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第1話 俺を殺せる者があるか

壮大なる三国志の物語、劉備や諸葛亮亡き後、蜀伝の晩節を汚したふたり

「魏延」と「楊儀」がもし「ポストアポカリプス」的な終末世界に

「ふたり同時に転生」してしまったら…?


また「殺し合う」のか?それとも…


現地人の少女グスタとの出会いが一体何を生み出すのか?


「死せる孔明は渋谷に転生し、生ける魏延・楊儀は終末世界を走らす」

ここにパリピはいない。

いるのは殺戮機械と明日の希望なき流民たちのみ!


はんこつもののレッテルを貼られた者たちの怒りのデス・ロード、ここに開幕ッッッ!!

西暦234年、古代中国、五丈原…

どよめく曇り空。ゴロゴロと遠雷が鳴り響いている。


漢王朝の正統なる後継を称する蜀の国は、漢を滅ぼした宿敵、魏の国との決戦を控えていた。

しかしその最中、稀代の名軍師、そして蜀の総大将でもあった丞相、諸葛亮孔明がこの地で亡くなった。

そして残された蜀の軍団。


いま、なびく「蜀」の旗が2つの陣営に分かれて、対立していた。


多数の方の蜀旗には、軍の事務等を担当する、史書の楊儀。

少数の方の蜀旗には、最前線で戦う、征西大将軍の魏延。


楊儀「やはり丞相のおっしゃる通りだった!この反骨の相を持つ裏切り者め!」

魏延「…貴様ら、フヌケでションベンたれの楊儀を信じるか。」


相も変わらず、死にたてほやほやの上司、諸葛亮孔明の名を冠した決まり文句を垂れ流す楊儀に、

魏延はため息をこぼし、そして、にらんだ。

魏延「…フン。いかに狼が群れを成そうとも、羊に率いられている者どもが、

孤狼に勝てると思うたか」


魏延が一呼吸をおいた後、大気震えんばかりの怒声が響き渡る。



魏延「こ こ に 俺 を 殺 せ る も の が あ る か ァ ッッッ!!」



ビリビリビリ…確かに大気がゆらめいた。


圧倒的多数を屁とも思わぬ「猛々しき」覇気の前に、楊儀側多数の兵たちは

ただ、立ちすくむほかなかった。


彼は先主亡き後、立て続けに名将を失ったこの国「蜀」において、

最前線を真っ先に切り開いてきた猛将「魏延文長」であることを

知っていったからだった。


そして楊儀は知っていた。

この男は、このクサレゲボカス野郎は、とにかく「空気を読まない」。

だからこんな多勢に無勢でも、平気でこんなことをほざける。

昔から、ずっと、変わらない。

ただ、武勇に優れている。それだけの知性なき飢えた狼に過ぎない。


だから、先主(劉備玄徳)に重宝され、先主亡き後、丞相に反骨の相ありき「はんこつもの」だと

認定されても我が蜀軍の先鋒として常に取り立てられてきたのだ。

人の、丞相の恩情に付け込んでその獣の本性を包み隠そうともしないその様に、

このワシ楊儀はヤツ以上にイラだっておるのだ。

殺す、ぜってぇ殺す。

そして機会はやってきた。



馬岱「ここにおり申す」

魏延「!!」


ザシュ


魏延側にいた副将、馬岱が手にした剣で一閃。

魏延の首元を袈裟懸けになぎはらった。


魏延「馬岱…てめぇ…!!」

馬岱「…」


不意打ちとは卑怯極まりないが、こうでもしないとこの男を仕留めることは出来なかっただろう。

馬岱は寸前まで悩んでいた。

諸葛亮亡き後、どちらにつけばいいのか。

しかし、すでに賽は投げられた。我が一太刀によって。

これで、蜀軍はひとつにまとまるしかないのだ。


馬岱「丞相、これで、よろしかったのでしょうか…」


馬上から崩れ落ちる魏延。

首元には致命傷となる刀傷。吹きあがる血しぶき。

さしもの歴戦の猛将も、もはや動くことはかなうまい。


楊儀「ギャハハハハハ見ろ!あの魏延が!ま る で ゴ ミ の よ う だ !!


楊儀「てめーが生きてたって何ひとつ!この世のためになんねーんだよダボがぁ!

てめーへの心的疲労のせいで死滅した我が毛根の恨み!はらさでおくべきかぁ!!」


楊儀は馬から降り、これまでの「魏延に受けた仕打ち」をこれでもかと言わんばかりに晴らすべく、

駆け寄りその遺骸にケリを入れまくった。


馬岱「…楊儀殿、何をしておる…!今は軍をまとめて…」


楊儀「やかましいわ!こいつのせいで!親愛なる丞相は過労で亡くなられた!

そしてワシの毛根も死んだ!許すまじ!許すまじ魏延!!

やはり名前に「魏」が入っているから敵国「魏」に通じているのは当然だったワケだ!


汚らわしい!汚らわしいぞこの汚物野獣はんこつものがぁぁぁぁ!!!

もっと死ね!もっと死んで砕けて土になってワシのクソと交じり合ってこの大地の養分となってこの世界食物連鎖の最下層の身分になって一生そのクソ人生を詫び続けろぉぉぉぉぉ!!!!!」


ボゴ ボゴ ボゴッ


もはや理屈とも呼べぬ罵声を放ち激高する楊儀。

呆れ果てる馬岱が口を開く。


馬岱「…楊儀殿」

楊儀「ああん??」


馬岱「…なぜ、泣いているのだ?」

楊儀「ハ?泣いてねーし!!!!!」


突如、あたりの曇り空から雷雲がたちこめ、膨大な質量の光雷が、楊儀と、魏延めがけて炸裂する。




楊儀「うぽぎゃわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」





馬岱「くっ…!!」

すさまじい落雷だった。

が、馬岱と周囲の蜀軍の兵士たちには特に何も被害はなかった。



ただひとつ、魏延と楊儀の姿がなかったことを除いて。





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