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JKのプロ野球GM奮闘記  作者: 秋山如雪
第4章 上昇気流
21/30

第21話 復活する男たち

 8月下旬。


 今度は、現在5位と低迷していたが、昨年はユニコーンズと、わずか1ゲーム差の4位で、ギリギリだが、ファイナルシリーズ出場を逃したチームとの3連戦となる。


 対埼玉ジャッカルズ。

 場所は、埼玉ドーム。


 この埼玉ジャッカルズもまた、強力な投打の選手を有していた。


 投の主役は、河南かわなみ佑樹ゆうき。右投右打。20歳。昨年度の新人王だった。まだ高卒2年目の若い選手ながら、すでにその投球術は完成形を作っていた。

 MAX162キロの重いストレートを武器に、速さの違う数種類のスライダー、カットボールを投げ分ける。

 昨年は12勝6敗で新人王を獲得。まさに今、「売り出し中」の若手の期待の星でもあった。


 打の主役は、外国人助っ人で、ビリー・ジョースター。右投右打。DH。31歳。規格外のパワーを誇る大柄な選手で、丸太のような太い腕から繰り出す打棒は恐ろしく、当たれば簡単にホームランになった。

 昨年の成績は、打率.310、50本塁打、102打点で、見事に太平洋リーグの本塁打王に輝いている。

 彼が不動の4番バッターとして君臨。


 他にもバランスが取れているチームだったが、本年度は河南以外の投手が打たれており、総合的に昨年より劣っていた。


 そこで、私はまたも愛華と相談し、このチームとの対戦における作戦を考える。


 だが、残念なことに今回は、明確な「作戦」らしき物が思い浮かばなかった。


 直接対決で3連戦だから、もちろん2勝1敗以上に持ち込みたいという気持ちはある。


 仕方がないというより、妥協点として、今回、遠征出発前に、いつものように、私が島津監督に指示したのは、一つだけだった。


「出来るだけ球数を節約して下さい」

 つまり、球数を制限して、投手陣の疲労を防ぐ。

 その間に、守備力を強化できるというメリットもある。


 だが、今回ばかりは「具体的な」作戦内容ではなかった。


 こちらは、私がトレードで獲得した、楠木尚樹選手が先発する第3戦が決め手で、その第3戦に向こうは、エース級の河南を投入してくる予定だった。


 結果、第1戦は落とし、第2戦はかろうじて勝ち、そして第3戦。


(なるようになるか。あるいは選手が奮起してくれれば)

 祈るような気持ちで、しかし私はいつも通り、ジンクスを恐れて、自宅で宿題をしながら、経過を見守った。


 普段より早く、午後9時5分くらいにLIME通知が来た。


―3対2でかろうじて勝ちました―


 どうやら接戦だったようだ。


 しかし、愛華のLIMEが面白い内容を伝えてきた。


―先発の楠木選手が、相手打線をわずか4安打1失点に抑える好投。そしてバッティングで活躍したのが、谷村選手です―


―谷村選手が何か?―


―4打数3安打の猛打賞、1本塁打です―


 詳しく聞くため、私は彼女をまたも呼び出した。


 幸い、今、埼玉ドームにいる彼女は、車で千葉県まで移動してくるという。


 すでに夜の9時を回っていたから、道路は比較的空いていて、1時間後、近所の駅前の喫茶店に彼女は来てくれるのだった。


 そこで待っていると、彼女がいつものようにスーツ姿でやって来た。

 注文を頼み、席に着いた彼女に詳しく聞いてみる。


「楠木選手は面白いですね」

「面白い、ですか?」


 予想の斜め上の回答だった。


「ええ。一見、サイドスローにも見える、変則的なスリークォーター気味の投げ方から、タイミングを外す投球で、相手打線を翻弄してました」

 結局、7回2/3を投げて、彼女が言ったように相手打線をわずか4安打1失点に抑える好投。


 愛華によると、投手コーチと特訓をして、新たにサークルチェンジ(=チェンジアップの一種)を覚えたという。変則的なフォームを生かした、タイミングをズラす投球術が光っていたそうだ。


(私の見立ては間違っていなかった)

 私としては、元々、自分の目を信じて獲得した選手だから、嬉しかった。


 何しろ、昨年の成績が4勝10敗、防御率5.25の選手だ。それがこんなに活躍するとは誰も思っていなかったかもしれない。


 さらに、

「谷村選手が復活しました」

 と告げた、愛華の発言内容が興味深かった。


 元々、将来を期待された、ドラフト1位のアベレージヒッターだが、怪我で不振に陥っていた選手だ。

 それがこの試合では、まるで「水を得た魚」のように生き生きとしていたという。


 バットがボールに吸い付くように、見事なバッティングで活躍。

 これも、愛華が言ったように、4打数3安打の猛打賞、1本塁打で試合を勝利に導き、ヒーローインタビューのお立ち台に、楠木選手と共に立っていたそうだ。


 普段、どちらかというと無口で、あまり表情に変化がない谷村総司選手が、お立ち台で、笑顔を見せていたのが、愛華には印象に残ったという。


 愛華によると、谷村選手は、打撃コーチと二人三脚でバッティングフォームの修正に取り組んでおり、それがようやく成果が出てきたらしいとのことだった。


 これで、大阪ドリームスに続き、埼玉ジャッカルズにも勝ち越し。

 8月に入って、チームは上向いてきていた。


 そして、1番足利、2番柏木、3番谷村、4番桜庭という上位打線が固定されてきたのも大きかった。


 本当に強いチームというのは、打順をコロコロと変えず、ある程度、固定化されていることが多い。

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