第21話:良いコト
レガリアに転移して皆とクルゥ達を送ったあと、俺とルカは『マミヤ邸』に一旦帰宅して、ナディアさんに事の顛末を話した。
お化け屋敷に行ったこと、魔族が待ち構えていたこと。
そして、俺が死にかけてしまったことを伝えると彼女は激昂してしまった。
「マミヤ殿! なぜ私を連れて行かなかった!?
たかがコウモリ女1匹に手こずるなど…!」
「あばばば! す、すみません!
あいつ結構強かったんですよ!」
ナディアさんは鬼の形相で、俺の胸ぐらを掴みガクガクと揺らしてきた!
あ、頭が取れる!
「落ち着けウォルト。
もし君が来ていたとしても、零人が人質にとられている状況では、君とて適切に行動できないだろう?」
「む。まぁ、そうかもしれないな…
護衛する任務は昔から不得意ではあったな」
おい! 警備隊がそんなこと言っていいのか!?
ルカのひと言で納得したあと、ナディアさんは俺からすっと離れた。
ルカは当然のようにフォローしてくれたけど…それって要は、俺がヘマしたから皆が闘う羽目になったんだよな…。
「だがマミヤ殿!
これだけは私と約束してくれ!
私以外の人や魔族に絶対に負けないと!
家に反発していたとはいえ、私にも警備隊総隊長としての矜持は持ち合わせている。
そんな私から1本を取った貴公は、絶対に敗北は許されんのだ!」
「は、はい」
えらい剣幕でビシっと指を突きつけられた。
闘いを生業にしてる職業柄なのだろうか?
ナディアさんはこういう面ではかなり厳しい。
「それで本題だが、先ほど説明した件をゼクス王にも報告するべきだと思うのだ。
良ければ君が取り次いでくれないか?」
「ああ、構わない。
ちょうど私もそちらに用があったからな。
少し待っててくれ、着替えてくる」
ナディアさんはパタパタと自分の部屋へ戻って数分後、ガッチャガッチャと黄金の鎧を装備してやってきた。
…最近給仕服しか見てないもんだから、こっちだとなんだか違和感があるな。
☆☆☆
ゼクス・キャッスルに3人で赴き、ナディアさんが王様の宰相に口を聞いてくれたあと、警備隊本部に用があるということで、ひとまず彼女と別れた。
そして謁見の間に通してもらい、今回の件を王様に報告することができた。
「『吸血鬼』イザベラか…
奴のことは憶えている。
自分の仕える主、紅の魔王には忠義が厚いが、それ以外の魔族や人間に対しては酷く残虐な行為を行なっていた」
「人間に対しては自分が食べられそうになったので嫌というほど実感しましたが、魔族にまでそんなことをしていたんですか?」
「いかにも。
奴にとって主と己以外の存在は、ただの食料と屍人の器にしか映っていないだろう。
正真正銘の『鬼畜』だ」
考えてみれば、あの屋敷の魔物はアンデッドしか居なかった。
まさか全て『屍人起こし』で造った兵隊だったのだろうか?
「奴は私を知らないようだったが、魔王は私たち宝石に兄弟がいる事を部下に教えなかったのか?」
イザベラは俺を拘束したあと、あれこれ聞いてきた。
『魅惑眼』はマジで最悪だった…。
マジで何もできなくなるんだもん。
「少なくとも、我が闘った時はそのような事を口走りはしなかった。
魔王により兄君の口が封じられているのなら、その情報を知りえないのやもしれん。
あるいは…」
「あるいは?」
王様は少し考え込んだ。
「…いや、なんでもない。
しかし、我が驚嘆に値するのはマミヤ殿だ」
「は、はぁ…? 俺がですか?」
今回俺は良いとこあまりなかったと思うけど。
皆を危険な目に合わせちゃったし…。
「イザベラの『魅惑眼』を自力で解いたのだろう?
あの忌まわしき闇の魔法を人間が打ち破ったなど、普通は有り得ないのだ」
「ああ、それについてはルカのおかげだと思います」
「私の? どういうことだ?」
俺は蒼のエネルギーを片目に集中させた。
「俺が戦う時はいつもこんな感じで相手を観察して弱点を分析します。
あいつに『魅惑眼』を食らう直前、とっさに眼をエネルギーで覆いました。
その後、ルカの声が微かに頭に入ってきて…気づいたら身体を動かせました」
「ふむ? その『えねるぎー』とやらは闇の魔法を跳ね除ける効果があるのか?」
「どうでしょう…?
