第100話:首輪の外し方
「ううっ…!
フレイ、もう少しゆっくり歩いてよ…」
「…ったく、このバカ!
私には本気出すなって言っておいて、自分は思いっきり闘ってるんじゃない!
オマケにこんなにボロボロになって…」
「はい…ほんと、すんません…」
第2ラウンド終了後、俺はフレイから肩を貸してもらい、武器部屋へ歩いていた
思ったより身体のダメージが酷い…
口の中なんてもう血の味しかしない
俺よりあの蛇頭の方がヤバそうだけど
「この…クソ黒髪が!
貴様ァ、いつまで生き残るつもりだ!?」
「私たちは血で血を洗う闘いを求めている!
遊びはいらん、殺し合いを見せろ!!」
そして、アリーナ内は俺たちの試合結果が気に入らないのかブーイングの嵐だった
ま、そりゃそうだ
なぜなら人間と魔物、どちらもまだ1人だって死んでいないんだからな
人の生死にベットするクズ共からすれば、もどかしいことこの上ないだろう
誰か一人でもご破算にできたなら、諸手を挙げて喜びたいね
「それでそっちはどうだった?
あのデカい二ツ犬、人語話せるって聞いたけど」
「ええ。
あの魔物は賢いわよ。
おもしろい情報教えてくれたから、あとで話すわ」
「そっか…あ、痛てて…!」
はぁ…肉体もボロボロだけど、服もボロボロにしちゃったな
せっかくおばちゃんが作ってくれたのに…
帰ったら謝らなきゃな
「…私も聞きたいんだけど、あのヘビ女…
ずいぶん、レイトにくっついてなかった?」
「え?ああ、なんかその方が話しやすいべって」
「ふーん…」
「途中あいつに首締められてマジ焦ったよ」
「はあ!?
まさか…もう裏切ったの!?」
「あー、違う違う!」
あいつはただ不安なだけだったんだろう
そりゃ四六時中首に爆弾ぶら下げてりゃあ、誰だってメンタル削れていく
だから俺は彼女を少しも恨んじゃいない
そうフレイに蛇女のフォローをすると、肩に回した俺の手を握る力がなぜか強くなった
あの…わたくし、ケガ人なんだけど…
「…レイト。
あの女に気をつけなさいよ」
「おう、もちろんだよ。
あいつ、無事脱出したら俺を殺しに行くなんて言ってたし、外でも用心しとかないとな」
「そうじゃなくて…
ああもう、どうしてアンタはいつも…
いや、言うだけムダね」
「え、なに、俺が悪いの??」
「なんでもなーい」
ぷいっと顔を逸らした
ちょっと拗ねてる?
しばらく無言のまま歩き、俺は試合の最後に会話した内容を思い出していた
「…あの『蛇頭』…
最後、なんて言ったんだろ…」
「ねえこの前も思ったけど、あなたなんで魔物の言葉を理解できるの?」
独り言のつもりだったが、フレイが反応した
あれ、前に説明しなかったっけ?してないか
「多分、宝石の契約者特典だな」
「特典?」
「ルカ曰く、契約した時に俺の中にある言語の壁をとっぱらったんだってさ。
ある程度の知能を持ってるやつなら、人間でも魔物でも、言葉かニュアンスで通じ合えるよ。
…ドラゴンだけは言葉じゃないとムリだけど」
「何でドラゴンは言葉じゃないとダメなの?」
「怖ぇから理解するより先に俺からコミュニケーションを拒否っちゃうんですよ」
「あ、そうなの…」
ちなみに個体によるが、言葉を喋れなくても相手が発する言葉を理解する魔物も存在する
さっきの蛇頭や、いつも俺を乗せてくれるクルゥのブレイズなんかはそれに該当する
そんなことを話しながら歩くうちに、アリーナの門が開かれた
次で、最後だ…
絶対に助けるからな
待ってろよ、ルカ、セリーヌ…
☆☆☆
「第2ラウンド、ご苦労。
これより治療を開始する。
双方、ベンチへ着席せよ」
「へーい」
「はいはい」
武器部屋へ戻ると、やはりあのデカい門番が待っていた
そういや、この人『裏医者』なんだよな
つーか、この見た目で女性とは…
俺はもちろん、身長があるフレイをも優に越している
医者っつーより、『重騎士』に見える
フルフェイスなのは人族という素性を周りに配慮している…ということなんだろうか?
声に関しても兜で籠っているためか、若干低く中性的に聞こえる
アシュリーはこの人の協力を取り付けると豪語してたけど…
せっかく、話せる機会だ
俺も少し説得してみるか
ガッチャガッチャと、ベンチに座る俺たちの前へ彼女がやって来た
よし、回復掛けられる前に先手を打つぞ
「ねえ、お姉さん。
『シルヴィア・ゴードン』って知ってるよな?
