第二十三話 運営のオキニ入り
《つよつよ魔眼と視るユグドラVlog! vol.321 ~煉獄牛魔人編~ より引用》
―――――――――
【煉獄牛魔人――アグニスタウロス】
極限の熱量を宿す巨大で強靭な肉体と、山々をも易々と破砕する圧倒的怪力を併せ持つ高位の灼炎種。
溶岩湧き出る地帯は彼の庭であり檻であり、火山に棲まう煉獄の門番とも称されている、
戦闘においては直情傾向が強く、単細胞で純朴な気質ゆえに奇策に引っかかりやすいという明確な弱点を持つが、敵対生物を視認すると同時に行う技にて全てを鏖殺できる力を有しているが故に、正直弱点としては機能していない。
……"弱点"とは一体……。
彼の技にて飛ばされたプレイヤーの頭は数知らず。
悉くを葬ってきた一撃から付けられた名は――【断頭牛葬】。
"即"座に頭を"断"ち、"速"やかに勝負を"決"する。
……即断即決とはこういう意味ではないんだがなぁ……。
ともかく、プレイヤーはまずこれを防がなければ、そもそも彼と戦闘という名の土俵には決して上がることはできない。
……上がろうとしても蹴落としてくるのはご愛嬌だろうか―――。
――――閑話休題。
彼を語るうえで一番欠かせないのは、彼の分類についてだ。
本来、ボス級のモンスターには分類として"BOSSタグ"というものが内部データに割り振られており、あまりにも強大な力を持つ反面、全世界で一体しか同時に湧かない、という条件が課されている。
そりゃそうだろう。
普通に考えて、一人で手に負えないボス級モンスターが複数体も出てきてしまってはゲームバランスが崩れてしまうのだから。
――種族主がワラワラといたらそれはそれで面白そうだけどネ――。
さぁって! じゃあこれを踏まえたうえで、このアグニスタウロスの内部データを視てみよう!
どれどれ~? えっと、彼の分類は~!
【分類:一般モンスター】。
ふんふん、一般モンスターね!
そこらに定期的に湧き続けるっていうあの……。
い や 、 な ん で ? ? ?
莫迦じゃん???
ん? 見間違いじゃないかって?
おいおい、主が見間違いするわけがないってのに……仕方ないな……じゃあもう一回だけ視てみよう!
【分類:一般モンスター】。
それでは皆さんご一緒に?
せぇ~のっ……大莫迦やない、か~~~~~~い!!!!
待て待て待てぇい!!
するってぇと、アレかい?
こいつは、"熟練プレイヤーを一瞬で屠るボス級の力を持ちながら"、"何体もフィールドに湧く"ってことかい???
はっはっは~~~……What the f●ck!?!?
アタマ ガ オカシインジャ ナイノカ???
……とまぁ茶番はこの辺で。
こいつが一般モンスターであることは間違えようもない事実だが、ただ、多少なりとも幸いなのは、同様に内部データに存在している"湧き頻度"が、一応"低"に設定されていることだろう。
にしても馬鹿であると主は思er、思EST。
……だが、近年これを超える馬鹿設定が見つかったという情報がネットをざわつかせた。
―――本当に??
さて、ではここで皆さんお馴染み、主の最も信頼している協力者である、大海の覇者こと……え? 名前がかっこよすぎるって?
ふむ、では改めて。
海をこよなく愛する渋い兄さんこと、タツ兄に協力してもらい、主らは実際に調査に赴いて視ることにした!!!
すると……。
すると……!!!!
するとぉおおおお!!!!!
……まぁ、普通に主らには視つけられませんでした、と……orz。トホホ……。
というか、今回の調査で視つけられなかったのはアグニスタウロス自体が先約に悉く倒されていて、中々デスポーンしなかったせいなんだよね。
―――本当の凶獣は身近に居た―――。
つーわけでぇ、主らは実際視ることはできなかったけど、情報によればどうやらこのモンスターにも、個体差が存在するらしいんだよね!!!
……。
……いやいや、ちょっと待ってくださいよ、と。
個体差なんてどのゲームでもあるじゃないっすか、と。
へ~、そんなもんすか、と。
……まぁ、正直そう思う人もいるだろう!
だ が !!!
いくらなんでも最初からカンストレベルで強いモンスターに、"さらに上限を引き上げちゃおうZE☆"なんて誰が考えるだろうか???
い~や、いないね。
だってさすがに馬鹿、いや、もはや馬鹿と呼ぶことさえ愚かにも思える行為だもん。
ま、尤も、どの個体でさえ出会えば即死であることには変わりないので注意する必要はないと言ってしまえばそれまでなんだが、正直、情報屋としては是非お眼にかかりたい情報が舞い込んできたんだよね!
そ れ が ぁ !
赤毛のアグニスタウロス!!
通常は黒い体毛で覆われているアグニスタウロスの中に、極稀に赤毛のアグニスタウロスが存在するらしい!!! キニナル……_(o_o_)_)))
奇跡的にその姿を視た人によれば、赤毛は他の同モンスターに比べて圧倒的にやべぇ!!!!とのこと!!!! ウォオオオ!!! 視たい!! 視たいぞぉおおおお!!!!
