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序章 『英雄の末路』

            黄昏のヴァルキューレ


      序章  『英雄の末路』


ドンッという重苦しい音が腹の底から揺らすような振動と共に部屋を揺らした。

それと同時に唯一の光源である裸電球は大きく揺れ、幾度となく明滅を繰り返す。

そんな部屋の一人の男が座っていた。


かつて輝きを見せていたであろう髪は殆ど白へと変わり、肌も水分を失って皺くちゃとなっていたが、ただそこにいるだけで部屋全体の空気が重く沈みこむような威圧感を放つ初老の男。

その身を包むのは使い込まれた黒の軍服であり、胸にはこれでもかと無数の勲章が吊り下げられていた。

右肩から大綬章を掛け、腰には星章が重い輝きを放っている。


そんな彼がじっと眺めていた扉が開くと、外から中に同じ黒い軍服を纏った一人の初老の男が入ってきた。

しかし、その男の服は所どころ破れて血が溢れ出し、特に酷い左腕は半分程が炭化しており中の白い骨が透けて見えている。

生理的嫌悪を感じさせる鉄の似た血の臭いと無数の硝煙臭を身に纏わせている彼。

そんな見るからに痛々しい姿をしているが、彼が浮かべているのは朗らかな笑顔であり、それにつられて座っていた男の仏頂面に笑みが現れる。


「その様子だと随分と楽しんだみたいだな、ミハイル・ファミンツィン准将」

「何、経験の足らん若造共に少しばかり本物の奇襲という物を教授してやっただけさ。

それに勝利の女神が下着を見せつけてくるような誘いを見せてくれたのなら襲い掛かるのは男として最低限の礼儀だろう?」

「違いない。だがその手、最後には女神様に嫌われたか?」

「いや、これは俺の衰えたのが原因だ。

昔の気分で戦争をしていたら、何時の間にかこうなっていた」


ミハイルと呼ばれた男はそう言って男の前に座ると苦笑を浮かべた。

座っていた男はそう言うミハイルの言葉を笑いながら、手元にあったボトルを開け、グラスに中身を注いでいく。


「私も貴様も衰えたからな。

少なくとも老人と世間一般で言われる程度には。

だから昔のような無茶は出来なくて当然だ」

「そうだな。

現役だったのは今から三十年も前の話だからな。

……三十年か、どうだったグラヴィティス元帥、英雄としての生は?」


ミハイルがそう言うと男、ユーリ・グラヴィティス共和国名誉国家大元帥は寂しげに笑った。


「この様を見て分からんか?」

「ははっ、そうだったな。

すまない、戦友。悪い事を聞いた」

「何、気にするな戦友。

どの道、最悪で糞ったれた物に違いなかったからな。

これが終わるのかと思うと実はこれで結構清々しているのだ」


その言葉通り彼らはかつて英雄と呼ばれた男だった。

糞尿の匂いの方がマシだと思える腐敗に満ち溢れた王国で起きた民主化クーデターに仲間達と共に参加し、革命を成功させた救国の英雄。


そんな救国の英雄に与えられた三十年間は不遇の一言に尽きる。

民主化後の国家指導者として選ばれた議員達からはその高すぎた能力故に恐れられ、功績と名望を妬まれ、表舞台から強引に引き摺り下ろされたのだ。

第二の家であった軍からたたき出された彼らに待っていたのは、監視され続ける虜囚のような生活。


友と自由に会う事すら出来ない生活を彼らは祖国を救ってから三十年という間、送り続けていた。


それも数年前に終わり告げた。

民衆は結局自分達の足で立つ事は出来なかったのだ。

政治は欲に溢れた政治家達の粗末なショーと化し王国時代以上の汚職と利益誘導がはこびり、国民も自らの任命責任という言葉を忘れ、政治家達に文句を言うだけとなった国。


そんな混乱が続く国で再びクーデターが起きた。

――『王政復古』。

かつて自分達が拒絶した絶対的な支配者を民衆は再び欲したのだ。

彼らは運良く生き延びていた王族の一人を祭り上げ、クーデターを起こし民主制から王政へと戻した。


かくして救国の英雄は祖国を滅ぼした反逆者となっていた。


「さて、そろそろ乾杯といこうじゃないか?戦友。

この敗戦という苦味を肴にしてな」

「いいとも、戦友」


二人は酒が注がれた四つのグラスの中から一つを手に取り、あおる。


「懐かしい味がする糞不味い酒だな、国家元帥。

もっと良い物は用意出来なかったのか?」

「残念ながら反逆者である私に用意できるのはこの程度だ、諦めたまえ。

しかし貴様、この味をまだ覚えていたのか?」


ユーリは少しばかり驚いた声を上げる。

それに対してミハイルは憮然とした顔でボトルごと掴み、飲んだ後に吐き捨てるように言った。


「当り前だ。

この安い糞不味い酒をあおりながら俺達四人はあの臭い部屋で語り合ったんだろ?

