登場
-ずっしりとした足取りで歩く男。
50…いやそろそろ60歳を迎えるだろうか。
その歳を感じさせない、鷹の様な鋭い目つき。
顔には過去の正念場を物語っている様なたくさんの傷。
飛鳥組の総長、齋藤茂だ。
今にも何かをしでかそうと不敵な笑みを浮かべている。
その隣で歩幅を合わせ歩く男。
飛鳥組の理事長、徳永勝だ。
タバコを吸いながら、躊躇せず拳銃に弾を詰め込んでいる。
総長を軸にして理事長がいる反対側にいるのは、丁度30歳くらいであろう舎弟頭のジュン。
手榴弾を腰に付け、リボルバーを手にしている。
その隣には一見小柄なヤス。
手にはナックルをつけたグローブをしている。
ヤスは体に合わない大きいフードを被りこんでおり、そのフードには猫耳が付いている。
その大きいフードのお陰で顔はほとんど見えない。
敵を見て口がにやりとしたところがチラッと見える。
「お前ら、行くぞ」
総長が慣れた口調で言う。
「はい!」
他全員がそう叫び、各々戦いの準備を始める。
「いやいやいやこれはこれは。飛鳥組の皆さん。」
飛鳥組の目の前に立つ集団の真ん中にいる者が話し始める。
見た目の頼りなさからして、相手の組の総長ではないことが分かる。
「私共”荘子組”にあなた達のような下人がどういったご用件で…」
その瞬間、銃弾が彼の脳を撃ち抜く。
「おせえぞ」
振り向きもせず徳永が言う。
「悪かったねえ、紅茶が冷めちまうから」
現れたのは紅一点、女頭の林檎。
手にはサブマシンガンを手にしている。
「お前どこからそれ持ってきたんだよ!?」
ジュンが林檎が持つサブマシンガンに驚く。
「落ちてた」
林檎は冷めた口調でそれだけ言い放ち、総長の横に立つ。
「はっはっは、さすが俺の娘だな。オラお前ら、ボーッとしてねえでヤるぞ!」
総長がそう叫んだ瞬間、敵も雄叫びを上げてこちらに向かってくる。
総長はハンドガンで相手を撃ちつつ、近くの相手をナイフで的確に刺してゆく。
徳永はそれに手助けするようにハンドガンを撃ち、蹴りでトドメを刺してゆく。
徳永はどちらかと言えば武闘家だ。
頭をひねって人を殺すのも手安い。
一方で、ジュンは大好きなリボルバーを駆使して後ろから全員の補佐をし、
ヤスは人混みの中をスイスイと伝い、銃が撃てないほどの至近距離で相手を殴り倒してゆく。
紅一点の林檎は自由に前へと進みサブマシンガンを撃ちながら歩き続ける。
銃が撃てない距離へ来ようとする敵には投げナイフを投げ、ハイヒールの蹴りで倒す。
圧倒的に飛鳥組の優勢と見られた時、荘子組の残った少人数の中から、一人の男が出てくる。
「荘子ィ…」
総長が呟く。
「よう、茂。相変わらず元気だな。」
口を開いたその男は荘子組の組長、荘子シズルだ。
「おめぇ少し老いぼれたんじゃねえか?」
ふふと笑いながら総長は言う。
「てめーは最初から老いぼれだけどな」
荘子が吐き捨てるように言う。
「老いぼれにこれから殺される気分はどうよ…俺は最高にいい気分だよ…」
総長がゆっくりと歩き出す。
同時に林檎も前へ行こうとするが、徳永に止められる。
「組長同士の戦いだ」
「…くそ」
林檎は悔しそうに足を止める。
「おめーみたいな老いぼれに負けるわきゃねえだろお!!!」
怒り狂ったように荘子はそう叫び、ナイフを持つ。
総長は歩き出したまま言う。
「ふっお前、俺とナイフで戦う気か?正気を失ってるぜ」
総長は他の組でも、ナイフ使いで有名だ。
例え銃相手でも叶わないと噂されている。
「うるせええええ冷静ぶりやがって!!」
怒りに狂い始めた荘子は持っていたナイフを真っ直ぐと投げた。
「総長!」
思わずジュンが叫ぶ。
「…」
そのナイフは的確な位置へ投げられた。
俊敏で、とても速い。
だが総長はそれを間一髪で避けた。
しかしナイフは頬に深い切れ目を作った。
それを見た林檎が言う。
「もう一本来る。左」
それがまるで予言かのように、荘子は左へナイフを投げる。
林檎の声を聞いた総長はなんなくそのナイフを避ける。
荘子はだんだんと焦りを感じてきている。
やっと総長が荘子に近づいてきた。
総長は、自身が持っているナイフを投げた。
そのナイフは荘子の頭に刺さる。
「うっ…うわああああ!!!」
荘子が叫びながら、自分に刺さるナイフを凝視している。
総長は内ポケットからもう一つナイフを取り出し、荘子の腹に刺す。
荘子は倒れた。
総長は迷わず振り返り、服を直し帰る支度を始める。
荘子が倒れた瞬間、周りにいた既にボロボロの荘子組の子分達が荘子を抱え、介抱し始める。
「親分愛って素敵ね」
皮肉のように林檎が言い捨て、自身も振り返り、歩きながらタバコを吸い始める。
それを合図にしたかのように飛鳥組の幹部達も振り返り、歩き始める。
「てめぇらも御苦労さんなこった」
総長が荘子組の師弟の愛を見て、自分の子分達に言う。
「はい!総長!」
子分達が揃って叫ぶ。
それを見た林檎がしかめっ面で口を開く。
「おめぇはガラに合わねぇんだからマネすんなよ」
「おい林檎、口が悪いぞ」
見かねた徳永が注意する。
「構わねぇよ、コイツも俺に似てアホなんだ」
林檎の口の悪さは父親から受け継いだと思って間違いない。
総長は笑い、空気を変えるように続けて言う。
「さ!今日は帰ったら飲み会だな!」
「まじすか!?よっしゃ!飲むぜ〜!」
総長の言葉にジュンが喜び、林檎をチラッと見る。
林檎は何も言わず淡々と歩いている。
その時、どこからかパトカーのサイレンが聞こえてきた。
「やべえサツだ!」
ジュンが慌てふためき、腰に付けた手榴弾を内ポケットに隠そうとする。
ヤスは血まみれのグローブを何も言わずフードのポケットにしまう。
「おい林檎、お前サブマシン…」
徳永がそう言って横を向くと林檎は既にいなかった。
嫌な予感がし、反対側を向くと総長さえもいなかった。
「・・・ほんとあの2人は似てるよなぁ・・・」
徳永がため息混じりに呟く。




