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瑠香

可愛い妹・・好きですか?

「俺、車で来ているのでそれでいきませんか?先輩のトコ駐車場ありますか?」

「家の車あるけれど駐車場2台止められるからいいよ。」

理工学部のある建物から駐車場まで男3人でのんびり歩いていると

「こいつの妹、超可愛いんだぜぇ。もうね、アイドル並みだよ。

 っくしょー、八雲も顔いいしなぁ俺もイケメンになりたかったなぁ」

手をつなぎながら歩いているカップルを横目に望月がぼやいた。

「そんな、望月先輩だって男らしくてモテそうですよ」

「そうか?岡見君、お前良いヤツだなぁ。今度飲もっか」

「マジっすか?ありがとうござーっす」

どちらかと言えば少々人見知りする俊哉と違って

岡見は誰とでも馴染むのが早いように見える。

まだ1〜2回程しか顔を合わせてないはずの望月と既に打ち解けている様子を見ると

その人懐っこさがうらやましく感じた。

学校から自宅までの運転中も2人の掛け合いは続き

俊哉はたまに話を振られ答えるといった会話形式が続いた。

「あ、八雲先輩この道あってます?」

「大丈夫だよ。次を右に曲がって3軒目だよ」

「あざーす」

かなり略式なお礼を言い岡見は安全運転で敏哉の自宅ガレージにきっちり駐車した。

「おじゃましまーす!」

二人の挨拶が重なった。

「きっと誰もいないから遠慮しなくていいよ。」

「あれ?妹さんいらっしゃるのじゃないですか?」

「妹は今日はピアノがあるから7時くらいにならないと帰ってこないよ。

 父は向こう2週間オーストラリアへ出張なんだ」

母親は?

岡見は疑問に思ったが人の家庭環境をとやかく聞くのはよくないだろうと言葉を飲み込んだ。

既に何度か敏哉の自宅にお邪魔している望月は手慣れた調子で

敏哉の自室のプレステ2をセットし警察官や女子高生といった様々なキャラクターが

ゾンビを拳銃で打ちまくるはやりのゲームに熱中し始めた。

「俺もやっていいっすか?」

岡見はもう一つのコントローラーを手に取りうきうきといった様子で望月に尋ねた。

「いいぞ。んじゃお前後方援護して」

「はいっんじゃ俺、スーザン使いますね」

岡見はビジネススーツに身を包んだ秘書風キャラクターを選択し、ゲームに加わった。

敏哉はそんな二人のゲーム画面をぼんやり見ながらなんともなしに専門誌を手に取り

頭には入らなかったがぱらぱらとめくった。

(何かお茶やお菓子でも出すかな・・・)

ゲームに興じる二人を眺めながら考えた時

「ただいまー」

玄関から瑠香の声が聞こえた。

「お帰り。早かったね。ピアノは?」

階下に降り、リビングのソファにドサッと学校指定鞄を置いた瑠香に尋ねた。

「お兄ちゃーん。今朝言ったじゃない。

 今日のピアノは先生が演奏会でいないから来週の土曜日に振り替えだって・・」

あ・・・そう言えばそんな事を言っていたような気も・・・・

「すまん。すっかり忘れていた」

「もー、お兄ちゃん忘れっぽいんだから!

 そうだ。お客さん来ているの?」

玄関の靴を見たのだろう。

「うん。俺の部屋でゲームしに友達が二人来ているから・・・・」

「そう。どうする?お夕食食べていってもらう?

 そうだったら何か作るけれど・・・」

母が死んでから家事一切を瑠香が取り仕切っている。

高校生でありながら掃除も洗濯も料理も普通の主婦並みにできており、

その中でも料理に関しては凝ったお菓子から和食まで幅広く作ってくれる。

瑠香は中学生になったと同時に家事を少しずつではあるが父から積極的に教えてもらい、

炊事、洗濯・・・そして最初は敏哉の役目であった掃除担当も引き受けるようになった。

そんな姿を父は素直に喜び、兄である敏哉も申し訳ないと思う反面

自分の負担が減ることと自分がするよりも遥かに手際良くきれいに掃除する

瑠香の手腕に拍手を送った。

「どうする?」

制服のジャケットを脱ぎ小首をかしげた。

「あ・・んーと、聞いてくるよ。」

敏哉はインスタントコーヒーを探しながら空ろに答えた。

「もぅ、お兄ちゃん。お客様にお茶出したいの?

 じゃあ私やるからお兄ちゃんお部屋行っていていいよ。」

もたもたしている兄を見て瑠香はくすりと笑った。

「いいの?ありがとう。俺台所よくわからなくって」

こんな時に炊事周りすべてを瑠香に頼り切っている現状を痛感してしまう。

瑠香も今は高校生だから時間があるが、これが大学生になり社会人になったら

今のように家事に時間も割いていられないだろう。

そろそろ自分も色々覚えないといけないかもしれない・・・

敏哉は階段を上がりながらぼんやり考えた。

妹が欲しい今日この頃です

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