けど俺はこの力に…ルカの温かいエネルギーに助けられたと思ってます」
「……っ!」
案外、『同調』中にも身体をエネルギーで覆っていると、多少のダメージは防いでくれている。
俺はこの世界に来てから何回もルカに命を救われてるな。
俺の発した言葉に場の空気がほわっと、和やかになったように感じた。
「フフ、汝らは互いに良き理解者なのだな。
紅の宝石にもそのような相手が見つかれば良いのだが…」
「ええ、おっしゃる通りです」
妹であるルカの方を見ると、なぜか動かずにずっと黙ってる。
あれ? どうしたんだ?
「ルカ?」
「…………」
ボーっとしてる?
宝石の身体を指でトントンと叩くと、ビクッと反応した。
「!?」
「どうしたんだよルカ?」
「…別に」
なんだってんだ?
「しかしよくぞ無事に生きて戻って来れたものだ。
汝らに何か褒美を与えたいところだが、宰相がうるさいのでな。
今回は勘弁願おうか」
「ああ、いえ!
そんなつもりでここへ来たんじゃありません!
あくまで、魔王の部下がこの国に現れたことを陛下にお知らせしたかっただけです」
しまった!
宰相さんが家まで貰っておきながらなんて図々しい男…って顔してる…。
「そうだな、実に由々しき事態だ。
何のためにイザベラが我が国に現れたのかは知らんが、魔王の復活が近づいているやもしれん。
王国内に他の魔族が潜んでいないか警戒を強める必要があるな…」
「俺も仲間たちと一緒に紅の宝石の新しい契約者になってくれる人を探してます。
見つかり次第、またご報告しますね」
「ああ。宜しく頼むマミヤ殿」
☆☆☆
王様への報告が終わり、俺とルカはお城の正門の近くでナディアさんを待っていた。
せっかく取り次いでもらって、俺らだけ先に帰っちゃっても失礼だしね。
……それよりもルカの態度がさっきからなんかおかしい。
「ルカ、後半ほとんど喋らなかったけど珍しいんじゃない?
宝石はおしゃべりなのに」
ボン!
するとルカはエネルギー体に変化し、蒼い髪の人間の姿になった。
ちょっと拗ねたような表情でずいっと近づき、細い指先でほっぺを引っ張ってきた。
いひゃい。
「君のせいだぞ、馬鹿者。
よくも公然の面々であのような恥ずかしいことを…」
「へ? おれ、なんはいっひゃっけ?」
「自覚がないからタチが悪いのだこの男は…」
「よふわはらんへど…、ほりゃっ!」
「はふっ!? へいと!」
お互いに頬を引っ張り合ってしばらくじゃれてると、見覚えのある赤い髪の女性が目に入った。
あれはナディアさんだ。
「おーい、ナディアさーん!」
大きい声で呼ぶと、彼女もこちらに気づいたようだ。
ガッチャガッチャと近づいてきた。
「マミヤ殿、私を待っていてくれたのか?」
「ええ。これからパーティーメンバーと飲みに行くんですけど、良かったらナディアさんも来ませんか?」
「ほう、それは嬉しいお誘いだな。
冒険者達と飲むなど随分久しぶりだ。
ところで、隣にいる麗人は貴公の知り合いか?
なにやら宙に浮いているが…」
麗人? あ、ルカのことか。
「そういえばナディアさんにはまだ説明してませんでしたね。
実は彼女は…」
シュルッ!
『融解』のことを話そうとした瞬間、ルカは俺の首に手を回してきた。
そして見せつけるように、ルカはナディアさんに言い放つ。
「この男が先ほど、私に一対一の決闘を申し込んできてな。
軽く叩きのめして私が勝利したわけだが…敗者は勝者の言うことをなんでも聞くという条件の決闘だったので、私の奴隷になってもらったのだ」
「は?」
「な…なんだと!?」
なんでそんなデタラメなこと言ってるんだ?
