第106話:零人の〝お願い〟
未だに現れないマミヤ…。
妙な胸騒ぎを覚え、私は魔物どもが監禁されているエリアへ急いだ。
上階から向かったので、多少はショートカットすることができた。
「これを…1人で…?」
マミヤが通ったであろう道すがらには、気絶した警備の亜人どもが横たわっている…。
彼は私と同じ人族…。
とても戦闘力があるようには思えないが…。
冒険者という者は、見た目だけでは判断できないのだな。
「………!」
「……やめ……!」
「……ギ………ギ…!」
今の声は!?
魔物の鳴き声と人の声…マミヤの悲鳴!?
まさか…助けた魔物に謀られたのか!!
クソッ…!!!
急がなければ…!!
しかし、私の『外骨鎧』はパワーはあっても動きが鈍い。
鎧を脱いで向かうか…?
いや、私自身に大した戦闘力はない。
確実に返り討ちにあってしまう。
「くっ…!!
もっと速く動け! このポンコツ!」
そもそも外骨鎧は、装着者の魔力を胸部に内蔵された魔石へと送り込み、それに接続された腕部と脚部を自身の魔力の一部として操作する。
だが、焦る気持ちだけが先行してしまっているせいか、思うようにうまく動かせん!
「……絶対に、諦めんぞ!!」
ガシャ、ガシャン…!
一歩一歩、確実に前進させる。
そして少しずつ、歩行のスピードを高め、何とか『走行』することができた。
よし…!
今、助けに行くぞ……マミヤ!!
☆☆☆
ようやく牢屋までたどり着いた。
「やめろぉぉぉ!!!」
「ギャオオン!!」
マミヤの声と魔物の争ってる声は鉄格子の奥から未だに聴こえる。
何とか間に合った…!
…よし、覚悟を決めろシトロン
ガゴッ!!
意を決して、牢屋の鉄格子を破壊した!
「マミヤ!! 助けに……」
それは異様な光景だった…。
大量の魔物が囲っている中心でマミヤが…
「アハハハハハハハッ!!!!
て…てめ、どこ触って…アハハ、ハハハ!!」
「ギャギャギャ!」
「オオオン!」
「シャルルッ!」
胴上げされて身体をもみくちゃにされていた。
「あんた達!
いい加減マミヤレイトを降ろしなさい!!
時間が無いってなんべん言えば分かるのよ!?」
「み、みんな!
助けてもらって嬉しい気持ちは分かるけど、今は落ち着いて!!」
さらには中心の外から人語を喋る魔物が2体、胴上げをする魔物たちを『説得』していた…。
………なんだこれは?
私は今、何を見せられているんだ?
すると、マミヤは胴上げされながら、こちらに目を向けてようやく私の存在に気づいた。
「…あっ…!?
あんたシトロンさんか!? 助けてくれぇぇ!!
コイツら離してくれないんだ!!」
「あ、ああ…」
ドォン!!
腕部に魔力を集中させ、そのまま地面へ打ち下ろした。
タイルの床が抉れ、クレーターができあがる。
爆音が観客席まで届いた可能性があるが、この際仕方あるまい。
「貴様ら! その男を解放しろ!
さもなくば踏み潰すぞ!!」
「ギャウウウウッ!!」
「グルルルルッ!!」
しかし、私の脅しは全く通じない。
それどころか、魔物たちはまるでマミヤを護るように威嚇してきた!
…バカな…!?
魔物が人間を護る…?
しかも生態もまるで異なる種族同士が1つの目的に合わせて行動するだと…?
こんな魔物…見たことも聞いたこともない。
「ふぅ〜、やっと降ろしてくれた…。
ありがとう、シトロンさん」
「え…? ああ、礼には及ばんが…。
これはいったい、どういう状況だ?」
マミヤは身体の埃を払うと、私の脚部…足元へやってきた。
彼が私に近づいた様子を見た魔物たちは、安全と判断したのか威嚇を止め、各々その場に座り込んだ。
「いやぁ、首輪の解錠は上手くいったんだけど、全員助けた途端、コイツら群がって来て…。
あのまま喰われるかと思ったよー」
「は、はぁ…?」
マミヤはヘラヘラと呑気に笑いながら鎧の脚部に手を付く。
魔物たちは助けてもらった恩を彼に感じた…ということなのだろうか?
「なによマミヤレイト。
そのニンゲン〝こっち〟の味方なの?」
「ああ。この人はシトロン・ワーグさん。
俺たちのドクターだ」
「あ! だからレイトくん第2ラウンドであんなにボロボロにされたのに今ピンピンしてるんだ!
ドクター…お医者さんかー。
よろしくね、シトロンさん!」
さらに先ほど魔物たちに呼びかけていた2体の魔物…蛇女と二ツ犬もマミヤの傍へやってきた。
しかも私に挨拶まで…!
いや…気さくにもほどがあるだろう!?
まさか魔物とここまで友好的な関係を築けているとは…。
マミヤ…お前は、何者なんだ?
