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最終話 可哀そうなロンビン

ロンビンとリーガルのお話も今回で最後となります。楽しんで頂けたら幸いです。

「どれいしょうさまに、こちらのことをお聞きされたら、おわたしするように言われていました」


 リーガルは左手でスカートを押さえながら、右手をドロワーズの内側に手を入れた。奥にある、股周辺の突起物をつかむ。それはびっくりなことに、動いた。そのまま、外へと出した。


 突起物の正体は、二枚貝の形をした、小さな白い入れ物だった。


「こちらです。ご主人さま」


 妙なところから出て来たばかりのそれを、ロンビンは恥ずかしく思いながらも受け取った。

 持っていた骨を横に置いて、容器を上下に開いてみると、折り曲げられた手紙と奴隷商の店舗の『10パーセントオフ・クーポン』が同封されていた。


『男だと思ってびっくりしてくれたかな、親愛なるロンビン』


 小さな手紙にはそう書かれていた。


「あのおっさんめ、ふざけたことを……ッ!」

 手紙を持つロンビンの両手が怒りで震えている。


「……リーガル。いつからこんなものを仕込んでいた?」


「おようふくを、いただいたときです」


「最初からじゃないか」


「はい。こちらのばしょに入れれば、ご主人さまにお楽しみいただけると、どれいしょうさまから、うかがいました」

 たくし上げ状態のまま、リーガルは該当箇所を指差した。


「楽しむどころか、血の気が引いたぞ……」


「いれものは、かいしゅういたします」


 リーガルはロンビンの膝の上にあった貝殻型の容器を手に取る。


「お手紙をおわたししたあとは、小物入れとして、使ってよいそうです。わたしのとくしゅな()ふには、かんたんにくっつきます」

「――そこに戻すのはやめろ!」

 リーガルがまた容器を下着の中に入れようとしたので、ロンビンは叫んだのだった。


「はい。わかりました」

 容器は膝の下辺りにくっつけられた。まるで、底面(ていめん)に吸盤でもついているかのようだ。


 その後も、リーガルは一向にスカートを下げない。


「……何故そのままでいる?」


 ロンビンはリーガルの下半身を見ないようにして聞いた。


「ご主人さまは、骨をこちらにむけて、やさしくおしこんでください」


「ああ、そういえばそんな話だったな。――そんな変態的なことをしろって、おかしいとは思わないのか?」


「どれいしょうさまからは、おたがいにきもちよくなれると、うかがいました」


「いやいやそんなのは馬鹿げているだろう! あのおっさん、やばい本の読み過ぎなんじゃないか! とにかく、スカートを持ち上げるのはやめろ」


「わかりました、ご主人さま」


 ようやくリーガルは下着を(さら)すのをやめたが……、ロンビンの頭の中は、扇情的(せんじょうてき)なものでいっぱいになっている。


 ロンビンは、女性の大胆さに免疫がなかった。下着があまり性的ではないドロワーズだったとしても、女性とのつき合いに縁遠(えんどお)かったロンビンには刺激が強い。


 リーガルが肉体を得た際、ロンビンはスケルトンの胴体に盛られた半透明の皮膚(ひふ)のみの姿を見ても、あの時はまだ裸の女性と認識しなかった。


 だが、今では女性の服を着て、ほとんど人間の少女に見える。白いドロワーズが覆っていない、下半身で透ける骨さえも、今となっては(なま)めかしく思えてしまう。


「わたしはもともと、オンナでした。ですから、ダンセイがジョセイにふとい骨をおしこんで、きもちよくなることを、なんとなく、しっています」


「記憶が残っているなら完全に思い出せ! それは骨じゃない! アレだ!」


「あれ、とは?」

 無表情で見つめてくる。


「言わせるな! とにかく、この骨をしまえっ!」

 ロンビンは迅速に骨を渡す。


「はい」


 リーガルは両手で太い骨を受け取り、手の平から体内へと収納した。


「……怒鳴って悪かったな。だが、お前のしてほしいことは、こんな公園のベンチでやるもんじゃない」


「わかりました」


「骨を押し込む以外に、要望はないのか?」


「わたしは、単に、骨をおしこんでほしいわけではありません。ご主人さまの愛が、ほしいのです」


「そうか……」


 ロンビンは立ち上がり、右手を差し出す。


「……手をつないで、あのおっさんの店でも行こうか。おっさんに文句を言った後、正しい愛の話でもお前に教えてやる」


「はい。ご主人さま」


 リーガルの骨が透けている右手を、ロンビンは恥ずかしげに取った。人間の手よりも冷たいが、この手に人間の体温は伝わるのだろうか? なんて、ロンビンは考える。


 自分から誘うなんて、ロンビンとしては頑張ったほうだ。リーガルは腕にくっついているので、胸部が当たっている。……当てられている。


 盛られているその部分は、それなりに大きそうだ。感触は、決して嫌じゃなかった。むしろ、心地好(ここちよ)い。


 二人は公園を出て、歩道を進んだ。リーガルのほうは表情に(とぼ)しいが、二人とも、お互いに幸せだった。


   III


 ここで、あなたに明かしたい。


 ロンビンが公園にいた時、二人の女性冒険者に目撃されていたことを。


 彼女達は、冒険者ギルドでの騒動を見た後だった。


 ベンチに座るロンビン、太い骨、そしてスカートを思い切りたくし上げるリーガルを、たまたま遠くから発見した。そして、ロンビン達が公園のベンチで堂々と性的な行動を楽しんでいたのだと誤解してしまう。


 後日、ロンビンは、聖女の誘いを断ってまで奴隷と楽しむことを優先する変態だという噂が広がった。


 可哀(かわい)そうなロンビンは、誤解を解けないまま、今日も冒険者ギルドの依頼をこなしている。


 その横にはいつも、美少女と見間違えるほどの魔物(スケルトン)、リーガルがいた。


                    (終わり)

『スケルトリアル!』はいかがだったでしょうか?

作者の別作品にはこんな変態作品がいくつもありますので、良かったら、ぜひともお読み下さいませ。


最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

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