第2話 偽りの革命家 <5th 革命家>
ハヤトとセーラは剣の間に辿り着いていた。
剣の間は広く奥行きがあってホールのような作りをしている。
天井は3階程の吹き抜けで端に四角い窓が数個ある。
窓のおかげで陽の下のような明るさだ。
左右には灰色の柱と甲冑の像が数体置かれている。
床には赤い絨毯が敷かれ扇状にテーブルが3つ置かれている。
テーブルの後ろには小さな階段が左右に配置され奥に段差がある。
中央のテーブルの周りには10人程の男がいる。
彼等はテーブルの上に置かれている地図や資料を眺めている。
「ちょっといいか?」
何の躊躇する事なくハヤトは男達に言葉を放った。
その声に反応し彼等は入口に目を向ける。
セーラは男達の服装を見てある事に気付く。
「ねぇハヤト、あの服って」
「見た事あるな」
2人は男達の格好に見覚えるがある。
彼等の服装は昨日襲ってきた3人組と同じなのだ。
男達はトラキア革命軍の兵士である。彼等が着ているのは革命軍の制服だ。
――なるほどねぇ。『トラキアの騎士』ってそういう事か。
ハヤトは鼻笑いをすると急に怖い表情を取る。
「ルタコスって奴を探しているんだが、知らないか?」
――あーぁ、普通に聞いちゃったよぉ。
それにルタコスじゃないって! だから何で名前がタコス化してんの!
オーナーの失言を聞いてセーラは肩を落し呆れている。
革命兵達は顔を合わせ不思議そうな顔をしている。
それもそうだろう。ハヤトは指導者の名前を真顔で間違えているのだ。
そんな哀れなハヤトを助けるべくセーラが小声で助け舟を出す。
「ねねっハヤト。ルタコスじゃなくて、ルタクス」
ハヤトは顔をひょいと前に出し自分の間違いに気付く。
コホンと咳付くと、ハヤトはもう一度革命兵等に尋ねる。
「ルタクスって奴を知らないか?」
ルタクスという名前を聞くと兵士達は急に身構えた。
手前の兵士はハヤト達が侵入だと判断し右手を剣の柄にかけた。
すると、中央にいる兵士が「よせ」と言い手前の兵士を鎮めた。
「私がルタクスだ。君等は何者だ?」
中央にいる兵士がルタクスだった。
ルタクスは30代前半の年齢で灰色の瞳に緑の短髪。
服装は革命軍の制服を着ている。
ハヤトは腕を軽く組むと一歩前に出た。
「俺はエーゲ軍の士官だ。人を操ったり街を支配したり
随分と好き勝手やっているな」
エーゲ軍と聞いて兵士達は剣を抜き始める。
しかし、ルタクスだけは剣を抜いていない。
ハヤトは右手を柄に掛ける。彼は口元をニヤリとさせ、ルタクスを睨んだ。
「お前等、無事にここを出れると思うなよ」
この一言が開戦のきっかけとなった。
兵士達は一斉に走りだしハヤトに向かっていく。
――やはり、コイツ等には感情があるか。
ハヤトは兵士達が操られていない事を悟っていた。
何故なら、昨日の3人組には人間らしい感情があったからである。
――エーゲの軍人ではなさそうだし、これなら遠慮はいらないな。
ハヤトはセーラに「見てろ」と言うと兵士達に向かって行った。
彼は敵の剣を受け流し一撃で革命兵を倒していく。
兵士達は首を斬られたり心臓を刺されて死んでいる。とても無残な光景だ。
――ハヤトってこんな戦い方するんだぁ……
昨日のもビックリしたけど、ちょっと怖いなぁ。
セーラは少し引いていた。
彼女はハヤトがチンピラを倒した光景を目にしている。
その時はハヤトがキレていると思いあまり気にも留めなかった。だが今は違う。
セーラは平然と首を跳ねるハヤトに恐怖を感じていた。
一方、革命軍の首領であるルタクスは何もせず黙っている。
目の前で仲間が殺されているにも関わらず彼は平然としていた。
ハヤトが向かい来る敵を倒すと2人の兵士が剣を構えたまま様子を見ている。
兵士は怖気づいているのだ。
「雑魚のくせにビビッてんじゃねーよ!」
