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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
四章 王立学院での日々
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模擬戦

冒険科に元からいた講師はオスローというらしい。


冒険科で基礎知識の講習がすべて終わったので今はそれぞれが得意とする武器の基本練習をしている。


ちなみに冒険科にアリアはいない。もう一人で冒険者としてやっていけるため学ぶことが特にないからだ。選択授業が終わった後は町へ出てギルドの依頼を受けている。


「突きが遅い。遅すぎて敵に槍を掴まれたりして戦えなくなるぞ。腕だけでなく全身で、引きを速くするように意識しろ」


「太刀筋が歪んでる。今は斬ろうとするんじゃなくてまっすぐ振ることだけ考えて」


「なんだその腑抜けた剣は!そんなんじゃゴブリンも殺せねえぞ!」


オスローはいつも怒鳴っているが指導の腕は確かだ。

また生徒たちはエリートなだけあり教えたことをすぐに吸収する。


ただそのせいで天狗になるのだが・・・。


「先生!これ本当に効果あるんですか?」


質問してきたのは冒険科のかなりの実力者のギュスタだ。プラチナブロンドの髪をしており、剣士を目指している。。


「私も疑問です」


賛同する声をあげたのはギュスタの幼馴染のフーカだ。水色の少し長めの髪で白いローブを着ている。彼女は回復魔法と水と氷属性の魔法を得意としている。


二人とも美男美女である。


「あるとも。基本ができていないと応用もできないぞ」


「でも僕たちは基本はできてますよ」


「そうですよ。私も中級の魔法を使えます」


「ふむ。なら一回なんでもありの模擬戦をやってみるか。オスロー、やってもいいか?」


「おう!伸びた鼻をへし折ってやれ!」


許可がもらえたので準備をする。準備と言っても他の生徒たちの練習を止めさせてスペースを作るだけだが。


二人が武器を構える。


「先生、準備しないんですか?」


「お前たちは素手で十分だ」


二人が私の言葉にムッとする。


「ずいぶんと自信がありますね。いくらSランクでも少しは厳しいんじゃないですか?」


井の中の蛙だな。私より強い者なんて探せばいくらでもいると思うが。


「ルールは簡単だ。どちらかが降参するか気絶すれば終わり。私は最初は一切攻撃しない。そして戦い方はなんでもありだ。審判は・・・オスロー、頼む」


「おう!それでは・・・はじめ!」


開始と同時にギュスタが斬りかかってくる。なかなか鋭い斬撃だ。体をずらして右へ避けると目の前に氷の槍が迫っていた。


手を当てて進行方向をずらすが左下からギュスタが斬り上げをしてきた。


二人で連携している。連携はまあまあと言ったところか。


「くそっ当たらない!」


「ギュスタ君、お願い!」


魔力がフーカに集まり始めたのを見る限り大技を放つつもりだろう。ギュスタの攻撃が激しさを増しているが大した脅威ではない。

全部避けたりそらしたりできるからだ。


数秒経つといきなりギュスタが離れる。


「『氷結牢獄』」


私を覆うように分厚い氷の壁が出現し、壁が内側から粉々に砕け散っていく。氷の破片で攻撃する技のようだ。

濃密な攻撃なので避けることはできない。が、自分を薄い魔法の膜で覆うことで全部防ぐ。


「どうですか?私の必殺技は!」


これを必殺技と言われてもなぁ・・・。


やがてすべての氷が砕け、中から現れたのは無傷の私だった。ちょっと寒い。


ギュスタとフーカは狼狽している。


「おい、効いてないぞ!」


「そ、そんなぁ!」


「攻撃は終わりか?ではこちらの番だ」


まずはギュスタから。

一気に距離を詰めて胸に膝蹴り。


バキボキッと、胸骨を何本か折ってしまった。


「がはっ・・・」


内臓も傷ついたらしく口から血を吐いて気絶する。


「キャアアアア!」


「次はお前だ。いいか?魔法はこう使うんだ」


小さな氷の球を作り発射。

小さいが魔力を圧縮しているので速度も威力も段違いだ。


フーカの腹に命中し砕け散る。貫通はしない程度に威力は抑えておいた。

吹き飛ばされてそのまま意識を失うフーカ。


オスローは確認してから大きな声で言った。


「勝者、シュラ!」


「・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・」


全員沈黙。理由は分かる。


おそらく生徒はみんな(やりすぎだろ・・・)と思っているだろう。


「シュラ、もう少し手加減してもいいんじゃない?」


「あれでもずいぶん手加減したが」


「ああ・・・そう。確かにこれでもだいぶ手加減してるね」


本気でやれば三秒以内に一撃で殺せる。

だがそれをすれば大問題だ。


「シュラ、とりあえず回復させてやれ」


「そうだな」


重傷のギュスタから回復させる。幸い心臓に骨が突き刺さってはいなかった。

フーカも回復させる。


しばらくするとフーカが先に目を覚ました。


「うう・・・!?ギュスタ君、ギュスタ君!?」


「うるさいなぁ・・・起きてるよ・・・」


いつの間にか起きていたようだ。

ギュスタの顔は絶望一色だ。


「も、もう一回・・・」


フーカの言葉をギュスタが遮る。


「今のが実戦なら僕たちはすでに死んでるよ。戦いにもう一回はない」


よくわかっているじゃないか。


「その通りだ。若いのに理解しているのは素晴らしいぞ。今回の模擬戦で伸びた鼻は折れたか?強くなったとは思っていても手も足も出なかった」


二人はSランク冒険者だからどうしようもない、とは言わなかった。


「ギュスタの斬撃は鋭いが迷いがある。模擬戦で真剣とはいえ、迷えば勝てる戦いも勝てなくなる。フーカ、中級魔法を扱えるのはすごいが魔力の無駄が多いぞ。基本の魔力操作を怠っている証拠だ。私がやったように初級魔法でも無駄なく魔力を込めることが出来れば驚異的な威力になる」


二人とも意気消沈してしまった。

だが問題点を言うだけではかわいそうだ。


「しかしだな、二人とも連携ができているし応用もできているから後は基本を怠らなければさらに強くなれるぞ」


「本当ですか?」


「本当だとも。いつでも相手をしてやるから、腐るなよ」


「は、はい!」


これでもっと強くなってくれればいいのだが。


残った時間は二人とも真剣に基礎練習に取り組んでおり、剣は分からないので孫に任せてフーカの魔力操作のコツを教えたりした。依怙贔屓にならないよう、全員平等に教えた。

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