するとナディアさんがゴウッと、謁見の間で闘った時と同じ赤いエネルギーを身体中に覆い始めた。
え、なぜいきなり『炎獣』モード??
「マミヤ殿…?
先ほど私と約束したことをたった数刻で破るとは良い度胸じゃないか?
そのうえ奴隷に身を落とすなど…!」
そういうこと!?
ポキポキと拳を鳴らしながら近づいてきた!
やべぇ、めちゃくちゃキレてる!
「ご、誤解です! おい!?
なに適当なこと言ってんだ!」
「ふん、私を辱めた仕返しだ。
少しは痛い目を見るといい」
「はずかしめ!? あ、あのナディアさん!
こいつはルカ…」
「問答無用!!」
ドゴッ!!!
炎獣のボディーブローが俺に炸裂した。
☆☆☆
「では、その姿は貴公の宝石による力だったということか?」
「ああ。
あの女が私を極限まで怒らせてくれたからな。
おかげでこの形態を得ることができた」
現在、3人で肩を並べながら冒険者ギルドまで歩いて向かっている。
転移で向かっても良いんだけど、今それをしたら腹の中身をぶちまけそうなのでやめといた。
「…無事誤解が解けたようで何よりですよ。
ルカ、この恨みぜってー忘れないからな」
「ふふふ、そんなに怒るな。ふむそうだな…。
零人が望むなら、お詫びに家に帰った後でとっても『良いコト』をしてやるぞ?」
「へ!? そ、それって…何するの?」
「それは帰ってからのお楽しみだ」
イタズラっぽくルカは笑った。
ゴクリと喉が鳴った。
ルカってよくよく見ると、かなりの美人だ。
カチッとしたキャミソールとショートパンツから覗く、透き通った白い肌に、スラリとした長い肢体…。
見つめられると身体の奥までゾクゾクするような、切れ長の蒼い瞳。
そんな女性から『良いコト』なんて言われたら…期待しかないじゃないですか!
「…なぜだかは分からないが、貴公のその鼻の下を伸ばした顔は異様に腹が立ってくるな。
もう1発食らわせても良いだろうか?」
「伸ばしてません伸ばしてません!
だからその赤い拳引っ込めてください!」
☆☆☆
ナディアさんを宥めつつ、色々話しながら歩いているとやがて目的地のギルドに着いた。
ドアを開けてくぐると、いつも通りガヤガヤとしている…のだが、1人の冒険者のおっさんがナディアさんを見るなり腰を抜かした。
「ナ、ナ、ナディア・ウォルトだぁぁぁ!!!」
その瞬間、喧騒がやかましい場の空気が一気にザワついた。
「なに!? あ、ほ、本当だ!
『炎獣の騎士』だ…」
「あの方は今は王国警備隊だろ!?
何故ここに?」
「お、おい見ろよ!
あの黒髪の野郎と一緒に居るぞ!」
「まっ、待て!
もう1人見たことない蒼い女がいるぞ…。
な、なんて綺麗なんだ…!」
「許せねぇ…!
あんのクソ黒髪…なんであんなに女ばっかり集めてパーティー作ってんだ!
殺してやりてぇぇぇ!!!」
…俺への中傷はさておき、シルヴィアが言ってた通りこのギルドでは伝説の冒険者だったってのは本当みたいだな。
しかし、先ほど言葉に気になる単語があった。
「あのナディアさん、『炎獣の騎士』って?」
「…それは冒険者たちが勝手に付けた渾名だ。
特に気にするな」
ナディアさんの頬に若干朱が差していた。
昔の渾名で呼ばれるのは恥ずかしいのかも。
「レイト!」
声のした方を見ると金髪のデカエルフ、フレイが迎えにきていた。
いや、もしかしてずっとここで待ってたのか?
「遅かったじゃない。
あら? ナディアも来たの?」
「ああ、マミヤ殿に誘われてな。
邪魔させてもらうぞフレイ殿」
「せっかくだし一緒にどうかなって。
リックとシルヴィアを驚かせたかったしな」
「ああ、たしかにあの二人は喜びそうね。
席は確保してあるわ。行きましょ!」
☆☆☆
ギルドの酒場に行くと、酒と料理が載せられた大きいテーブルの所でリック、シルヴィア、セリーヌが待っていた。
そして予想通り、リックとシルヴィアはナディアさんにたまげて椅子からひっくり返った。
「ナ、ナ、ナディア・ウォルト総隊長!?