ハヤトはイラつきながら2人の兵士を斬り倒した。
彼の言う台詞は理不尽であり傍から見るとハヤトがチンピラに見える。
兵士達が全滅し戦いが止む。ルタクスは依然冷静な態度を取っている。
「ここに来れたという事は、ラーズを倒したようだねー」
――ラーズ? あー噴水にいた奴か。
「いや、俺達は倒してない。味方に頼んだんでね」
「そうかい……」
――我兵士を一瞬で倒すとは…… 中々の逸材だなー。
これなら使えるかも。
ルタクスはハヤトの腕に惚れハヤトを仲間に引き込もうと考える。
「リーシャー!」
突然、ルタクスは後ろの上段に向かって声を上げた。
彼の声に反応し上段の奥から黒い服の女性が現れる。
女性は20代前半の年齢で灰色の瞳に黒の長髪。
髪は巻き髪で服は黒のローブを着ている。
彼女は両手で水晶を持っている。水晶は黒く丸い形をしている。
「うるさいな。今眠りそうだったのに」
女性は不機嫌だった。彼女は転寝している所を起こされたのである。
「ハハッ、すまない」
女性に謝った後、ルタクスは片手を上げ女性に指示を出した。
次の瞬間、ハヤトとセーラは地面に跪いた。
――何だこりゃ!
ハヤトは身体を動かそうとするが全く動かない。
彼は完全に身体の自由を失っていた。
ハヤトは後ろにいるセーラへ声だけを向ける。
「セーラ、動けそうか?」
「ダメ。身体が全然動かない」
セーラも身体の自由を失っていた。
ハヤトは身体を硬直させた状態で女性に目を向けた。
――恐らく、あの女だな。
ハヤトは勘付いていた。
何故ならあの女性が現れてから2人は動けなくなったからだ。
そして、その勘が確信のモノとなる。
「この子はリーシャ。彼女はいかなる者も操り
隷属させる事ができるんだー。凄いだろう?」
ルタクスは妙に語尾が伸びる喋り方をしている。
喋っている時の手振りや表情といい、とても鼻に付くものだ。
――やっぱりか。
ハヤトの予感は的中していた。
隷属という言葉を聞いてセーラはクラウスの言葉を思い出す。
『革命軍には人を操る異能者か天装使いがいる』
――多分、あの子が街の兵士を操っているんだ。何とかしないと……
リーシャは左手で水晶を持ち、右手で水晶を撫でている。
水晶の中は紫の光が光ったり消えたりしている。
彼女はその水晶でハヤト達の動きを封じ街の兵士を操っているのだ。
ルタクスは誇らしい表情を取っている。彼の機嫌は御満悦だ。
「君等は私に服従せざる負えない。残念だが、君等に勝ち目はないよ」
――チッ、卑怯な手を使いやがって。
ハヤトが再び身体を動かそうとすると微かに身体が動いた。
ハヤトとセーラは身体の自由を取り戻そうと全身に力を入れる。
すると、彼等に掛っていた呪縛は弱まり身体に自由が戻ってくる。
ハヤト達は立ち上がった。
――あれっ? オカシイな。
ルタクスは呪縛が解けた事に驚いている。彼はこんな事を予期していない。
ルタクスは目を見開いた状態でリーシャに顔を向けた。
「無理…… コイツ等、制御しきれない」
そう言うとリーシャは奥の方へと消えて行った。
彼女は身の危険を感じ逃亡したのである。ルタクスを置いて。
――マズイ! あの子を捕まえないと。
セーラはとっさに走り出し、駆けながらハヤトに声を掛ける。
「ごめんハヤト。私あの子追うね」
ハヤトの了解を聞かずセーラはテーブルを踏み台にして上段に跳んだ。
彼女はそのまま奥へ向かって走りリーシャを追いかけに行った。
一瞬の出来事だった為、ルタクスは何もせずハヤトと共に傍観していた。
――あら…… まぁ、あっちはセーラに任せるか。
ハヤトはポリポリと頭をかくとルタクスを睨みつけた。
「これで邪魔者はいなくなった。差しで勝負ができるな」
ハヤトさん、人の名前を間違えるとか最低ですよ。