貴様は覚えていないか?

同期の糞金髪への復讐方法で盛り上がった時なんか、こんな不味い酒を俺達は四本も開けていたんだぞ」

「確かあいつは……同性愛者共の館に沈めてやったんだったか?

いや、まさかホンモノになって帰ってきて感謝されるとは思わなかったがな」

「確か、真実の愛に気づかせてくれてありがとう、平民出身だと思って馬鹿にしてすまなかった、だったか?

さすがにアレはなぁ。

まぁ、そのお陰で後ろに目が出来て、俺達が生き延びる要因となってくれた訳だが」

「ははっ、そうだな。貴様の怯え様は実に傑作だった。

夜に厠に行く時に貴様、私に付いてきてくれと頼んだぐらいだからな」


そう重い砲撃音が鳴り響く室内で酒を飲みながら昔話に花を咲かす二人。

彼らの脳裏に浮かんでいるのは過去に共和国が王国という名だった頃にあった軍の幼年学校に通っていた頃の思い出だ。

ユーリとミハイル、その他に二人を加えた班で暴力と理不尽が徒党を組んで襲い掛かってきた三年を過ごしたのだ。

それぞれが娼館や妾、奴隷といった碌でもない出自であり、反目し合っていた彼らだが、貴族の学生による苛めにあい、不服ながらも協力しているうちに卒業する頃には無二の戦友であり親友であると言える仲になっていた。


それは卒業した後、彼らが全員が別々の任地に配属されても変わらない物であり、一番統率力があり彼らの班を隊長を任されていたユーリを中心にして連絡を取り合い、会う度に学生時代に戻ったかのように酒に溺れていた彼らだったがある時を境にそんな日々は一変した。

