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婚活中の貧乏子爵家令嬢ですが、小料理屋を開業したら幼馴染みが溺愛してきます  作者: 穴澤 空@ドアマットヒロイン1巻発売中!


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32/49

32 ジャンジャックとの関係って

 ウソデショ……。

 私、アニタ・モルニカは今日、息を引き取るのかもしれない。

 緊張で、身動きがとれない。


 今。

 私は。

 謁見の間の隣にある、陛下の休息室、の、ソファ、に、座って、いる。

 ダメだ。気が遠くなりそう。


「アニタ嬢、大丈夫?」

「へ、陛下。問題ございません!」

「緊張するよね。陛下とこうして話をするなんてこと、ないでしょう」


「チョールエ様の、お、仰る通りに……」

「そうかぁ。これは新鮮で、良いね」

「陛下、あなたは気楽で良いですけどね。私は、アニタ嬢のお気持ちが良くわかるよ」


 そう仰る、チョールエ様。

 あなた様に対しても、私は緊張しておりますよ。


「ここで何か失敗しても不問にするから、安心して。お茶でも飲んで落ち着いてよ」

 気安く話してくださる陛下は、さらに「僕のお気に入りの紅茶なんだ」、なんて付け加えられる。

「陛下の……お気に入り……」


 ダメだ。手が震える。

 左手首を右手で支えそうになる。

 いかん。礼儀作法で褒められた私を、呼び起こせ!

 がんばれ私!

 どうにか震えを耐え、一口飲んだ紅茶があまりにも美味しくて──。


 現金なもので、緊張はほぐれた。

 すごい。王室御用達の紅茶の力、すごすぎる。


「ジャンジャックの手紙、ありがとう」


 陛下が私の瞳を見て、仰った。

 ああ。この話をするために、私をお茶に誘ったのね。

 少しだけ、ほっとする。


 ただ。

 ジャンジャックのことを、この場でなんて呼べば良いのだ。とりあえず彼、とでも言っておくか。


「いえ──あの手紙は彼が、自ら書くと言ったのです。今の自分では、陛下に謁見することもできなければ、手紙を直接届けることも叶わないけれど、ランディオさんのためにできることをしたい、と言って」

「──ああ、そうなんだ」


 私の言葉に、陛下は天を仰ぎ見る。

 すごいわ。所作の一つ一つが神々しい。

 本物の王族とは、こうも素晴らしいものなのね。


 ジャンジャック。あなたはやはり、いろいろなものが足りていなかったのよ。

 学園で見たときに、神々しさなんて一つもなかったもの。「まぁイケメンね」くらいよ、感じたのは。


「アニタ嬢。率直に聞くけど、ジャンジャックとはどんな関係?」

「え? ──し、失礼いたしました。あの……友人です」


 正確には友人とも呼べないけど、まさか店の常連さんとも言えないしなぁ。


「友人? 恋人とか婚約者とか、その──」


 けれど、続けて陛下が口にしたその言葉に、私はうっかり表情を取り繕うのを忘れてしまった。


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