第22話 スタートライン
9月初旬。
埼玉ジャッカルズとの3連戦に勝ってから、すぐのこと。
次の3連戦は、対仙台シャークス。
場所は、仙台スタジアム。
そこがまさか後の「スタートライン」になるとは、私を始め、誰しも思ってはいなかった。
仙台シャークスは、昨年度5位、今年度は3位の成績をキープしていた。
3連戦前の時点で、我がユニコーンズとのゲーム差は2.0。
つまり、この直接対決で3連勝すれば順位が逆転し、2勝1敗でも並ぶことになる。
仙台シャークスは、「投手力」が強いチームだ。
エースは、山谷豪。右投右打、34歳。
技巧派のサブマリンで、蒲生虎太郎と同期入団だった。
昨年度の成績は、防御率1.85、12勝10敗。
球種は、ストレート以外に、スライダー、カーブ、シンカー、チェンジアップなどエースには珍しいタイプの軟投派投手と言っていい。
抑えは、伊達太陽。左投左打。28歳。
昨年度の最優秀救援投手で、2種類のスライダーとカーブ、チェンジアップが武器で、特に縦のカーブは、「消える魔球」と言われ、奪三振を量産していた。
最速154キロを誇る、「仙台の守護神」として活躍していた。
対して、私はまたも明確な作戦は考えられずにいた。
そもそも毎回毎回、そんな簡単に作戦を考えられるわけではないし、プロ野球界の1年は長い。
そこで、明確ではない物の、島津監督には大阪ドリームスの時と同じように「守備の穴」を突くことを提案。
ただし、今回はバントではなく、単純に打撃で揺さぶることを提案した。
仙台シャークスの弱点は、守備力の弱さにあったからだ。
投手力で持っているチームゆえに、投手以外の守備に「穴」があった。
愛華のデータから、「失策」というデータを抽出すると、12球団で一番この値が高いのがこのチームだった。
もっとも昨年はそんなことはなかったが、今年はどうもこの失策が目立っていた。
あとは、成り行きに任せることにして、私はいつものように遠征には従わず、試合も見ずに自宅で勉強していた。
もちろん、今回も仙台には愛華と神戸を同行させている。
3連戦の初戦。
午後10時頃。
愛華からLIMEが来た。
―勝ちました。7-3です―
(すごい。あの投手力のチームから7点も取ったのか)
というのが、まず一番最初の驚きとしてあった。
詳しく聞くと。
―打っては、相手チームのエースの山谷選手と同期の蒲生選手がタイムリーで先制し、ロペス選手が2打席連続のホームランです!―
普段は、冷静な愛華が、文面からも喜びが溢れてきそうな、エクスクラメーションマークをつけていた。
さらに詳しく聞くと。
―ロペス選手は、相手投手の球を完璧に読んで、1回目は130m、2回目は150m級の特大アーチを放ちました―
とのこと。
お立ち台では、真面目くさった顔で、英語でインタビューを受けていたそうだ。
どこか、「求道者」的な雰囲気のあるロペス選手らしいと思った。
そして、この初戦の勝利により、ユニコーンズは埼玉ジャッカルズとの3連戦最終戦から続けて2連勝。
さらに、予想外のことが起こった。
続く2戦目、3戦目を連勝して、一気に4連勝。3位の仙台シャークスと入れ替わる形で、ついに3位に浮上。
シーズン開始から6連敗もし、最下位に沈み、散々ネットで叩かれていた、私やユニコーンズ。
しかし、
―ユニコーンズ、強え―
―ロペスのホームラン、エグい―
―ロペス、苦手な変化球までホームランにしてる―
―蒲生は、山谷との同期対決に勝った―
―蒲生、復活!―
インターネット上では、ユニコーンズの話題で盛り上がっていた。
そのことにほくそ笑む私。
実際、ロペス選手は、一昨年に東京ビッグボーイズが獲得したが、活躍せずに、すぐに解雇された選手。
蒲生選手は、34歳のベテランで、足も肩も悪いため、トレード要員として私が獲得した選手。
これに大阪ドリームス出身の柏木選手を加えた3人が、私が北浦源五郎の抜けた穴として補強した選手だ。
彼ら3人の年俸を足しても、6200万円。
その金額以上に活躍してくれるのだった。
残りは、柏木選手の復活を待つばかり。
そして、ここからがスタートラインだったのだ。