な、なぜここに居るのですか!?」
「う、ウソだろォ?
伝説の…最強の冒険者だぞ…!!」
2人だけではなく、周りの冒険者たちも驚いて酒を飲む手を止めた。
すごいな、ナディアさん。
「本日はマミヤ殿の誘いで私も同席させてもらうことになってな。
相席しても構わないか?」
「…!! もっもちろんッス!
どうぞオレの椅子を使ってください!!」
「あなたは馬鹿ですか!?
ウォルト総隊長にリックが座った汚い椅子なんて使わさせられるわけないでしょう?!
…待っててください!
今から家具店に行ってとびきり高級な椅子を…!」
「なに、気にするな。
イスの1つくらい、適当に持ってくればよい」
ナディアさんはカウンター席の椅子をヒョイっと手に持つと、俺たちのテーブルに設置した。
おお、なんだか歴戦の冒険者っぽい!
「よし、全員揃ったところで早く食べましょ!
私もうお腹ペコペコなのよ」
「右に同じニャ! 待ちきれないのニャ!」
そして、ナディアさんや他の冒険者達も交えた大宴会が始まった。
☆☆☆
「♪♪♪〜」
「げ、元気ねレイト…。
よくあんなにお酒飲まされて無事だったわね」
宴会が終わりようやく『マミヤ邸』に帰宅した。
もう夜中だ、長い1日だったぜ…。
それはそれとして、まず俺はやらなきゃいけないことがある。
「フレイ、ナディアさん。
今日は『洗浄』は大丈夫だから。
今夜は浴室で身体洗うよ」
「あー助かるわ…。
久しぶりに飲み過ぎて気持ち悪かったのよ」
「ああ、私も年甲斐なくはしゃいでしまった。
しかしやはり冒険者は良いものだな…。
悪いが今日はこのまま就寝させてもらうぞ」
2人はお酒がだいぶ回っていたようで、フラフラと自分の部屋に入って行った。
あの2人以上に酒をガブガブ飲んでいたセリーヌが、クイクイと袖を引っ張ってきた。
「レイト君。
あたしが『洗浄』するかニャ?」
「いや、大丈夫だ。
今日はセリーヌだって疲れたろ?
構わずゆっくり休んでくれ」
「そうニャ?
それならお言葉に甘えさせてもらうけど…。
レイト君、なんでソワソワしてるのニャ?」
ギクッ!
くそ、女の勘…いや、妖精猫の勘なのか?
セリーヌめ、中々鋭いな…!
「べ、別にそんなことはないぞ?
あくまで皆を気遣ってだな…」
「ふーん? …まぁいいニャ。
おやすみレイト君」
セリーヌはそれ以上追及せず、トテトテと自分の部屋に入って行った。
ふう…。
危ねぇ危ねぇ、何とかごまかせた。
その様子を見てたルカはクスッと笑っている。
「ふふ、零人。
あんなに飲んだのに元気だな。
そんなに『良いコト』が楽しみか?」
「うぇっ!? ま、まぁその…はい…」
「君は正直だな可愛いヤツめ。
はやく身体を洗ってくるといい」
ルカは俺の額を指でピンっと弾くと、俺の部屋に入って行った。
…うおお、やべぇ!!
この自分の中の『男』が滾る感じ、ずいぶん久しぶりだ!
た、楽しみ過ぎる…!
俺は期待に胸を膨らませて、浴室でシャワーを浴びた。
☆フレデリカ・シュバルツァーsides☆
自室に入ったあと、常備しておいた回復薬をグイッと飲んだ。
ふぅ…スッキリ。少しは楽になったわね。
それにしてもレイトのヤツ、かなり飲んでたわりにあまり酔ってなかったわね…。
むしろ帰宅してから妙にギラギラしてるというか、変な雰囲気だった。
…まぁいいか、今日は遅いしもう寝ましょ。
『点灯』を消してしばらくすると、隣の部屋から〝声〟が聴こえてきた。
「…あっ…ルカ、そこ…気持ち良い…」
「ふふふ、私のテクニックは中々だろう?」
「ああ…まさかルカにこんな『良いコト』してもらえるなんてな…」
ガバッとベッドから飛び上がった!