4-703ペアの」
「当然だ。…それが?」
「そいつ俺たちの仲間なんだ。
というか、4-703以上のペアは全員…
俺らはアンタを探しに来たんだぜ?
スラム街で病気をしている人たちをアンタに助けてほしいんだ」
「知っている」
「まあ、そうだよな。
いきなりこんなこと言われても…は!?
知ってる!?」
「ちょ、ちょっとレイト!?」
フレイが慌てて俺の口を塞ぐ
いきなり騒ぎ出した俺の反応に、他の門番たちは警戒を強めた
いっけね、オーバーリアクションだった…
すると、彼女は口元に当たるガードを少しずらした
隙間から彼女の唇が僅かに見える
「詳細は後ほどインターバルにて話す。
まずは、『回復』を受けよ。
終了後、お前たちの控え室へ伺う」
「え…あ、そう…?」
あ、篭ってないとちゃんと女の人の声だ
かろうじて聞こえる声量で俺に伝えてきた
しかしどういうことだ?
まだ何もこっちの事情を話してないのに…
もしかして、既にアシュリーが動いていたのか?
その後、超絶スピードで俺たちのダメージを回復させると、早々に部屋を追い出されてしまった
☆☆☆
そして部屋を出ると、俺が脅して無理やり調べ物をさせたあの『彼』が待っていた
「アニキ!
お待ちしてましたぁ!」
「テメェ…そう呼んだら殴るっつったよな?
歯ぁ食いしばれ!」
「ばか!?レイト!
こんな所で暴れたら警備やって来るでしょ!」
だんだん調子に乗ってきた『彼』を殴ろうと拳を握るが、フレイに止められてしまった
はぁ、仕方ねぇな…
俺たちは手錠を掛けられたまま、彼と一緒に控え室へ歩き出した
そして、小声で会話を開始する
「魔物の首輪、外し方分かったか?」
「うっす。
あれを外すには特殊な鍵が必要のようで、その鍵は『看守室』に保管されています。
ただ、あそこは『看守長』しか出入りを許されていなく…俺には持って来れませんでした」
看守室…ええと、たしかあの見取り図だと…
そうだ、西エリア!
闘技者たちの牢屋の鍵も一緒に保管されてるんだったな
あと、そのエリアにはナディアさん達もいる
…よし!
「おい、俺たちを控え室に連れてったら、急いでお前が着てる制服と鎧を持ってこい。
変装して俺が回収してくる」
「ええっ!?
でも、そんなのバレたらお仲間さんは…」
「うるせぇ。
やらないならお前を看守室へ転移させんぞ」
「や、やりますやります!」
男はブンブンと首を縦に振る
しかし、横を歩くフレイは不満なようで、両手で俺の腕を握った
「バカなこと止めてよ…
もし捕まったらどうするのよ!
あなた死んじゃうかもしれないのよ?」
「大丈夫、心配すんな。
俺はベンターのアジトへ潜った経験がある。
その時少しだけど、セリーヌから隠密行動の心得も教わったんだ」
「で、でも…!」
それでもフレイは腕を離さない
弱ったな…
そんな泣きそうな顔しないでくれよ…
「ア、アニキ今なんと…?」
「あん?」
フレイとはまた違った驚愕の表情で男は目を見開く
どうしたんだ?
「まさか…盗賊団ベンターを壊滅させた『蒼の傭兵』というのはあなただったんですか…?」
「『蒼の傭兵』?
あ、また誤解パターンか…
いや、俺はディンゴ団長とちょっとやり合って、あとはドラゴンを暴れさせただけで…」
「お、俺は今までなんて態度を…!!
あんた…『亜人の国』の英雄じゃないっすか!」
男はそう言うと、地面に頭を下げた!?
こんなとこで何やってんだバカ!
他の警備に見つかるだろうが!
「アニキ!
ただ今より俺は、あなたに忠誠を誓います!
なんなりと命令してください!」
「それなら静かにしろ!
あと早く立て!行くぞ!」
「うっす!!」
こうして俺は、クラブで子分を1人獲得した
…こんな武勇伝1つで掌返すんなら、初めから話せば良かった
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
ついに100話目いきました!
書き始めて約半年でやっと…
ポイントは全然増えていませんが、腐らず更新を続けたいと思います笑
今後ともスター・スフィアをよろしくお願いします!
「続きを読ませろ!」と思った方は、ぜひブックマーク、並びに下の☆を『5つ星』お願いします!
何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!




