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47.【最終話】世界は今日も平和

「どうだ、この私の軍師っぷり。最後に二人が消えたことにすれば、伝説は伝説の中に消えるって感じでますますいい感じだろう。さすが私。伝説の勇者カイ。……って何やってるんだアキラ」


 同じくシャワーを浴びて出てきたアキラは、自分の体のにおいをくんくんと嗅いでいる。


「いや、まだホルマリンの匂いがするような気がしてさ」


「仕方ないだろう。腐らせないようにしようと思った結果だ」


「わかってるんだけど……」


 オリジナル・アキラの言葉に、久々に身に付けた若い体が落ち着かないのか、アキラはもぞもぞしている。


 もっとも落ち着かないのはそれだけの理由ではないのだが……。


「カイ、その格好、どうにかならない?」


「おかしいのか?」


 くるっと回ってみせるカイにアキラはぶんぶんと首を振った。


「いや、綺麗だよ。綺麗なんだけど……」


「じゃあ、いいじゃないか」


 カイは胸元と背中が広く開いた赤いカクテルドレスをひらめかせてアキラに抱きついた。


「うわわわっ!」


「相変わらず細っこいな、アキラは。このモヤシ!」


「そんな嬉しそうな笑顔で言われてもな……」


 じゃれつく二人を見ながらオリジナル・アキラはため息をついた。


「今回の最大の誤算は、勇者が『女性』だったことだな……」


 ぼやいた瞬間、胸ポケットの通信端末が鳴り響いた。 


 慌てて応答ボタンを押すと、キンキン甲高い声が響いた。


『オリジナル・アキラ! 早くあたしをそっちに連れて行け!』


「ミユさん。ちょっと待って。そんなに早くあなたまでその世界からいなくなっちゃったら大騒ぎだから、もう少し。いい子だからもう少し待っててね」


『もう……』


 映像がなくても分かる。あの愛らしい少女は今盛大にほっぺたを膨らませている。


『仕方ないな。もう少しだけ待っててやるよ。……愛してるよ』


 ちゅっ、という音とともに通信が切れると、オリジナル・アキラは机につっぷした。


 なぜだかあの少女は、この籐のたったアキラにご執心なのである。


(オリジナルに会った瞬間、アキラは盛大にふられた)


「まったく……」


 よいしょ、と腰を上げるとオリジナル・アキラは苦笑した。


「女のことは、昔から計算では答えが出ない」


「オリジナル! そろそろ乾杯しよう!」


 アキラを嬲るのをやめたのか、カイがグラスとワインの瓶を掲げている。


 その横には困ったような嬉しそうなアキラの顔。


「ミユさんが来たらまた祝い酒はするんだからな。とっときのワイン、残しておけよ!」


 そんなオリジナルの顔にも、かつてない笑顔が浮かんでいた。


 世界は今日も、魔王と勇者のおかげで平和だ。


―― 了 ――



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