そして一気に酔いも消し飛んだ。
こ、こんな夜中になにしてんのよあの二人!?
壁に耳を当ててさらに状況を探る。
「や、やばいってルカ。
俺、ハマっちまうよこんなの…」
「ふむ、しかしけっこう溜まっていたのだな。
これからは私がたまにしてやろう。ふ〜」
「ヒャッ! ま、マジで!?」
『溜まる』!?
そ、それって…!
あっ! そういえば今夜のルカ…人間になったまま帰ってたわ!
まさかあのふたり…! 私は部屋を飛び出した。
☆間宮零人sides☆
身体の隅から隅まで洗った後、ウッキウキでルカが待っている俺の部屋に入った。
ルカはベッドの上で正座をして待っていた。
…間宮零人、突貫します!
「来たか。ここに頭をのせろ。
私が耳かきをしてやる」
「おう! って、えっ…? み、耳かき?」
ポンポンとルカは自分の脚を叩いている…。
え、えええ!?
まさか『良いコト』って耳かきのこと!?
「ああ、そうだ。
それとも零人はもっと何か別のことを期待していたのか?
んんー?」
ルカはニヤニヤと、俺をからかうように言ってきた。
…み、耳かきか…。
はい、正直もっとスケベなイベント期待してました。
俺は肩を落として、とぼとぼとベッドに腰掛けた。
「ふふふ、そんなに残念そうな顔をするな。
前に君の小説を読んでから一度やってみたかったのだ」
「小説? ああ、ラノベか。
たしかにそのシーンはルカ気に入ってたもんな」
「ああ。ほら、早くこっちに倒れろ」
「ちょっ!?」
ルカは俺の頭を掴んで自分の太ももに乗せた。
…!? なんだこの肌触り? スベスベしてる…。
前言撤回。これだけでも最高かもしれない。
「さぁ、始めるぞ。
危ないから動いてはならんぞ零人」
「う、うん。あっ…♡」
☆☆☆
ルカの耳かきは想像以上の破壊力だった。
金取れるぞこんなん。
「はぁ…気持ちいい…。
なぁ、本当にこれからもしてくれるの?」
「ああ、もちろん。
せっかく人間の身体を手に入れたなら、最大限に活用しないとな」
「そっか…」
もしかしたら、ルカもルカで人間の身体を楽しんでいるのかもしれないな。
そのことに俺も嬉しく思っていると、ルカの動かす手が止まった。
俺の頬に髪がパサっと乗っかった…。
…えっ、まさか顔を寄せている…?
「…けどもし、零人がしたいのなら…これ以上のことも…」
バン!!
「「!?」」
ルカが何かを言いかけた瞬間、部屋のドアが勢いよく開いた。
ビクッとルカの手元が震える。
ちょ!? 危な! 突き刺されるとこだった!
「な、なにやってんのよあんた達…ってあれ?
み、耳かき?」
「シュ…シュバルツァーか、どうしたのだ?」
ポカンと2人が見つめ合ってる。
「なんかレイトの気持ち悪い声が聞こえてきたから、その…」
き、気持ち悪い!?
隣の部屋まで声が漏れてたのか…。
でも、仕方なくね?
ルカの耳かきめちゃくちゃ気持ちいいんだし…。
「今日は零人が頑張ってくれたからな。
何かご褒美でも与えようかと思ったのだ。
…いったい君は私たちが何をしてると思って部屋に飛び込んできたのだ?」
「へ!?
そ、そんなの…なんでもないわよバカ!!」
再びバン!と扉を閉めると、フレイは帰ってしまった…。
な、何がしたかったんだあいつ?
「さて、今回はこれで終了だ。
そろそろ寝るぞ」
「あいよ。ありがとなルカ」
ボン!
ルカは元の宝石へと姿を変えた。
はぁ…気持ち良かったな…。
極上の刺激の余韻を感じながら、俺はぐっすりと眠りについた。