クッ……此度のVlogでは奇しくも主はまだ視ることが出来ていないが、見つけ次第、情報を追記する。
が、くれぐれもみんなも注意されたし……。
―――追記。
赤毛やべぇわ。
―――――――――
「ようやく目ァ覚めたか? オキニ!」
「うン! 結構寝た気がするケド……って、兄ちゃン、なんか悲しそウ……どうしテ……?」
オキイチの低く力強い声に促され、赤毛の魔獣――オキニはゆっくりと瞼を開け、目の前に立つ同胞の姿に首を傾げた。
「それは……」
オキニの言葉にオキイチが答える僅かの間。
しかしその間に猫バイトが思わず自身の気持ちを落ち着かせるかのような、長い長い溜息が重なった。
「たはぁ~~~~~~~~~!? なんでよりによって赤毛がいるの~!? っていうか何その名前!? オキイチの次はオキニ!? じゃあ次はオキサン??? なんだっていいけどさ~~~~~~、マジでオキニって名前って……しかもなんかちょっとキャラ被ってるし~~~~っ!!」
当然、赤毛の存在の重要性と危険度を知る猫バイトの正当……? な愚痴ではあるものの、しかし目の前の当の兄弟はその言葉の意味など理解出来るはずもなく。
完全に気が狂ったのだとみた兄であるオキイチは、沈痛な面持ちのまま、弟へ静かに事実を告げる。
「……オキニ。奴が兄貴を殺したうちの一体だ……! 兄貴の炎の意志は、俺たちで継ぐぞ……!」
「えっ!? 大兄貴が……?」
オキイチの言葉に、オキニの黄金色の双眸が大きく見開く……その直後だった。
「……分かった……あいつ、殺そウ……」
「―――っ!」
オキニの軽薄で気楽そうな表情が一転、体の芯までを突き刺すような怒りと憎しみの感情が、猫バイトの岩肌に強く突き刺さる。
しかし猫バイトも自身の数多の経験から、これはやばい、と考えるや無駄な思考をそぎ落としてすぐに構える。
いくら赤毛とはいえ、相手はあのアグニスタウロス。
定石で見れば、まず間違いなく初手は確定で行われる【断頭牛葬】。
つまり、これを防がなければ全ては始まらず、防げればカウンターのチャンスもまたやってくる。
……だから、身構えた。
―――。
この時、猫バイトは決して油断はしていなかった。
ただ、彼にとって致命的だったのは、奇しくも階下にて眠るイーディスと同様に、自身の力を過信したこと。
そして、常識に囚われてしまっていたことだろう。
「スゥウウウウウウウウーーーーーーッ」
猫バイトが身構えるのと同時。
オキニがとった行動は――‐深く、どこまでも深く息を吸い込むことだった。
それは、一秒にも満たない僅かな間。
にもかかわらず、かの神速の突進が来なかったことを不審に思った猫バイトが疑問を抱けたのは、まさに一種族の王と言えるべき判断力と反応速度。
……だが、疑問を抱けることと、その疑問に対しての答えを導く時間は同一ではない。
猫バイトが"ソレ"に対応するより早く――――。
――――空間そのものが弾け飛んだ。
「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーッ!!」
「――――――――!!!?」
大気を激しく震わせ、地や壁を抉るほどの叫び。
それは、死したかつての主へ捧ぐ、悲痛なる鎮魂の歌であり……圧倒的なまでの音の圧力。
オキイチらのような強力な魔獣が放つ、大咆哮は、ただの叫び声に"畏怖"を与え、体を強制的に硬直させる技として有名なものだが、これが特異個体―――希少種として個体値が高く生まれ出でたオキニが放つものとなれば、その性質は大きく変化する。
―――極大咆哮。
強力な魔獣の中でもさらに脅威を示す魔獣にのみ許された、破壊の象徴。
その叫びは万物を打ち砕く破滅の槌となり、威圧を超越した物理的な音圧衝撃を広範囲に解き放つ。
ただ―――岩は聴覚を持たないため、音による影響はない。
……本来であればそうだろう。
しかし彼は元々は人間だ。
そしてなにより彼は仲間と会話をするために、自身のチャームポイントである"猫耳"を生成している。
耳は音を聞くもの。
さすれば当然――。
「っぐっ!!! からだが……動かな……いっ! くっそぅ……! マズった……!!」
彼の咆哮を真に受けた猫バイトの体が、強制的に硬直する。
創造種は、自身が思い描く現実を想像通りに具現化できる種族。
ゆえにどれだけ体が消滅しようとも、自分が死なないと思い込めば死なないという、種族最強にも近しい能力を有しているが、強大な能力の反面、リスクも大きく存在している。
例えば現在。
本来、ただの岩塊である彼には麻痺や恐怖といった状態異常は一切効かない。
岩は痺れないし、恐怖もしないからだ。
しかし……。
赤毛のアグニスタウロスという脅威への畏怖。
思考を読み外されたことによる動揺。
そしてなにより、あの咆哮を聞いてしまったという、猫バイト自身としての認識が――。
(―――やばっ……固ま……―――っ!)
最悪の想像を、ほんの一瞬、脳裏に過らせてしまったのだ。
自身が思い描く現実を想像通りに具現化できる種族。
しかしそれは、自分にとって決定的に不利益な想像すらも違わず現実へと変えてしまうことも意味している。
そして……。
「そんじゃまァ……行くぜ?」
動けない猫バイトの視界の先で、力強く身構える二頭の凶獣。
拒絶しようとも、抗おうとも、絶望的な熱気は否が応にもこれから来る殺意を予感させる。
―――いかに強靭な精神を持つ者であろうと、たったの一度でも嫌な想像をしてしまうと、その想像は尾を引くように心を蝕む。
いくら頭では次はない、次は防げる、とそう思っていたとしても、どこか心の奥には、僅かな不安が付きまとい続ける。
そして、それは決まって――――。
「――――――あっ、やば……これは"死ぬかも"……」
――――創造種が死ぬ要因である。
【応援お願いします!】
「続きはどうなるんだろう?」「面白かった!」
など思っていただけたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークや感想もいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします!
次回更新は今のところ未定ですが、"想像力"があれば来週……更新します……。




