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第一章51 『答え合わせ』

 赤神の家に滞在していた時間は短かった。疑心暗鬼になっていた俺に、あの場所は苦痛だった。今は踏み込まない方がいいと臆病になってしまった。


 それから家に着いた俺は、直ぐに正堂にメッセージを送った。赤神と面会し話した詳細を伝えた。すると返事は即座に訪れる。


『もしもし、太陽くん。今は大丈夫かい?』


「はい」


 正堂は今立たされている現状を理解し、俺に心配の声を入れる。正堂の声のトーンはいつもより低い気がする。


『驚くべき内容だったよ……。知っていると思うが僕と太陽くんのこのメッセージのやり取りは誰からも干渉出来ないようになっているから、漏洩する事はないよ。しかし、もしこれが事実なら凄いことになる』


「はい。でも……アルカディアのNPCがHPがゼロになると消滅すると言うのは本当なんでしょうか?」


『ん〜そんな事は聞いた事がない。何億人もプレイしているアルカディアでその様な事が判れば直ぐに広がるだろう。もちろんMOでもそんな話は出ていない』


「そうですよね」


 確かに正堂が言う通り、NPCが消滅するなんて事が事実であれば、アルカディアは平常運転していない。NPCに惚れ込んでいる者もかなり居る。そんな事が判れば、アルカディアや現実世界で何かしら動きは現れる。


 でも黄泉の言葉が嘘では無いと、鮮烈に脳内に刻まれている。そう、真実だと。


『これは僕の仮説なんだが……太陽くんの周りに起こった、謎のスリープ現象。これは一つの情報統制ではないかと思う。NPCが消滅するという事実が絶対だとすると、アルカディアに潜っている者は記憶の改竄が行われている可能性が高い。現実世界で一度もアルカディアに潜っていない者は殆ど居ないからね』


「そんな事が……可能なのか」


 否定はしたが、正堂の言葉がストレートに脳内に入っていった。確かにその仮説なら、平常運転のアルカディアの説明がつく。しかし、そんな大掛かりでデメリットしかない事を、何の目的でMOは隠し運営しているのだ。


『現実世界で記憶の齟齬が出ていないとなると、かなり深い所まで行われていると思う。太陽くん、この事は絶対に他言無用だよ。僕のこの仮説は80%位はそうではないかと確信している』


 正堂さんがここまで言い切るとは――ならこの記憶改竄にはどれほど力が関与しているのか。政府、国、いや世界か――


『相手の目的がはっきりと分からない今は、この事実を知っている事は悟られてはいけないよ、決して』


「そうですね。監視AIが多い現実世界でも注意を払った方がいいですね」


『うん、それと太陽くんがアルカディアにダイブしたとしても記憶改竄を行われる可能性は低いだろうね。謎のパッシブスキル、異常耐性<SSS>の力によってね』


 そう、俺から身を守っているパッシブスキル。これは毒や麻痺など状態異常になりにくいとは意味合いが違った。しかし、ライトは一体誰が俺に送ったのか。


「正堂さん、俺にアカウントを送った人物は、一体誰なんでしょうか」


『それについては検討はついている。太陽くんにアカウントを送った人物は赤神光秀に違いない』


 思いもよらぬ人物に、俺の鼓動は早くなる。赤神が俺に新しいアカウントを送った……? どうして赤神がそんな事を。


「赤神が……俺に」


『まあこれは消去法かな。僕が知っている限りではこの世界には三人の至宝の頭脳が居たんだ。

 一人目はアルカディアを作った桜ちゃんの祖父、和泉総一郎。

 二人目は太陽くんと黄泉ちゃんの母親、柳生田穂奈美。

 そして、三人目は柳生田穂奈美を師と仰ぎ、太陽くんの父親海斗さんを敬愛している赤神光秀だ。現時点でこんな神業が出来るのは光秀しかいない。確証は、光秀は君をかなり大切にしていたからね』


「父さん達と赤神が知り合い? 赤神と俺に面識が昔からあったのか」


『僕は海斗さんの弟子だ。だから昔から柳生田家と赤神家とは付き合いがあるんだ。もちろん、赤神光秀も同じさ。太陽くんは知らないと思うけど太陽くんに名前をつけたのは光秀なんだよ』


「赤神が俺に名前を」


 父さんと母さんは科学者だったが、母さんがそんなにすごい人物だとは聞いた事がなかった。赤神と正堂さんが弟子、そして、赤神が俺の名付け親だった事も知らなかった。


 俺は少し深呼吸をし、正堂の言葉をゆっくりと受け入れていく。


『まぁ正直、NPCの件でもかなりお腹がいっぱいだが。赤神光秀の弟が勇者レインとは、正直……ここまで来ると理解が追いつかなくなってきたよ』


「正堂さんは赤神とは昔から知っているのに、弟の存在を知らなかったんですか?」


『光秀とは腐れ縁で付き合いは長いが、家族が居るなんて知らなかった』


 俺は必死に正堂の言葉に喰らいつく、知らなかった事が頭の中を埋め尽くす。俺は氷山の一角を知る事になる世界の――



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