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灰色の弾丸-Earl Grey of All Trades-  作者: 旗戦士
Chapter3
14/29

Order14. 闘争への足音

<雑居ビル・2階>


 "ハウンドの生き残りがこの町にいる。" ミカエラが墓地でグレイに言い放った言葉が脳内で駆け巡り、降り出した大粒の雨を一身に受けながら自宅のガレージへと愛車を停める。イグニッションスイッチから鍵を引き抜き、甲高い金属音を鳴らしながらポケットに仕舞うとグレイは運転席のドアを開け、車の外へと降りた。ガレージの屋根に大量の水の雫が落ちる音が、より一層陰鬱とした気分を増幅させる。後部座席のドアを開け、雨に濡れかけて字が滲んでいる茶封筒を手に取るとグレイは自身の事務所へと向かい始めた。時刻は既に18時を回っており、オレンジ色の夕日が沈みかかっている。

「ジェラルド……生きて、いるのか? 」

明かりの点いていない真っ暗な廊下の途中で、彼は呟く。もし、まだあの副官が生きているとしたら。事件の真相を知る人間がこの地のどこかにいるとしたら。絶望の一色に染まりきっていたグレイの歩む道に、一筋の光が差し込むかもしれない。血で血を洗うこの終わりのない闘争に、終止符を打つ事が出来るかもしれない。復讐。それこそが彼の――アメリカ陸軍所属特殊部隊ハウンドの生き残り、グレイ・バレットの目的であった。

「……」

ずぶ濡れになった黒いスーツとスラックスには目もくれず、事務所兼自宅の玄関の扉を開ける。入ってすぐのオフィスには来客用のキングサイズソファが2脚、彼の視線を遮った。何よりも目を惹くのは、その上で無防備に寝息を立てている少女――ソフィア・エヴァンスである。彼の帰りを待っていたのであろう、寝間着には着替えずに黒いキャミソールとデニムホットパンツ姿で横たわっていた。

「……馬鹿、風邪ひくぞ」

彼女の肩を叩いても起きる様子はない。むしろ寝返りを打って更に眠りを深めるだけであり、グレイは深いため息をつく。自室から肌色の毛布を手にしたかと思うと、ソフィアの全身を包み込むように毛布を掛けた。呆れたように肩を竦め、オフィスに置いてある自身の机の椅子に腰かけるとその上に置いてあった銀色のノート型パソコンを起動する。メールボックスを開き、マウスカーソルを受信欄へ操作すると新たな依頼を告げるメールが届いていた。

『君の委託人を通して君に依頼を頼みたい。内容は口頭で伝える為、明日の午後12時にそちらの事務所へ赴きたい。良いだろうか? 』

黒いキーボードを滑らかな手つきで打ち、了承の旨を載せたメールを送り主に返信する。口外できる依頼内容でない場合は、このメールの送り主のように直接彼の元へ訪れる依頼主も少なくはない。気だるそうにパソコンの電源ボタンへ手を伸ばし、強制的にシャットダウンさせるとグレイはマウスの傍に置いてあった煙草の箱に手を動かした。

「ふぅーっ……」

箱から一本の巻き煙草を取り出し、口に咥えて白い筒の先にライターで火を点ける。革製の柔らかい椅子に凭れながら、一心に口から白い煙を吐いた。煙草を燃やした特有の匂いが部屋全体に広がり、一時的な安心感と錘を詰め込んだような重圧が彼の身体を襲う。ラッキーストライク。他の煙草とは違い、これには通常より多くのタールが含まれていた。グレイの全身に気だるさが伴うのも無理はない。

「んっ……はれぇ……? グレイしゃん……? 」

「おう、ソフィア。起きたか」

その時、オフィスのソファからキャミソールの紐が左肩から外れかかったソフィアの上半身が見える。幼子のような顔立ちと体つきでも、23歳という成人の年齢特有の色気が作用したのか彼女の顔はどこか色っぽい。口笛を吹きながらグレイは口角を吊り上げ、不敵な笑みを浮かべた。

