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玉屋さん家の短篇集  作者: 玉屋 ボールショップ
4/4

お題『サーキュレータ、回転のこぎり、おばあちゃん』

 朝起きると、おばあちゃんが階段下の物置を漁っていた。

 俺がなにしているんだい? と聞くと、

「見つからないんだよ、じいちゃんのサーキュレータ」

 おばあちゃんは俺の方をチラッと振り向きそう言うと、また物置きに顔を突っ込みガサガサと探しだした。

 俺は去年に亡くなったおじいちゃんが愛用していたサーキュレータを思い出していた。おじいちゃんが家の庭で作業をする時によく使っていたピンク色の小型扇風機だ。おじいちゃんは一回それを無くし、また同じ色、同じ型のを買い直すハメになったらしいが。

「夏だからあれがないと気持よく眠れなくてねぇ。あんまりの暑さに起きてから、朝までずっと探してたんだけど……」

 なんだか本末転倒な気もするがそれはともかく、おばあちゃんが物置きを漁っていたせいで階段下の廊下は色んな物がごちゃごちゃと敷き詰められている状態であった。

 俺はその中の回転のこぎりに目が留まった。

「ちょっとばあちゃん、こんなところにのこぎりなんて置いてちゃ危ないだろ」

 俺はそう言い回転のこぎりを手に持つ。

「おや、ごめんねぇ」

「だいたい、なんでのこぎりがここにあるのさ。工具をしまう所は外の倉庫って決まってるだろう」

 そう言って俺はのこぎり片手に玄関の外に出て、そのすぐ手前にある倉庫を開けた。

「うわ、汚え……」

 思わずそう呟き顔を顰める。倉庫の中は色んな工具やらなんやらが散乱していた。

「整理するか……」

 そう言って倉庫の整理を始めた。俺のおじいちゃんはいかんせん、整理整頓ができない人だった。おじいちゃんが死んでからこの倉庫を利用する者は居なくなり、ここは散らかしっぱなしになっていたのだろう。

 こうやって整理していくのはおじいちゃんがそこにいた『跡』を消していくような気もしたが、俺は几帳面なので片付けないと気がすまない性格だったのだ。

 整理が終わると、倉庫の奥にあるピンク色の物が目に入った。

 おそるおそる、埃をかぶったそれを手にとって見る。間違いない、おじいちゃんのサーキュレータだ。

 外で使って、そのままこの倉庫にしまっておいたのかな? そんなことを思いながら玄関から家の中に入る。

「ばあちゃん、サーキュレータ見つけたよ」

 おばあちゃんを呼ぶが階段下の物置にはその姿はなく、廊下に散らばっていた物も綺麗に片付けられていた。

 諦めて寝ちゃったのかな? 俺はそう思いながら居間に行くと、そこにはサーキュレータの風にあたりながらテレビを見ているおばあちゃんの姿があった。

 一瞬、何でなのか認識できなかったがしばらく頭を巡らせていると真相に辿り着いた。どちらかがおじいちゃんが前に無くしたサーキュレータなのだと。


 同じ日に別々の場所で見つかった二つのサーキュレータ。

 ふたつとも同じ色をしていることで形見としてはなんだかレア度が下がったみたいだけど、今はおばあちゃんと俺が一つずつ使っている。

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