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婚活中の貧乏子爵家令嬢ですが、小料理屋を開業したら幼馴染みが溺愛してきます  作者: 穴澤 空@ドアマットヒロイン1巻発売中!


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24/49

24 全てを巻き込むの

 店にはランディオさんと聖女、そして、ジャンジャックと私の四人だけになった。

 そのことに、二人は気付いていない。

 小上がり席で、二人だけの世界に浸っているようだ。


 でも、そっかー。

 ランディオさんって、ああいうのが好みだったのかー。

 別に、自分からアプローチをしたことがあったわけじゃないのに、妙にショックを受けてしまう。


 いやなんか……。

 結局、男ってああいうタイプに弱いのね、みたいな気持ちにさせられるからだろうか。

 それとも単に、私が学園のときに受けたアレコレを根に持っているから、微妙な気持ちになってしまうのだろうか。


「アニタ嬢……そろそろ」

「ええ、そうね」


 ちらりと二人を見たジャンジャックが、私を促す。

 裏口に、ディアスがクリアノを連れて戻ってきたという合図も来ている。

 いざというときには、彼らが助けに来てくれるだろう。


 それにしても、ジャンジャックは、今のこの状況を、どう思っているのだろう。

 というより、聖女はジャンジャックのことを認識して──ないっぽかったけど……それはそれでどうなんだ?

 気付いていて無視しているのか、それとも本当に気付いていないのか。


「ランディオ、久しぶり。元気だったか? グルレンの森はどうだった」

「おお! ジャン久しぶりだな! お前にも、彼女を紹介させてくれ」


 私たちもゴルゴ酒を手に、小上がりに近付く。

 同じ場所へはあがらず、小上がりの横に、椅子を近付けて座った。


「マーシュだ。グルレンの森で、魔獣から逃げていたところを、保護したんだ」

「魔獣……から?」

「ああ。それで、国王騎士団がいるところに、彼女を連れて行こうかと思ったんだが……。そっちには、魔獣がいるかもしれないから怖い、と」


 なるほど。聖女はそういう設定で、きたわけね。

 これ、ランディオさんは、完全に騙されているってことだわ。

 ジャンジャックをそっと見れば、彼も私の意図に気付き、こくりと頷いた。


 国王騎士団の元には、王国の教会の人もいる。

 聖女は、教会の人に監視されていたはずだ。それを、魔獣退治の混乱に乗じて、逃げ出したのだろう。

 そしてうまいことランディオさんと出会い、彼を籠絡した、と。

 ランディオさんの話を聞けば、おおよそ想像と同じだった。


 ううむ……。これは、彼にどう真実を告げるべきか。

 あ、そう言えば。


「マーシュさん。あなた、この男に見覚えはない?」

「この方、ですか?」


 じっとジャンジャックを見るが、本当にわからないのか、首をかしげる。

 嘘を吐いているようにも見えない。

 確かに、今のジャンジャックは、学園にいたときのような、華やかさはない。


 それなりにきれいな顔はそのままだが、面差しが全く違う。

 肌つやもあの頃のような美しさは消えている。

 平民の中で見ると、元が良いせいもあってきれいだが、貴族ほどではないだろう。髪のつやも同様だ。


 それでも、かつては愛し愛された相手だ。

 わからないことなど──と思い、ふと気付く。

 ジャンジャックは、確かに彼女を愛していたのだろう。

 愛をどう定義するのかは、別として。


 だが、この聖女はどうだったのか。

 彼を愛していたのか。

 それとも、彼の立場を愛していたのか。

 乙女ゲームと同じように、高位貴族ばかりを侍らせ──他の貴族男子にも手を出そうとしては、ジャンジャックに邪魔されていたけれど──得意になっていた彼女は、彼ただ一人を愛していたとは思えない。


「ごめんなさぁい。私は知らないけど……お会いしたこと、ありましたっけ?」


 首をかしげて最大限に可愛く見える角度で、ジャンジャックに媚を売る。

 すごいな。

 ランディオさんの前でも、それをやるのか。


 さすが、全男性は自分のものと思っている(私の偏見だけど)女は違うわ。

 これはジャンジャックも再び恋してしまうか、と思いきや。


「随分昔に、会ったことがあるな。君は俺のことを、愛していると言っていた」


 そう、はっきりと告げたのだ。


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