「わたし……寝ちゃってて……ごめんなさい……」

「気にすんな。初仕事なんだから緊張してたんだろう。まだ眠いなら俺のベッド使うか? 」

「だ、だだだ大丈夫ですよぉ!? まさかグレイさん……私を狙って……!? 」

「そんな元気があるなら平気だな。とっとと家帰れちんちくりん」

厄介者を手で追い払うように、右手をソフィアに向けて振る。怒りに頬を膨らましたソフィアを一瞥し、グレイは根元まで灰になった煙草の吸殻を灰皿に捨てた。紙の焦げた匂いがグレイの鼻を突き刺し、煙を鬱陶しいそうに右手で払う。

「もー! 意地悪しないでくださいよ! 私だって頑張ったんですから誉めてくれたっていいじゃないですか! 」

「あー、はいはい。分かった分かった」

自身のデスクから立ち上がり、ソファへ座り込むソフィアの元へグレイは足を進めた。彼女の頭の上に手を乗せ、優し気に頭を撫でる。

「……頭撫でるだけじゃ、満足しませんよ……」

「はは、抱きしめてやろうか? 」

「そ、そんなんじゃありませんよっ! もう! グレイさんのばかっ! 」

グレイの身体がソフィアによって押しのけられると、彼は悪戯に笑みを浮かべながら自室に逃げ込んだ。不満そうなソフィアの声を一瞥し、グレイは雨に濡れて重くなった白いシャツを脱ぎ捨て洗濯籠に入れる。スラックスとスーツをハンガーに掛け、灰色のスウェットと黒い半そでのTシャツに着替えた。

「お前もそろそろ帰ったらどうだ? 俺はシャワー浴びるけど」

「うーん……まだ雨止みそうにないですし、まだ居させてもらいますね」

「あいよ。それじゃ俺は行くぜ」

自室の隣に備え付けられていたシャワー室の扉を開け、替えの下着を洗面台の上に置いてから上下の服を脱ぐ。筋肉質の体が露わになり、右の上腕二頭筋に刻み込まれた3発の銃弾を咬む狼のタトゥーがシャワーノズルから出てきたお湯に濡れていった。背中と下腹部に出来上がった銃創の跡に手を触れ、彼の脳裏に過去の記憶が蘇っていく。冷え切っていた彼の身体がお湯によって温められ、水気を纏った前髪を掻き上げた。

「……隊長……」

恩師の名を呟き、タイル状のシャワー室の壁に拳を打ち付ける。じんわりと右拳に痛みが広がっていくが、彼は気にせずに体と髪を洗い始めた。身体についた全ての泡を洗い流した後、シャワーの栓を止めてグレイは掛けられていたバスタオルを手に取り、水滴を拭き取ると新しい黒い下着に足を通す。先ほどの寝間着に着替え直し、上半身を露出したままオフィスへ戻ると、壁に立てかけられていた32インチの薄型テレビで番組を見ていたソフィアの姿が目に飛び込んできた。

「きゃあっ! もう! なんで裸で出てくるんですか! 」

「暑いからいいだろ? もっと見惚れてもいいんだぜ? 」

「デリカシーのかけらもありませんよっ! 早く上着てくださいっ! 」

顔を赤らめるソフィアに対して肩を竦め、言われた通りに黒いTシャツに腕を通す。ソフィアの隣に腰かけ、画面に放映されているアクション映画に視線を移した。

「……お前、こういうの好きなのか? 」

「はいっ! 主演の人の演技だったり、アクションかっこいいですよね! 」

「いいセンスしてるじゃねぇか! 」

彼女の肩を叩き、グレイは笑みを浮かべる。直後彼は立ち上がり、台所に置いてある銀色の冷蔵庫から缶ビールを二つ取り出すとソファの前のガラス張りのテーブルの上に置いた。プルタブを開け、心地良い炭酸の弾ける音が周囲に響き渡る。

