出発
あれから二週間がたった。私は商品の武器を思ったよりも安く手に入れ、ジェルメーヌは日雇いで旅費を稼いでいた。
私たちはもうすぐに出発できる状態だ。
「セドリック兄さん! 村はいつ出るの?」
「明日の朝かな」
「わかった」
最初、ジェルメーヌは驚いていたが、今ではもう乗り気だ。
ジェルメーヌは王都に行ったことがないのでうれしいのか、目が輝いている。実に可愛い。
「明日は早いからもう寝よう」
ジェルメーヌは「おやすみなさい」といってから寝室に入っていった。
私も旅路をひと通り確認してから寝室に入る。
寝室に入ったころにはすでにジェルメーヌが寝ていた。寝顔がまた可愛い。
目を覚ましたころには外は少し明るくなっていた。
横を見ると……ジェ、ジェルメーヌがいない!?
「ジェルメーヌ、どこにいる!」
私はベッドから飛び上がりジェルメーヌを捜す。室内をくまなく捜すが、見つからない。
もしかしたら連れ去られたのかと思い、外へ飛び出る。
「セドリック兄さん、おはよう」
私たちが泊っている宿に併設されている馬小屋から声がした。それはとても聞きなれたこえであった。
「あぁ、おはよう」
そこには笑顔で挨拶をするジェルメーヌのすがたがあった。
「セドリック兄さんどうしたの?焦った顔して」
「あ、あぁ少し悪い夢でも見て……」
可愛い妹が連れ去られたかと思ったなんて当然いえない。私は愛想笑いをして誤魔化す。
「それより馬小屋で何をしていたのだ?」
「出発するのが楽しみで馬に餌をやっていたんだ」
ジェルメーヌは顔を少し赤くしながらそう言った。
「そうか、いないからしんぱ……驚いただけだ」
いないから心配したなんか言ったらひかれるに決まっている。まあ、言いかけたが。
ジェルメーヌは不思議な顔をしながらこちらを見ているが……。
「そうだ、そろそろ朝食をとろう」
逃げるかのように話題をそらし宿に戻る。
周りとは早い朝食を終えると私とジェルメーヌは荷物を持ち宿を出る。
宿から出ると、外には作業場に向かう大工や工房に向かう職人、店頭に商品を並べる店主などがいて、すでに村は動き出していた。
外に人が意外と多いので宿から出るのがちょっと遅かったかなと思ったりもする。
そんなことを考えていると武器を作っている知り合いの工房についた。出発前に武器を持っていても保管場所がないので、出発当日に受け取ることになっている。
「おはよう、セドリック」
髪があまり整っておらず、服が少し汚い男が出てきた。その男は私の古くからの知り合いだ。
「おはよう、ジョゼフ。武器をとりにきた」
軽く挨拶を交わすとジョゼフは私の斜め後ろに立っていたジェルメーヌに視線を向ける。
「そちらはセドリックの妹さんかい?」
「はい、ジョゼフさん。おはようございます」
ジョゼフ「おはよう」と言うと。お仕事モードの顔になった。
「マスケット銃が20丁で間違いないな?1丁で銀貨5枚。合計で金貨10枚だ」
銀貨10枚で金貨1枚。お金は親が残した物と、稼いだ物だ。
「ああ」
私は財布の中から金貨10枚を取り出しジョゼフに渡すとジョゼフはピストルを私に渡してきた。
ピストルを見ると汚れが見当たらず、新品という感じがあった。
「それはやるよ。撃ち方はマスケット銃と同じだ。もちろん金はいらねぇ」
私は出発する前にもしものために銃の訓練をしていた。
「ありがとうジョゼフ。大切に使うよ」
私はピストルを腰にしまい、工房を離れる。私たちはそのまま村の門へ向かい村を出る。
王都に着くのには三週間程かかる。道中、最も警戒しなければならないのは盗賊だ。
彼らは田舎から出てきた旅商人を襲う、たちが悪い連中なのである。その対策として私は出発前に銃の訓練をしてきた。それにジェルメーヌには一応、短剣を持たせてある。
