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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
一章 王位継承の争い
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仕返ししよう

「な、なぜ・・・」


私に無理とキッパリ言われ狼狽える王女。


もちろん断ったのには理由がある。


『なぜと言われてもな・・・それだけのものを簡単に手放せるほどの権力を持っていながら後ろ盾がないのはどう考えてもおかしい。おおかた問題が多いとか、継承順位が低くて利用価値がないとか、そんなのだろう』


それだけの力がありながら誰も仲間がいないのは不自然すぎる。


私に渡すつもりだったとしても、私が提供できるのは武力だけだ。


いや、法律の穴を突くということもできるかもしれない。


だが今の私は竜であり人間ではない。


人間に対抗できるのは人間だけだ。

他の人間からしたら私を仲間にしたとしても虎の威を借りる狐に映るだろう。


『それだけの力があるのなら、大規模な商会にでもやれ。我を後ろ盾にしたところで、周りの人間からすれば虎の威を借りる狐にしか見えんぞ』


「それが、私が後ろ盾を得ようとしても、いつも兄から妨害されるのです。商会などに領地を渡そうとしても、兄がその商会の弱みを握って受けとらせないのです。ほかにも私への嫌がらせなどもしてきています。後ろ盾を得ようと今までに数えきれないほど試しましたが、いつも無駄になります。それで竜様の元へ来ました」


妨害か。そして数えきれないほど試した、と・・・。


『その妨害の方法は?』


「法律の穴を突いてくるのです」


そうか。


『その兄の後ろ盾は?』


「表向きは宝石を扱う大商会ですが、裏で禁薬や違法な奴隷の取引などをしている悪名高い商会です。国王の父も不正を見て見ぬふりをしており、私は手遅れになる前に対処したいのです。・・・あの、なんでこんなことを聞くんですか?」


何度も何度も妨害されたのにも関わらず折れない精神力は大したものだ。

もしかしたら大物になるかもしれない。


あと王位継承の争いを解決すればこういった勧誘はなくなるだろう。

それにそのサディストの後ろ盾になるぐらいならこの王女の後ろ盾になったほうがマシだろう。


『なに、少し興味が湧いたからだ。それに、もしかしたら貴様を王座に就かせることができるかもしれん』


「本当ですか?」


『上手く行けばな。貴様の国の法律の書かれた本はあるか?』


「ありますが、今はありません。持ってきた方がいいですか?」


『ああ』


「・・・分かりました」


法律の穴を突いて嫌がらせをされるなら、仕返しすればいい。


王女が去り、私は昼寝をすることにした。








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「・・・誰ですか?」


「我だ」


「我?」


「名前がないから我としか言いようがない」


一日待って、分厚い本を持ってきた王女の第一声が「誰」だった。


竜のままだと本が読めないので、人型になって待っていた。


まあ、竜だったときの面影は赤黒い髪しかないから無理もない。


「・・・・・・・・・もしかして、竜様?」


「そうだ」


「人になれるんですね」


「いろいろあって『人化の術』を覚えていたのでな」


「そうですか。これが法律の本です」


本を受け取り、法律を確認する。

どうやら日本の法律とほぼ同じようだ。

細かいところは違うが、これなら問題ない。


「これなら大丈夫だ。サディストに仕返しができる」


「仕返し・・・?どんな内容ですか?」


「それは言えん。ただ一つ言えるのは、『権力闘争は己のすべてを賭ける』ということだけだ。・・・いずれ分かるさ」


仕返しとは、事件屋の手口『追いかぶせ』だ。


簡単に言うとターゲットの会社に嘘の大量発注をして直前にキャンセルし、大量の不良在庫を抱えさせ資金繰りをショートさせて倒産させるやり口だ。


かなりえげつないが、悪徳商会なら潰れても文句ないだろう。


事件屋はこういった悪知恵を思いつき、実行して稼いでいる。

他にも『バッタ』『小切手サルベージ』など、官僚時代に付き合っていた有力事件屋にはいろいろと世話になった。


まさかこんなところで役に立つとは思わなかったな。

主人公は犯罪まがいのことをしようとしていますが、現実世界でやったら一発アウトです。

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