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第一章50 『敵か味方か』

 アルカディアからログアウトされ俺は眦を決した。椅子に腰掛けている、いつも居る桜はいない。先程の出来事が頭の中で整理が出来ていない。しかし――今やるべき事は判る。


 俺は赤神光秀への面会する為にMOに連絡を入れた。赤神光秀は開発運営会社MOで開発局長をしている。中神正堂から伝わった俺と会いたいと言う言葉――これを今使うしかない。


 すると、数分しない内に赤神から連絡が入る。


『こんにちは、柳生田太陽くん。正堂の言伝からかな?』


「はい……それもあるんですが、少し会ってお話をしたくて」


『なるほど……会ってか、今がいいかね?』


「はい!」


『なら、私の自宅に来るといい。場所は送っておく』


「ありがとうございます」


 赤神は俺の声色で悟り、直ぐに面会をすると言う。俺は仕度をし、足早に車に乗り込んだ。赤神から送られた行先を車の自動運転に送り、車は動き始める。赤神の家は高級住宅地にあり、とても有名な家である。それは高層ビルを丸ごと一棟買い取り、全て自身の部屋にしているからである。


 閑静な住宅街から抜け、一際目立ったビルディングへと走っていく。そのビルディングは高い塀に囲われ、厳重なセキュリティがされている。


「これ……何階建てなんだ」


 俺は赤神の住む、ビルディングの門戸に止まる。すると、赤神から連絡が入る。


『太陽くんだね。私は五十五階の301号室で待っている』


「わかりました」


 通話が切れると玄関口は自動的に開閉され、俺はそのまま私有地へと入る。門の中は色取り取りの花が咲いており、先程までとは世界観が全く違い、俺は度肝を抜かれる。


「なんて……綺麗なんだ」


 しかし、これを手入れするのは大変そうだな。エントランス近くの場所で車が止まり駐車をさせる。そして、俺は車から降りた。


 自動開閉扉ををくぐり、白で統一されている広大なエントランスに足を踏み入れる。すると、足元には進行方向を教える電子パネルが光る。俺は光るルートに従って進み、エレベーターへと入る。


「なんだ……広すぎる。このビル、最上階七七階まであるのかよ」


 エレベーターは目的の階数へと上がったのち、俺はエレベーターから降りる。また足元にはまた電子パネルが光り、俺は部屋へと導かれて行く。豪奢な通路を進み、進行方向の終点の観音開きの扉の前に立った。


「301号室、ここか……」


 扉が自動で開かれる。そして、俺は部屋へと入った。玄関からモノクロで統一されており、赤神の待つリビングルームへと向かう。


「ようこそ、太陽くん」

「――」


 そこにはスーツで着飾っている赤神光秀の姿があった。赤神光秀は黒髪のインテリ系イケメン、背も高く、顔もいい。しかし、どこか近寄り難い雰囲気を持っている。


「お招きいただきありがとうございます。このビル、広いですね。赤神さんはこの家には一人で住んでいるんですか?」

「そうだよ、このビルには私しかいないよ。ハウスキーパーはAIと自立型ロボットしか存在しない。これでもセキュリティにはこだわっているんだ」


 アルカディア管理運営会社の開発局長となれば世界から一目置かれる存在だ。赤神はこのビルディングの部屋にランダムに住み、万が一侵入された場合でも、情報を抜かれない為にそうしている。国宝以上の存在が赤神の左腕の金色のブレスレット型PCにある。


「あまり人を入れない家だが、君は特別だよ!」

「ありがとうございます」


 そして、俺と赤神は80畳くらいはありそうなリビングのソファーに腰掛ける。


「太陽君との面会を求めたのは、僕の弟が君に迷惑をかけたからだ」

「迷惑? 弟?」


 俺は赤神の言葉を反芻した。赤神の弟? 赤神光秀に兄弟がいたとは、全く知らなかった。


「あぁ……。私の弟、レインが君に迷惑をかけたようだね。アスラル共和国で起こった事を耳にしてね」

「――」


 赤神の弟が勇者レインだと……。前代未聞の赤神の言葉に息を呑んだ。こんな、計り知れない価値がある事を俺に明かすとは……。赤神は一体何が目的なんだ。


「サンのアカウントが消滅した事が……どうしてかMOから弟の耳に入ったようでね。それで弟はアスラル共和国であの様な事を言ってしまったんだ。すまなかった」

「……赤神さんは俺がライトだという事を、知っていたんですか?」

「あぁ、もちろん」


 開発局長の立場である赤神が、俺がライトである事を知っているのは、不思議ではない。


 しかし、俺はあの時、なぜが見た目が本来の自分とは全く違う者になっていた。青髪のピエロの仮面を付けた者に――それなのに赤神はライトだと見抜いたという事か? 赤神なら、それが……可能なのか?


「君のサンのアカウントが戻らないのは本当にすまなかった……。私の力を全て持ってしても、叶わなかった。すまない」

「――」


 赤神は深々と俺に頭を下げた。その赤神の真剣な表情に自分の鼓動が聞こえた。


 赤神に全てを話していいのだろうか? ライトのステータス、ステータス表記に名前と職業が見れる件、強制ログアウトの件、俺の姉の話を全てを――


「疑う事は人を信じる事の一歩さ。君は私を信じようと努力をしてくれているんだね。私は君の味方だよ。君が君である前からずっと」

「――――」

「そう言えば、太陽くんは私に何か用があったんだろう?」

「アルカディアに最近、何か異常はありませんか?」

「アルカディアに、かい? 何も起きていないよ。至って平常運転さ。まぁ最近はイベントが多数出現してるがね」

「そう……ですか」


 俺はまだ赤神を信じれなかった。その後、少し会話をし、俺は帰途に着く。


 振り出しに戻ったのだ。レインが何かしら、サンの事を知っていると思ったが……。


 どうして俺のアカウントが消えたのか、そして、サラは――黄泉の言葉は――一体。


 分からないことばかりだ……。





 黒で統一された部屋に、今では珍しい置型PC。赤神はその画面に向かい、キーボードから信号を送る。


「黄泉か、ここで現れるとは――しかし、ここまでの接近は邪魔だな。とりあえず、妨害させてもらうよ」


 俺はまだ何も知らなかった。彼の事を――





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