「映画鑑賞にはビールがもってこいだ。お前も大人だし飲めるだろ? 」

「あっ、当たり前ですよぉ! グレイさんこそ酔いつぶれないで下さいね! 」

グレイは青い缶ビールの縁を彼女のものと合わせ、今宵の宴会が開幕した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<便利屋事務所・オフィス>


「……んあ」

眠気で重くなった瞼を二回瞬きをすると、床に散乱した缶ビールの数々とウイスキーの空きボトルをグレイは目にする。両目を手の甲でこすり、寝ていたソファからアルコールの残った体を起き上がらせると自分の足元へ視線を向けた。彼の鼻が女性特有のトリートメントの芳香によって刺激され、素っ頓狂な声を上げる。

「やっべぇ……昨日の記憶が……大丈夫、ベッドに連れ込んでないから手を出してはいないはずだ……」

「ふぇ……」

慌てた様子を見せたせいか、グレイの隣に寝ていたソフィアがソファから起き上がった。状況に気が付いたのか、彼女の頬が見る見るうちに紅潮していく。互いの服装が乱れているのも誤解の理由となり、甲高い悲鳴が部屋に響いた。

「うっるせぇ! 二日酔いの頭に響くだろうが! 」

「ふざけないでくださいよぉ! 私を酔わせてあんなことやこんなこと……ひゃぁぁぁ! 」

「してねぇよ! ただ映画見てただけだろ!? 」

「じゃあ昨日何したか言ってみてください! 」

グレイは頬を掻き、ソファに座る彼女から視線を逸らす。

「ほらぁ! 言えないじゃないですか! この最低男! 変態! 卑劣! 」

「手を出してないからいいだろうが!? あーもう! さっさとゴミ片づけるぞ! 」

自室から黒一色のごみ袋を取り出し、散乱している幾つもの空き缶を拾い上げ乱雑に袋の中へ投げ入れていった。文句を垂れながらソフィアもグレイの掃除を手伝い、元のオフィスへ戻るまで1時間ほどの時間が経過している。時刻は既に12時を回っており、依頼人が事務所へ訪れるのも時間の問題であった。

「依頼主が来るのになんとか間に合ったな……はーぁ。おいソフィア、とりあえず茶の準備でもしておけ」

「はーい。……あとで説明してくださいね」

「分かった分かった」

台所の奥へ消えていくソフィアの姿を一瞥し、掃除で疲れた身体をソファに凭れ掛からせた。一種の習慣のようにシャツの胸ポケットからラッキーストライクの箱を取り出し、一本の白い巻き煙草を口に咥える。ジッポライターのフリントホイールを親指で回し、点いた火を煙草の先に近づけようとした時。事務所の玄関ドアがノックされ、溜息を吐きながら扉を開けた。

「やあ、アールグレイさん。先日メールを依頼させて頂いたルーベン・カラビエニです」

「話は聞いてる。入ってくれ」

眼鏡を掛けた金髪の男を招き入れ、グレイは来客用の黒い革製のソファに腰を落ち着ける。穏やかな雰囲気を纏うルーベンに対し、少しだけの不信感を感じながら彼の顔に視線を上げた。視線が合った瞬間、ルーベンの端正な顔立ちから微笑みがグレイに向けられる。

「……それで、依頼ってなんだい? ルーベンさんよ? 」

「おや、早速ですね。わかりました。貴方がたにはパーティー会場に潜入し、この人物を暗殺して貰いたい」

ガラス張りのテーブルの上に、美しい赤のドレスに身を包んだ黒髪の女性が映った写真が置かれた。アジア圏とヨーロッパ圏の血が混ざった雰囲気を醸し出す女性の写真を手に握り、グレイはじっくりと見つめる。

