蒼い空の彼方に
忠明は、部屋に帰って、死んだように眠った。
一連の事件で、自分の身に降りかかった全ての出来事が、何十年もの月日をたった一日で消化したような、濃厚な時間だった気がする。
夢から醒めて、目を開けると、静けさだけが部屋の空気を支配していた。
里美を失った喪失感だけを残して。
一週間後。
忠明は、ビルの屋上で、街を一望して、限りなく高い空の極みを眺めていた。
目を閉じると、里美の最期の言葉が、蘇る。
あの時、里美はどんな表情で自分に話し掛けたんだろうか?
悲しさの連続で、心のどこかが壊れたのか、無気力感が拭えないが、心の奥底で、ほんの小さな光が残っている気がする。
(・・・里美。君はもう本当にいないんだね。兄妹と知って正直いって驚いた。もし、君が生きていて、真実を知った時僕はどうしただろうか?悔しいけれど、和子おばさんが言ったとおり、別れたりはしなかっただろう。きっと僕らは結婚し、未来を夢見てどこまでも手を繋いで歩いたことだろう。君が、ひと足先にこの世を去り、君は永遠の恋人となってしまったね。でも、これからは君の分まで、きっと幸せになるように前だけ見て生きてみようと少しだけ、頑張ります)
「・・・里美、安らかにおやすみ」
忠明は、蒼い空を飽きるまで、いつまでも、静かに眺めていた。




