32 ジャンジャックとの関係って
ウソデショ……。
私、アニタ・モルニカは今日、息を引き取るのかもしれない。
緊張で、身動きがとれない。
今。
私は。
謁見の間の隣にある、陛下の休息室、の、ソファ、に、座って、いる。
ダメだ。気が遠くなりそう。
「アニタ嬢、大丈夫?」
「へ、陛下。問題ございません!」
「緊張するよね。陛下とこうして話をするなんてこと、ないでしょう」
「チョールエ様の、お、仰る通りに……」
「そうかぁ。これは新鮮で、良いね」
「陛下、あなたは気楽で良いですけどね。私は、アニタ嬢のお気持ちが良くわかるよ」
そう仰る、チョールエ様。
あなた様に対しても、私は緊張しておりますよ。
「ここで何か失敗しても不問にするから、安心して。お茶でも飲んで落ち着いてよ」
気安く話してくださる陛下は、さらに「僕のお気に入りの紅茶なんだ」、なんて付け加えられる。
「陛下の……お気に入り……」
ダメだ。手が震える。
左手首を右手で支えそうになる。
いかん。礼儀作法で褒められた私を、呼び起こせ!
がんばれ私!
どうにか震えを耐え、一口飲んだ紅茶があまりにも美味しくて──。
現金なもので、緊張はほぐれた。
すごい。王室御用達の紅茶の力、すごすぎる。
「ジャンジャックの手紙、ありがとう」
陛下が私の瞳を見て、仰った。
ああ。この話をするために、私をお茶に誘ったのね。
少しだけ、ほっとする。
ただ。
ジャンジャックのことを、この場でなんて呼べば良いのだ。とりあえず彼、とでも言っておくか。
「いえ──あの手紙は彼が、自ら書くと言ったのです。今の自分では、陛下に謁見することもできなければ、手紙を直接届けることも叶わないけれど、ランディオさんのためにできることをしたい、と言って」
「──ああ、そうなんだ」
私の言葉に、陛下は天を仰ぎ見る。
すごいわ。所作の一つ一つが神々しい。
本物の王族とは、こうも素晴らしいものなのね。
ジャンジャック。あなたはやはり、いろいろなものが足りていなかったのよ。
学園で見たときに、神々しさなんて一つもなかったもの。「まぁイケメンね」くらいよ、感じたのは。
「アニタ嬢。率直に聞くけど、ジャンジャックとはどんな関係?」
「え? ──し、失礼いたしました。あの……友人です」
正確には友人とも呼べないけど、まさか店の常連さんとも言えないしなぁ。
「友人? 恋人とか婚約者とか、その──」
けれど、続けて陛下が口にしたその言葉に、私はうっかり表情を取り繕うのを忘れてしまった。




