行かせないでしょう」

 鞭を持っていた枢軸卿が最もらしい事を言う。


 「それも……そうですな」

 ガウンデンは納得する素振りを見せる。


 「それに。帝都には未だに我々の手の者がいる。マウテリッツが生きていたり、何か動きがあればすぐさま伝えられる手はずとなっている。そうガウンデン氏が言ったではないか」

 鞭の枢軸卿がそう言う。


 「不安要素はあるが、それでもこれでやっと総司教長様をお迎えできるというもの……」

 痩せている枢軸卿がふうと息を付きながら言う。


 「オデッタ様とオドレイ側室皇女様を迎える事ができてめでたい限りである。これならば……」

 鞭の枢軸卿が頷きながら言う。


 「左様。教会の権威を復活させ、忌々しい錬金学の連中を追い落とし、背徳にまみれた低俗な娯楽や芸術に名を借りた破廉恥な数々を廃し、我々の伝統を掲げる時がついに来るのだ!」

 ガウンデンはスクッと立ち上がり、宣言を行う。


 その目は本気の目であった。


 そう、彼は、彼らは大真面目に『この世は低俗な娯楽と芸術とか言って破廉恥な絵で溢れており、それもこれも錬金学の学者どもとそれを見て見ぬ振りをしていた旧教会勢力(調和派)の責任である』と考えているのだ。


 一見大真面目に見えるが、しかしその裏では先ほどのようにマルジョリーを拉致して性的暴行をしようとしたり、オドレイやオデッタの世話と称して監禁して自分達の思い通りに教育しようと画策していたり、欲望に忠実だったりする。


 だが、それは彼の知らない場所で静かに、崩れていたのである。




 ガウンデン本邸


 そこが神勇教の枢軸卿の家だと誰もが分かる、贅を凝らした屋敷に、ある一団が訪れていた。その一団はどうやらシスティーナの警備を任せられている警備隊であった。

 その一団を率いる者が秩序よく屋敷の玄関扉を叩く。


 しばらくの後、扉は開かれ、対応した使用人はその光景に驚くも、率いる者は礼儀正しく自己紹介を行う。


 「はい、ガウデン・ファビアーニ=ゴルディジャーニ枢軸卿の御宅でしょうかね。ワタクシ、シリウス・モーリース・デ・ペリゴーレ=ラーレタンと申します。ちょっとお話をお聞きしたいのですが」


「しゅ、主人は今出かけております。いつ戻るのか、どこへ行ったか私めには伝えられておりません。出直しを……」

 そう言って使用人は定例文を言いあげて扉を閉めようとする。


 すぐさまシリウスは足で扉を止める。


 「ああ、閉めないでください。貴方の主人にちょっと皇家反逆罪や贈賄罪、皇家配偶者暗殺未遂などの容疑が掛けられておりまして……ちょっと家の中を探させてほしいのですよ。ええ、拒否権はありませんが」

 そうにこやかにシリウスは告げる。


 そう告げた瞬間に後ろに控えていた警備隊が扉を無理に開き、中へ押し入る。


 「すみませんねぇ。強盗団みたいな真似をしてしまい。でも総司教長代理の令状もしっかりあるんですよ」

 シリウスはそう言って令状を見せる。


 「馬鹿な……総司教長様はまだお決まりになられてない筈……」

 「ええ、ですから代理ですよ代理。ま、詳細は貴方には教えませんがね」

 使用人は驚愕した様子を見せ、シリウスは渋い顔をした隣の男に話しかける。


 「御覧の通り。ガウンデン氏は不在の様です。こうなると他の屋敷にあたらせた貴方の配偶者様が……」

 「わかってる。俺は行かせてもらう」

 男はそう言って踵を返して後を去ろうとする。


 「随分と心配ですね」

 「ああ、俺の勘は割と当たるんだ。何もなきゃ笑え」


 そう言って男は屋敷を去り、馬に乗って別の屋敷へと向かったのであった。



 「さて、こちらもお仕事お仕事と……」


 それを見届けるとシリウスは使用人ににこりと笑いかけたのであった。


 つづく

また遅れてしまいましたが、また約1週間後会いましょう。


後半部分を大幅に書き直しました。大分警察24時みたいになったと思います

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