「美女を殺すのは気が引けるねぇ……彼女の名前は? 」

「ロレイン・リー。中華系マフィア組織のトップです。明後日の18時から彼女の誕生日パーティーが開かれるらしく、そこに潜入して暗殺して頂きたい」

「依頼を終えた後の保証を用意できるなら請けよう。報酬は? 」

グレイの問いに対して、ルーベンの右手に握られたブリーフケースがテーブルの上に置かれた。ケースの鍵を開けた中には、大量の札束が綺麗に仕舞われている。その圧巻の光景に思わず感嘆の声を上げ、目を見開いた。

「前金でまず100万ドル、このケースを差し上げます。完遂後、更に50万ドルお渡ししましょう。それでどうですか? 」

「いいねぇ、乗った。あんたみたいな金払いのいい客、俺は好きだぜ」

互いに握手を交わし、依頼の話が済んだところでソフィアの姿が台所から現れる。コーヒーカップを二つ乗せたお盆を持つ彼女が二人の間に割って入り、テーブルの上にカップを置いていった。一口だけ紅茶を啜り立ち上がったルーベンを見送るようにグレイもソファから立ち上がり、玄関まで彼を送る。

「それでは。いい結果を期待しています」

「あいよ。また連絡する」

オフィスの扉は閉められ、グレイは早速テーブルの上に置かれたケースに視線を落とした。下劣な笑みを浮かべながらケースを開け、札束の数々をもう一度見据える。整頓された札束の数々が彼にとって輝いて見え、思わず口元から涎を流した。

「うっわ……グレイさん……。今の顔鏡で見てきた方がいいですよ……」

「あぁ? うるせーな……これが素なんだよ。それよりもソフィア、ミカエラんとこに行くぞ」

「へ? どうしてですか? 」

「武器調達だよ。それに衣装もいるから今日はショッピングだな」

呆気にとられるソフィアを一瞥し彼は自室へと足を運ぶと、黒いスキニージーンズと灰色のTシャツに着替える。車の鍵がついたキーチェーンと折り畳み式の革財布をジーンズのポケットに入れ、準備し終わったソフィアを連れて事務所を出た。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<ヴィクターアームズ会社倉庫>


 愛車のフォードマスタングBOSS429を動かすこと約20分。グレイ達の姿はミシガン湖沿いの倉庫群に足を運んでおり、船に剣が突き刺さった青いシンボルを一瞥しながら彼は錆びついた倉庫の扉を開けた。相変わらず倉庫内では屈強な男たちが無表情で木箱を運び、金を受け取っては荷物を運びこむ様子が彼の視界を遮る。そんな彼らに見覚えのある長い銀髪を携えた男が歩み寄ってきた。

「よぉカル。久しぶりだな」

「アールグレイか。今日は何の用だ? 」

「連絡いってねぇか? 銃を買いに来たんだよ」

納得したようにカルが頷くと、グレイは彼の肩を叩く。用事を理解したように身を翻し、倉庫の奥へと進んでいくカルをグレイは追う事にした。仕事中の作業員たちを掻き分け、グレイは背後にソフィアを連れて社長室へと辿り着いた。

「社長。アールグレイが――」

「おーい、ミカエラ。いるかー? 」

ノックもせずにグレイが木製の扉を開けた瞬間、上下薄緑色の下着を露わにしたミカエラの姿が彼の目に飛び込んで来る。普段は着痩せしているのか、彼女の胸部に実った豊満な胸がグレイの方へ振り向くたびに揺れた。グレイの隣にいたカルから素っ頓狂な声が漏れ、見る見るうちに彼の顔は紅潮していく。