政府系の人間がした少女暴行殺人事件の隠蔽発覚から始まった反政府運動が革命運動へと変わっていってしまったのだ。

軍人からも多数の離反者が出たこの革命によって、窮地に立たされたのはユーリだった。

彼自身には革命への熱なんて物は一切なく、ただ職務を遂行していただけなのだがその出自と部隊配置の悪さから危険分子として捕まり、処刑されかけていたのだ。


それを救い出したのが同期生であった三人。

ユーリの残した街の地下地図を頼りに奇襲作戦を用いた彼らはユーリが捕らわれた前線都市を丸々革命軍に陥落させる事でユーリを助け出した。

その功績を持って四人は軍人が革命軍の一翼を担う将官となり、その後の躍進を支え続けたのだ。


「……しかし、こうやって杯を交わす最後に残った相手がユーリ、貴様だとはな。

俺はてっきり貴様が一番早くに死んで、アレクセイ辺りと貴様の事を思い出しながら飲むもんだと思っていたんだが」

「私もそう思っていたさ。

個人的な願いを言えるならば、死因は酒の飲みすぎか煙草の方が良かったのだがね。

あぁ、いや、女の上でもいいな」


そういうユーリにミハイルは馬鹿笑いをした。


「はははっ、馬鹿を言え。貴様のそっちはもう現役じゃないだろう」

「まぁ、そうだがな。

でも、女に抱かれていると安心するのが男という物だろう?」

「否定はしないが、俺は貴様程、好色では無い」

「好色は英雄の条件だから仕方ないさ」


酒によって朱に染まった顔でしたり顔で言うユーリにミハイルは机を叩いて笑う。


「相変わらず酔うと口が本当に減らない奴だな、貴様は」

「それをいうなら貴様だって問題はあっただろう

酒に弱い癖に誰よりも早く多く飲んで酔いつぶれて、毎度後始末は誰がやったと思っているんだ?」

「ユーリ国家元帥閣下とマイヤー中将閣下だったか?」

「私一人だ、貴様の世話を私が一番したのだから覚えておけ。

それに、マイヤーの野郎は貴様がゲロする度に貰いゲロを吐いていただろう?」

「あぁ、そういえばそうだった。

あいつは泣き虫で臆病でなんで軍人になったんだが分からなかった奴だったな。

でも、俺達にとっては最高の戦友だったよ。

……あの野郎、無駄にかっこつけて逝きやがって。

ああいうのは俺の役目だろうに」


その言葉にユーリは持っていたグラスを置き、満たされたまま放置されている二つのグラスに目を向ける。

そこに置かれているのは彼らの同期であった二人の戦友達に用意された物。

しかし、彼らここに来る事は永遠にない。

アレクセイは政府の人間によって捕まり処刑され、マイヤーはユーリとミハイルを逃がす為の囮となり敵を引きつけ、最後には立てこもった拠点と共に爆死している。


それでもグラスを用意したのはユーリの感傷に他ならなかった。

それを分かっているミハイルはユーリと共に中に入っている酒が揺れるグラスを見る。


「……まぁ、何だ、ミハイル。

私達は軍人で、戦争をしていて、指揮官で、殺しているんだ、殺されもするさ」


グラスを見て呟くユーリをミハイルは見ると椅子に深くもたれ、独り言にようにユーリに語りかけた。


「クルーツィス助教の口癖か。

そうだったな……そう、そうだった。

どうにも長く生きると感傷的になるらしい」

「それは老人の宿命だから仕方ないだろう。

どうにも私達は軍人をするには長く生きすぎたらしい」

「ははっ、違いないな。

さてと、そろそろこの楽しい昔話も終わりにしようか、ユーリ。

……もう時間だ」


ミハイルはそう言うと、腰のホルダーから一丁の黒光りする年代物の拳銃を取り出す。


「これまた懐かしい物を持っているな。

卒業の時に配られた奴か」

「そうだ。懐かしいだろう?

