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内面発露、うつろわざる白【14話】


 ノクシス様は、いつも何かを考えてる。

 独り言でもその考えを出してくれれば相談にも乗れるのに、紙に何かを書いている時のノクシス様には話しかけづらい。


 ……でも、こうしていると、あたしは本当にノクシス様の元で働けているんだってことを、実感する。


 * * *


 それは突然だった。


「帝国騎士のナーシャで~す」


 間延びした声、優しそうな糸目に、大きな鎧を着たお姉さん。


「な、何かごようですか……?」

「このお家が、山賊に襲われるとの情報を掴みまして~」


「さ、山賊に!?」

「はい~。なので~、外で守らせてくださいね~」


「え、あ、ありがとうございます……?」


 よくわからないけど強引に押し込まれた。

 不思議と疑問を抱く暇も与えてくれない方だった。


 そして聞こえる男の怒声。

 一拍の後、静かになる。


 あたしは窓からしっかりと見た。

 本当に山賊が家を襲おうとしていたところを。

 ナーシャさんがそのすべてをなぎ倒すところを。


「終わりましたわ~」

「ナーシャさん、ありがとうございます!」

「お礼は私ではなく~……ノクシス様にどうぞ!」


「ノクシス様……?」

「はい~、ヴァルメリアというお家柄の出自のしっかりした貴族様ですわよ~」


 帝国貴族といえば住民を圧政を敷き、自分達は好き放題しているという話しか聞いたことがない。どんな方なんだろう、と興味をそそられた。


 * * *


 家が、なくなっていた。


 お母さんがお夕飯をいただきに親戚の家に押し掛けた、その夜のことだ。


「働かないと……」


 お母さんがそう呟くと、まだ小さい弟と妹が服のすそをぎゅっと掴む。

 あたしもお母さんに協力したい。


 そうだ、ノクシス様のところに……ヴァルメリア家に行ってみよう。

 わざわざ山賊から守ってくれるようなお貴族様だから、あたし達のことも助けてくれるかもしれない。


 ううん、働こう。ヴァルメリア家で。

 名案だね。ノクシス様にも、お母さんにも恩返しができる。


 * * *


 ヴァルメリア家は遠かった。

 女の身ひとつで旅をするのは、かなり危険だったけど、行動力だけで歩みを進める。

 途中で行商人に相乗りさせてもらうことができたのが、ツイてた。


 だけど、ヴァルメリア家に行くって話したら、どこか憐れむような目で見られた。なんでだろう。


 ヴァルメリア家に到着し、働き口を探していることを伝えると、旦那様の元に連れていかれ、すぐさま雇用が決定した。


 お屋敷のメイドが次々にクビにされていたため、足りてなかったという。


 また旦那様の話ではノクシス様が結婚しないことに危機感を抱いているらしく、()()()()ことになるのも覚悟の上で、ノクシス様お付きのメイドになってほしいとのことだった。


 か、覚悟はできてる。


 万が一、苦手な人だったらどうしよう、と不安が募った。

 でもそれは杞憂だとすぐに知る。


「ノクシス様! やっとお会いできました……!」


 ノクシス様との初対面は雷が打たれたかのようだった。


 かっこいい……。


 吸い込まれそうな黒い髪、整った顔立ち、知的な瞳、自信に溢れた態度、金で装飾された黒い服もあつらえたかのように似合っている。


「お会いできて嬉しいです! あたし、エリカって言います!

ベルト山の麓でノクシス様に救ってもらいました!」


 って力強く挨拶した。

 その瞬間に目の変わるノクシス様。


「……あの民家は焼失していたはずだ」


 ああ、やっぱり覚えていてくれた。

 ノクシス様のおかげで家族みんなが無事だったこと、感謝してもしきれない。


「ノクシス様の為なら何でもします!

ですから、よろしくお願いいたします!」


 これがあたしにできる精いっぱい。

 でもノクシス様は、すごくびっくりした目であたしをみていた。


「――誰だ、お前は……」

「はいっ、ノクシス様! あたし、エリカです!」


 と返答すれば、ノクシス様は何か思い出したかのようにフッと笑って……「エリカ(こいつ)と二人きりで話がしたい」だなんて。

 恥ずかしい!


 でも不思議なのはそのあと。


「その演技はもういいと言っている」


 って言われた。演技ってなんのことだろう。

 丁寧にしようとしているのがバレちゃってるんだろうか、それはそれで恥ずかしい。もごもごしていると、ノクシス様の口が開く。


「ふっ、いいだろう。そこまでシラを切るつもりなら、それでも構わん。

だが俺は貴様の思い通りにはならん、絶対にだ」


 拒絶、なのだろうか。

 でもいい、あたしはノクシス様のお傍で働けるだけ幸せ者なのだから。


 ――それからはちょっと思い出したくないミスの数々。


 あたしってどうしてこう、がさつなんだろう。


 水晶玉は割っちゃうし、指は切っちゃうし。

 せっかく「掃除するのは構わんが、静かにやれ」って許可をもらったのに、書類はバラバラに落としちゃうし、羽ペンも踏んで折っちゃうし……そ、そんなに太ってないもん!


 そして私に告げられた処分の一言。


「そうだ、先に"処分"しておけば……」


 終わった、と思った。

 せっかく憧れのお方の元で働かせてもらえたのに、初日で台無しだ。


 どうにかしようと考えると、旦那様の言った"そういうこと"が浮かんだ。


 自然と、服を脱ぎだしていた。

 恥ずかしい。嫌じゃないけど、やっぱり嫌。

 こういうのは段階を踏んでほしかった。でも、覚悟はした。


「バカか貴様は!」


 本当に怒られた。今までの怒り方とは違う、本当の怒り。

 あたしの身体なんかには興味ないよね、それはそうだよね……。


 でもその後は夢のような生活が始まった。


 朝起きて、ノクシス様のお世話ができて、ノクシス様に飛竜に乗せてもらえたりして。


 飛竜、エルディーンの背中は好きだ。

 ノクシス様に密着しても怒られない。

ノクシス様をずっと掴んでるとちょっと手がしびれるけど。


 ある時、ノクシス様と話した内容がずっと頭から離れない。


「でもノクシス様。あたしメイドですから、なにかお役に立たないと」

「何もしなくていい。お前はそこにいるだけでいいんだ」


 思わず俯いてしまった。顔から火が出そうだったから。

 初めて受け入れてもらえた。

 ノクシス様のお役に立ててる。それだけで涙が出そうになった。


 ああ、そうか。

 あたし、ノクシス様のこと好きなんだ。


 ノクシス様はいつも難しいことを考えてる。

 あたしはそこではお役に立てないけど"そこにいるだけでいい"って言われたことを胸に、いつもノクシス様の味方でいますね。



――大好きです、ノクシス様。


 


PHASE1『原作ハック』は、これにて幕引きです。

ノクシスが仕掛ける次なるハック先は……マリエル。果たして彼女はプレイヤーなのか。


PHASE2は現在準備中です。公開まで今しばらくお待ちください。


いつもリアクション、ありがとうございます!やる気に寄与してます!

『悪役ハック』の続きが気になる、と思ってくださった方は【ブックマーク登録】を行っていただき、次回をお待ちいただければ幸いです!

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