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アビシャルシャフト  作者: ハック
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10/10

学校屋上の戦い

天才の戦いが繰り広げられていたその頃――別の場所でも、人智を超えた激突が始まっていた。


ネットワーク高校の屋上。

そこでは主人公・布瀬氷華と、彼に仕えるアンドロイドメイド、イリヤ・トゥエルブによる死闘が始まろうとしていた。少し時間を戻そう。


中央病院の屋上で天才と下川が戦うより少し前――

布瀬はロークラス棟の入口から、一つの影が階段を駆け上がり、屋上へ向かう姿を目撃していた。


「おい!! 待て!!」


布瀬は、その影こそがリズキ委員長を倒した犯人だと思い込み、迷わず追いかけた。

イリヤもその後ろを走り、二人は勢いよく屋上の扉を開け放つ。


しかし――


「がっ……!?」


扉を開けた瞬間、鋭い何かが布瀬の腹部を貫いた。布瀬は驚きながら後ろへよろめき、自分の腹を見る。

そこには、屋上の床から突き出したような鋭い棘が刺さっていた。


「マスター!!」


イリヤが叫ぶ。


だが次の瞬間、その棘は床へと溶け込むように消えた。腹には穴は開いていない。

しかし、焼け付くような激痛だけが残っていた。


前方から声が響く。


「安心して。死にはしないわ。」


そこに立っていたのは、フード付きのコートで顔を隠した人物だった。

布瀬は腹を押さえながら膝をつく。イリヤはすぐに彼へ駆け寄った。


「マスター、大丈夫ですか!?」


「あ、あぁ……なんとか……。」


痛みは異常だった。

致命傷ではない。だが、本物の傷と変わらない苦痛。


それは以前、霧隼から聞かされた“データ攻撃”と同じだった。実体の傷はなくとも、脳へ直接痛覚を与える攻撃。耐え切れなければ、ショック死すらあり得る。


イリヤに支えられながら、布瀬はゆっくり立ち上がり、フードの人物を睨んだ。


「お前は誰だ!? ここで何をしてる!? 委員長を倒したのもお前か!?」


女は静かに答える。


「いいえ。あの男は勝手に倒れただけ。」


そう言って、彼女はフードを外した。

そこに現れたのは、オフィスレディのような服装をした若い女性だった。

編み込まれた髪が後ろで綺麗にまとめられている。


そして彼女の手には、不気味な球体装置が握られていた。


「本当は仕事が終わったら帰るつもりだったんだけど――」


彼女は肩をすくめながら笑う。


「少し興味が湧いちゃってね。見てたら、見つかっちゃった。」


彼女は球体装置をコートの中へしまい込み、不敵に笑った。


「でもまぁ、あなたを連れて帰れば、ボスも怒らないかもね。」


「つ、連れて帰る……!?」


その瞬間、イリヤが飛び出した。鋭い蹴りを放ちながら、女へ一直線に突撃する。

しかし女は冷静だった。

彼女はローブの中から鞭を取り出し、空中でイリヤの脚へ巻き付ける。

そのまま強引に振り下ろした。


「っ!!」


イリヤの身体が屋上へ叩きつけられる。


「イリヤ!!」


布瀬は助けようとする。だが、先程のダメージで身体がうまく動かない。

それでも布瀬は諦めなかった。霧隼から聞いた“データ能力”の存在を思い出し、右手を突き出す。


「グリーンレーザーデータアクセス!!」


両手から緑色のコードが溢れ出し、レーザーとなって女へ放たれる。

女は床を強く踏み込んだ。


「チェンジアクセス:ディフェンス。」


屋上の床が盛り上がり、巨大な壁となってレーザーを防ぐ。

さらに彼女は叫ぶ。


「アタック。」


壁が生き物のように変形し、布瀬へ襲い掛かった。


「なっ!?」


布瀬は右へ飛び退きながらイリヤの元へ走る。


「追いかけなさい。」


壁から枝のようなものが伸び、布瀬を追跡する。布瀬は必死に走るが、イリヤへ辿り着く寸前で吹き飛ばされた。土煙が舞う。女が笑みを浮かべた、その時――


ドドドドッ!!


高速の足音が響いた。


「!?」


怒りに満ちたイリヤが、横から突撃してきた。


「マスターを二度も傷付けた……絶対に許しません!!」


イリヤの蹴りが女の顔面へ炸裂する。女は吹き飛ばされ、血を吐いた。

だが彼女は口元を拭い、冷たく笑う。


「安心して。二回どころじゃ済まないわ。」


戦いはさらに激しさを増した。イリヤは地面攻撃を避けるため空へ跳ぶ。

だが女の鞭が再び伸び、鋭い金属棘がイリヤの脚へ突き刺さる。


火花が散った。さらに床から巨大な棘が突き上がり、イリヤを叩き落とす。

轟音が屋上へ響く。


それでもイリヤは叫んだ。


「あなた……“ビーストマスター・ヘッジホッグ”セレナですね!?」


女――セレナは驚く。


「まだ喋れるの?」


「何をしているんですか!?」


セレナは再び球体装置を取り出した。


「ボス――ゴロウ・ザ・スネークマンの命令よ。」


彼女は笑う。


「これは“視覚型ドラッグ”。人を夢へ閉じ込め、“失われた楽園”を見せるための装置。」


“ゴロウ”という名前を聞いた瞬間、布瀬の表情が変わった。


怒りが胸の奥から込み上げる。


「おい……お前。」


セレナは布瀬の殺気に一瞬たじろいだ。


「街で人が倒れてるのは……お前達のせいなのか!?」


「あぁ。今頃、街の半分は夢の中よ。」


「ふざけるなァァァァ!!!」


布瀬の怒号が屋上へ轟く。


「そんなふざけた夢、俺が全部ぶっ壊してやる!!お前のボスごとな!!」


布瀬はイリヤを見る。


「イリヤ、まだ戦えるか!?」


「はい、マスター!!」


傷だらけのイリヤは、それでも立ち上がった。


「行くぞ!!」


「了解です、マスター!!」


二人は同時に駆け出す。イリヤが空中へ飛び上がり、布瀬は再びレーザーを放つ。

セレナは鞭で防ごうとするが、防ぎ切れない。

その隙を突き、布瀬が前へ飛び込んだ。

棘が手に刺さるのも構わず、鞭を両手で掴む。


「隙だらけだ!!」


上空からイリヤが叫ぶ。


「エレメンタルアクセス:ウォータードリル!!」


イリヤの脚から渦巻く水流が放たれる。それはセレナの防御を貫き、胸部へ強烈な蹴りを叩き込んだ。


「がはっ……!!」


セレナは血を吐き、そのまま意識を失う。布瀬はすぐに球体装置を踏み潰した。

視覚型ドラッグの発信源は完全に破壊された。拳を握り締めながら、布瀬は前を見据える。


まだ終わっていない。


次に戦う相手は――

ゴロウ・ザ・スネークマン。


そして今度こそ、必ず勝つ。

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