「おやぁ! グレイさんでありますかぁ! いやはや、昨日振りであります! 」

「おう。今日は武器買いに来たん――どわっ! ソフィアてめぇ! 前見えねぇじゃねぇか! 」

「そりゃ見せませんよっ! ミカさん、早く服着てくださいっ! 」」

即座にグレイの視界が背後に立っていたソフィアの両手によって阻まれるも、そのまま彼は社長室の奥へと進んでいった。それと同時にカルがあられもない姿を晒しているミカエラを社長室に備え付けられていたトイレへと押し込む。直後、下着姿から黒いタイツとタイトスカートを履き、胸元の大きく空いたブラウスを纏うミカエラと対面した。

「んもう、カルくんは恥ずかしがり屋でありますねぇ……。そういう所がまたかわいいんですけどね」

「馬鹿言うな! まったく……社長がそんなだらしなくては示しが付かないだろう」

「眼福だったからいいだろうが。まあいい、早速取引の話をしよう」

来客用の木製椅子に腰を落ち着け、机の上に置かれたアタッシュケースをグレイは開けた。赤色の内装に包まれたスプリングフィールド社製自動拳銃 XDサブコンパクトモデルを手に取り、凹凸のあるグリップを握り締める。今回彼らがここを訪れたのは潜入用の武器調達の為であり、同じケースには消音器も同梱されていた。

「使用弾は? 」

「9mm×19弾を13発装弾であります。サイレンサーも取り外し可能で隠し持つのには最適でありますなぁ」

「なるほど。あともう一つサイレンサー貰えるか? P2000用のものがほしい」

即座にミカエラの机から黒い筒状の消音機が姿を現し、グレイは背後にいたソフィアに消音器を手渡す。彼女の愛用するH&K社 P2000の銃口に消音器を取り付け、トリガーに指を掛けずにP2000を構えた。照準器に寸分の狂いもない事を確認すると、受け取ったP2000をソフィアに返す。

「……また依頼か? お前がそんな銃を使うなんて珍しい」

「大金を積まれたからな。じゃなきゃ来てねぇよ」

「私としては嬉しいかぎりであります! お金も入るし、何よりグレイさんに会えるのが嬉しいでありますよ~? 」

「はいはい、ありがとさん」

猫撫で声と共に向けられた妖しい視線にグレイは肩を竦め、スプリングフィールドXDをヒップホルスターに仕舞いこんだ。ジーンズのポケットから財布を取り出し、丸められた100ドル札の束をミカエラに手渡す。

「うひひひ、お金の良い匂いがするでありますねぇ……格別でありますよぉ」

「うわぁ、女が浮かべちゃいけねぇ顔してやがる……。カル、こんな奴には引っかかるなよ」

「はぁ……無論だ」

曖昧な素振りを見せるカルを一瞥し、グレイが社長室を立ち去ろうとしたその時。背後からミカエラの呼ぶ声が聞こえ、めんどくさそうな表情を浮かべて振り向く。

「……"情報"は、気に入って頂けました? 」

「あぁ。そりゃあばっちりな」

不可解な会話を交わす二人に疑問を浮かべるソフィアを横目にグレイはカルとミカエラに別れを告げて部屋を出ていく。慌ててついてくる彼女と共にむさ苦しい暑さを伴う倉庫を出ると、愛車の止まってある駐車場へと辿り着いた。

「ねぇ、グレイさん? 」

「なんだ? 」

「さっき話してた、"情報"ってなんですか? 」

痛いところを突かれた、と内心彼は冷や汗を掻く。そしてミカエラがわざとソフィアからの質問を誘発させる為に話しかけた事にグレイは気づき、あの女狐めと内心毒づいた。頭を掻きつつ、ソフィアの元へ座り込む。

「……いずれ話すさ。だから今は聞かないでくれ」

「わ、わかりました……」

彼女からの返答に普段通りの不敵な笑みを浮かべ、運転席の鍵を開けると革製のシートに腰を休めた。キーチェーンからマスタングBOSS429のキーを取り出し、イグニッションスイッチに差し込むと周囲にエンジンの轟音が鳴り響く。間もなくして車は二人を乗せて発進し、幾多もの車が通る国道の奥へと消えていった。

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