☆間宮 零人sides☆
魔物の救出作戦は無事に終わった。
けど、まさかこんなトラブルで時間をロスするとは…。
でも、とりあえずみんな落ち着いてくれたようで良かった!
「シトロンさん。
アリーナの様子はどうだった?」
「良くない状況だ。
もうすぐジョナサンの挨拶が終わる。
このままではお前のペアのフレデリカが危険だ」
「分かった」
よし…。
あとはアリーナへ戻ってルカ達を助けるだけだ。
それにはコイツらの力が必要だ。
俺はタイルに座り込んでいる魔物たち全員へ、『協力』を要請した。
「みんな、聞いてくれ!
お前らの枷は外したからもう自由の身だ。
あとは牢屋を出て左手に真っ直ぐ進めば、資材搬入口から外へ脱出できる…」
その情報に誰1人として反応はない。
俺は言葉を続けた。
「だが、俺はお前たちに〝助けてほしい〟。
俺の大切な…大事な相棒と仲間がジョナサンの野郎に囚われたままなんだ。
あいつらを助けるには俺の力じゃ足りない…」
バッ!!
みんなの目線より下になるように、俺は頭を垂れた。
「だから、頼む!!
お前たちの力を貸してくれ!
俺はなんとしても…あのクソ野郎からルカとセリーヌを取り戻したいんだ!!」
「「「…………」」」
静寂が冷たい牢屋の中を支配する。
最初に沈黙を破ったのは蛇頭だった。
「オマエ、オレノオンナ、約束通リ助ケタ。
ソレニオレハ…『蒼ノ旅団』ニモ入ッタ。
ダカラ、オレモ、オマエノ『相棒とナカマ』、オレガ助ケル!!」
「蛇頭…!
ありがとう…! ああ、頼りにしてるぜ!」
ガシッ!
蛇頭は右手を差し出し、握手を求めてきた。
もちろん俺はそれに応え、力強く握りしめる。
「当然、僕も手伝うよっ!
人に優しくされたら恩を返してあげなさいって、ご主人サマが言ってたからね!」
二ツ犬はペロリと俺の頬を舐めてきた。
魔物というより、本当に犬の仕草だ。
「ありがとな!
全部片付いたら骨付き肉ご馳走してやるぜ!」
「ホント!? 嬉しいな!」
尻尾をブンブンと振り出した。
うーん、可愛い。
なでなでしてると、今度は蛇女が俺の前にやって来た。
「マミヤレイト」
「ん?」
「アタシが試合中に言ったこと…覚えてる?」
言ったこと…。どれのことだろう?
もしかして、最初のあれかな。
「ここから脱出したら俺を殺すってやつか?」
「ええ、そうよ。よく覚えててくれたわね」
正解だったみたいだ。
当たっても全然嬉しくないけど。
「アタシは狙った獲物は必ず仕留めるわ。
だけど今だけは…貴方の〝牙〟になってあげる。
せいぜい光栄に思うことね」
「蛇女…」
パサっと、手で髪を払う仕草はまるで高飛車な女王サマだ。
でも、とても心強い。
何気にコイツも戦闘力あるからな。
期間限定でも仲間になってくれるなら、俺としてはありがたい。
さらに付け足すように蛇女は言葉を続けた。
「あ、あと…!
あんたアタシのことラミアラミアって呼んでるけど、アタシにだってちゃんと名前があるんだからね!」
「そうなの? なんて言うんだ?」
妖精猫のセリーヌや、海竜のおっさんにだって名前があるんだし、当然といえば当然か。
しかし、何故か彼女は口をへの字に結んで中々答えない。
「……今度会った時に教えてあげる」
「へ…? そ、そう…」
プイッとそっぽを向いてしまった。
今教える流れだったんじゃないの!?
というか、殺す予定の相手にわざわざ名前教えても意味無いんじゃ…。
不思議に思っていると、いつの間にか俺の周り…シトロンさんも巻き込んで、魔物たちから再び囲まれていた。
「ギャアッ!!」
「クルルッ!」
「みんな……ありがとう!
へへ、ああそうだな。頑張ったかいがあったよ」
『馬妖精』や『大海狸』、『樹木人』などなど、みんな熱い応援と言葉を掛けてくれた。
グスッ……
アカン、涙出てきた。
「…お前、魔物の言葉を理解できるのか…?」
「ズズッ…、うんまぁね」
「し、信じられんな…。
魔物と心を通わせる…か」
シトロンさんは何か考え込んでいるようだ。
あ、そういえばまだ、彼女には俺の素性を詳しく言ってなかったな。
あとで教えてあげよう。
俺の相棒…宝石のルカと一緒に…。
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
零人は単に魔物からじゃれられているだけでした笑
悲惨な状況を期待していた読者様、
ゴメンなさいm(._.)m
「続きを読ませろ!」と思った方は、ぜひブックマーク、並びに下の☆を『5つ星』お願いします!
何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!