まぁ、ジェルメーヌを傷つける奴は私がぶち殺すので使うことはないと思うが。
しばらく、馬車を走らせていると日が沈んできたのでちょうどいい所で野営をする。
私は焚き木を集め、火をおこす。ジェルメーヌが何やら一人で遊んでいるので、私も一緒に遊ぼうと声をかける。
「ジェルメーヌ。何をしているのだ?」
「罠を張っているの。罠にかかった人は体が燃え出して、苦しみながら死んでいくの」
「そ、そうか」
ジェルメーヌは満面の笑顔でそう答える。
この子を怒らしたら殺されるだけではすまなくなるのではないだろうか。
私は愛想笑いしながら返事した。
私は少し考えてみる。普通の罠ならば足が抜けなくなるとか落とし穴とかそういうものだが、ひょっとしてこれは魔法ではないどろうか。だとしたら、魔法はどこで覚えたのだろうか。私は聞いてみる。
「なあ、ジェルメーヌ。それって、魔法ではないのか?」
「そうだけど」
ジェルメーヌは不思議そうな顔でこちらを見る。どうやら当たり前のことらしい。しかし、私たち、田舎者には魔法など知っているはずがない。王都とか、都市あたりにいけば魔法学校で教えてくれるのだが、経済的に余裕がないので学校になど行けない。
ではなぜ、その魔法を知っているのだろうか。私は焚火を眺めながら考える。
隣にいるジェルメーヌをチラッと見てみた。ジェルメーヌは嬉しそうな顔をしながら日記をつけている。そんな姿を見ていると、どうでもよくなってきた。
ジェルメーヌが眠りにつくと、私は銃を手に持ち見張りをする。
空を見上げると、そこには満天の星空が広がっていた。私は星の数を数えながら時間を潰していく。
私は気付くと、寝ていてしまった。目を覚まし、消えそうな弱弱しい火に焚き木を入れ、火を大きくしていく。
すると、目の前に突然、炎が上がる。
「ぐあああぁぁぁぁ」
叫び声が聞こえる。燃えている物体は苦しみながら叫んでいると徐々に声の力をなくしていき最終的には声がなくなった。盗賊が罠にかかったのだろうか。
私は他にも盗賊がいるかもしれないので銃を構え、いつでも撃てる用意をする。
「うぉらあぁぁぁ!」
体が大きい男が斧を持ち、雄たけびをあげながら襲いかかってくる。私は男の太ももに狙いを定め銃を撃つ。殺そうとしなかったのは捕らえて奴隷として売ろうと思ったからである。
男はその場に崩れ落ち、歯を食いしばりながらまた立ち上がろうとする。私は駆け寄りその男を銃で殴り気絶させる。
私は銃をおろし安堵の一息つく。
しかし、安心したのはつかの間。盗賊の集団が突撃してくる。私は茫然とした。
その時、火の玉が盗賊の集団を目掛け飛んでいく。私はとうとうおかしくなってしまったのだろうか。
私はボーっと盗賊たちがもがいている姿を眺める。私は何も考えず、どこから火の玉を発射しているのか見てみる。
火の玉を発射しているのはジェルメーヌだった。ジェルメーヌは今までに見たことがない顔で火の玉を出していた。
「ジェルメーヌ!」
私は思わず声を出してしまう。しかし、ジェルメーヌは私が声を出したことに気づいていない。火の玉を出すことに夢中である。
私はジェルメーヌが盗賊の集団を一掃するのを見守る。
ジェルメーヌは盗賊の集団を一掃した。盗賊の中には逃げた者、自害した者、投降した者がいた。それ以外は死傷してしまった。
戦闘が終わった時に、ジェルメーヌがこちらに駆け寄ってくる。
「セドリック兄さん! 大丈夫?」
そう言って、私に抱き着いてきた。
「ジェルメーヌ。助けてくれてありがとう」
負傷した盗賊、投降した盗賊は拘束し、ここから一番近い町で、奴隷として売ることにした。
ジェルメーヌが可愛いです。