それにこういう時の動作は折り紙つきだしな」


言った彼の手の中にあるのは王国の国産拳銃だ。

共和国になってもその優れて洗練された設計から生産され続けている抜群の信頼性を持つ拳銃。

それを焼け焦げた左手で撫でた後に目の前に座るユーリに差し出した。

そして立ち上がり、敬礼をユーリに向かってする。

その姿はさっきまでの酔いどれた姿からは想像が出来ない程にしっかりした物だ

合わせてユーリも立ち上がり敬礼を返す。


「貴官の命じた任務は今を持って滞りなくすべてが完遂された。

ご苦労だった、ファミンツィン准将」

「勿体ないお言葉です、元帥閣下」


微笑むミハイルに対して、ユーリは手渡された拳銃を構える。


「また地獄で会える事を楽しみに待っているよ、戦友」

「あぁ、今度はマイヤーとアレクセイと共に地獄の不味い酒を楽しもう。

先にいって準備をしておいてくれ、私もすぐ逝く」

「了解だ、ユーリ。

貴様が来るまでにアレクセイとマイヤーの尻を叩いて地獄の悪魔共から徴用しておくさ」

「楽しみしておく、じゃあな――――戦友」

「あぁ、じゃあな、戦友」


そう言葉を言った次の瞬間、ユーリの持っていた拳銃の引き金は引かれ、ドンッという重い音と共に銃口からはマズルフラッシュが瞬き、ミハイルは崩れ落ちた。


ユーリは、頭に穴を開け血を垂れ流すミハイルの事を確認せずに椅子に倒れこむように座り天井を眺める。


「……これで残されたのは私一人か」


そんな独り言が砲撃が止み、揺れなくなった部屋に寂しげに響き渡る。

ユーリの居る部屋、司令室で唯一いきている無線機からは無数の足音が響いていた。


反逆者と認定され、追われ、逃げ続けた果てに居座った辺境の小規模軍事基地は最早殆どが陥落していたのだ。

最早、ユーリに逃げ場存在しない。


ユーリの衰えた耳にも聞こえる程に大きくなった無数の足音に彼は笑った。


「かくして英雄は反逆者となり、無謀にも抵抗したが正義の王国軍に撃ち滅ぼされ果てる。

これで私も歴史上の悪役に名を連ねるか。

実に不愉快極まりないが、納得はしよう。負けは負けだからな。

だが、私は満足だ。

完璧とは到底言えないが、それでも素晴らしい人生であった」


ユーリはそう言った後、手に持っていた拳銃を構えた。

それは扉ではなく、自らの口の中。

喉奥に冷たい銃身を押し込むと、彼はゆっくりと目を瞑る。


そして、扉が蹴破られる音と共に彼の指は引き金を引く。

発射された弾はユーリの脳幹を瞬く間に弾き飛ばし、彼の六十数年に渡る人生に幕を下ろしたのだった。



ユーリ・グラヴィティス。

後に悲劇の英雄として世界にその名を知らしめた男の人生はここに終わった。

彼亡き後の新生王国の末路は悲惨な物と言っていいだろう。

再び王政が始まって数年もした後に王国には反乱の嵐が吹き荒れる事になったのだから。

人々は飢えて苦しみ、戦渦に巻き込まれ、そして泥沼の内戦状態へと突き進んでいったのだ。

それはやがて周辺諸外国の介入を招いてしまった。

軍事的怪物ともいえる英雄達を自らの手で殺した愚かな国はその波に抗う術を持っていなかった。


かつて栄華を誇った筈の王国の首都は外国勢力によって分割をされ、その国土は細切れにされていったのだ。

かくして英雄の悲劇の死と共に王国はその歴史に永遠の幕を下ろした。





世界は変わる。

時は東暦1876年2月18日

場所はイストリア大陸南西部にある王国、グレスレント王国の首都グレスメント

狭いとすら感じる程に厚くなった雲が空を覆い隠し、王都を白景色に変えようと雪を降らす中。

王都の南西部にある一級地、貴族と大商人しか居を構える事が出来ないその地に建てられたとある館の一室にて、複数の男女が集まり、必死な形相をしていた。


「ううっ…うッ!――ッ!?アアアァ―――ッ!!」

「落ち着いて下さい、奥様!」

「大丈夫だマリア、私はここにいる。だから気をしっかり保てッ!!」


そこから聞こえるのは一人の女の奇声。

そんな声を発しているのはベッドに寝転がり額から玉のような汗を幾つ物浮かべている少女だ。

彼女はこの家の主であるホーエンハルト伯爵の妻であるマリア。

齢にすれば十六にも満たない彼女の腹は盛り上がっている。

彼女は妊娠していて、産気づいていたのだ。


「っ…ぐっ、あがっ……ふううっ――ッ!!」

「奥様、もう少しですぞ、もう少しですッ!」


侍女によって抑えられ強制的に開かれた股の間を覗き込み、額に同じ様に汗を流しながら必死に手を動かすのは一人の老婆。

それを夫であるホーエンハルト伯爵は妻の手を握り締め、もう片方の手を血が出る程に握り締めて見守り続ける。


結婚以来、すれ違う事が多かった夫婦の気持ちは今、完全に重なり合っていた。

ただ、ただ、無事に子が産まれてきて欲しいと。


「奥様、もう少しです、踏ん張りなされッ!!」

「ふう――――ッ!ふう――――ッ!ン、ッッ!!はぁ、はぁ……」


マリアの産道からは既に頭が見えていた。

産婆は手を差し入れ、必死に取り出そうとしている。

マリアも陣痛に来るたびに力を込める。


「頼む、マリアッ!もう少しだッ!もう少しなんだッ!!」


伯爵の言葉に励まされたのか、マリアの産道からゆっくりとだが赤ん坊が降りてきていた。

産婆をそれを見ながら、徐々に、徐々に、胎児を引き出していく。

そして、その時は訪れる。


「――ッ――ッ――ッ!?!!!!!」


声のならない悲鳴をマリアは上げながら、背中を思いっきり仰け反らせたのだ。

そしれズボォッ!!と赤ん坊はマリアの産道からこの世へと産まれでた。

ビチャビチャという音が部屋に響き渡らせながら、持ち上げた産婆の手の中には赤ん坊が居た。


「……ぎゃっ、んぎゃぁっ、ぎゃぁっ!!」


産婆が背中を擦ると同時に部屋には赤子の鳴き声が響き渡る。


「おめでとうございます、旦那様、元気な女の子ですぞッ!」


産婆が抱え上げて見せた子に妻の手を離しヨロヨロと力無い足取りで近寄った伯爵はその手の中に自らの血を分けた子を抱く。

未だに泣き続ける子を見た伯爵の目から何時の間にか涙が溢れ出ていた。

その子を抱いたまま頼りない足取りで荒い息を吐く妻の下に近寄った伯爵は跪き、その子を妻に見せる。


「……ありがとう」

「はぁ、はぁ、あ、あなた?」

「ありがとう、本当にありがとうマリア。

本当によく頑張った、ありがとう。

この子が私とお前の子だ」


彼女が今まで見た事が無い夫の泣き顔に驚愕の感情をマリアは覚えるが、その感情はすぐさまに見せられた自らの赤ん坊の姿に掻き消える。

その赤ん坊の姿は女だったマリアを瞬く間に母へと変え、顔に笑みを浮かばせる。


「この子が私の赤ちゃん……」

「そうだ、私とお前の子だ」


未だに目からポロポロと涙を零し続ける伯爵の顔にマリアは手を差し伸べ、涙を拭き取る。


「ふふっ、分かりましたから、そんな風に泣かないで下さい。

笑いましょう?

この子が最初に見る父の顔が見せるのがそんな泣き顔では呆れられてしまいますよ?」

「あ、あぁ、そうだな」


伯爵は妻の言葉を聞き、涙を着ていた服の袖で拭うと笑みを浮かべた。

その後、夫婦は顔を寄せ合い、未だに泣き続ける赤ん坊を笑顔で見つめる。


「そういえば、この子の名前はもう決めてらっしゃるんですか?」

「あぁ、ユーリヤ。この子の名はユーリヤだ!」


その瞬間にホーエンハルト家第一子長女ユーリヤが誕生したのだった。


――――そして誰も知らなかった。


(ここは何処だ!?いや、そもそもなぜ私は生きている!?

なぜ、何も見る事が出来なくて聞く事もできないのだ!!)


泣き続けるユーリヤの意識が異世界の英雄の物だという事を。



混乱する英雄と再び咽び泣き始めた夫をあやす妻の姿を、雪が降り続ける王都の重く薄暗い空はただじっと眺め続けていた。

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