41.神への道
呆れた口調で言うカイは、雷鳥の首につけられた手綱を握っている。
『いや、私はどの動物でも従わせることができるから』
ルビーを人質に雷鳥の檻まで来たカイがこともなげに言う台詞に、アキラはがくん、と顎を落とした。
そういえば、街で肩に小鳥がとまっていたように思えた。
満点の星空の中、遠くなる岩の砦島を見下ろすアキラにカイは笑った。
「で、どこへ向かうんだ?」
「龍王のところ」
断言するカイにアキラは渋面になった。
「確かにお前に黙っていたけど、俺も魔物なら言うこと聞かせられるぞ。でも、小物だけだぞ。しかも初対面の魔物なんてとてもとても……」
ぱたぱたと手を振るアキラにカイは呆れた。
「お前、魔物にも人見知りか……」
「魔物魔物って言うけどさ、俺にはあんまり人間との違いないっていうか、他人が怖いのと同じ程度に怖いだけっていうか」
「そこが真性魔王なところだよな。価値観がまず違う。それがあいつらにはどう説明したって、わかってもらえないことなのさ」
慣れた手つきで手綱を操るとカイは言った。
「龍王に会いに行くのは、別にお前をテストするためじゃない」
「じゃ、何をしに行くんだよ?」
「龍王はな、入り口にすぎないんだよ」
氷王を思い出しながらカイは言った。あれから何体か龍と言われるものを倒しにいってはいるが、決まってその後には『女神』が現れる。
「龍王は人外の何かと対話するために作られた施設なんじゃないかと私は思っている」
「そこへ行って、神様に話を聞くのか?」
「サフィは人の意思だけで片付けようとしているようだが、こんな王国全土にわたる意識へ影響を与えるなど、とても人の手によるものとは思えない。
長い年月をかけて、と言っていたがこの王国ができて何年になるのか知っているか?
たかだか八十年かそこらだぞ。いくら効率よくやったところで、無理がある」
「もうなんでもござれ、って気分だけどな。ところで龍って……強いんじゃないのか?」
不安げなカイに悪戯っぽくカイは笑った。
「大丈夫だ。どんな強い相手が現れようと、私がお前を守ってやるから」
「魔王を守る勇者か、何だか変な関係だよな、俺たち」
少年たちは声を合わせて笑った。
暗い色合いの無機質な部屋の中には、窓のついた円筒形の金属の筒が行儀よく配列されている。
アキラは黙って立ち尽くしていた。
そして、今、全てを思い出していた。
あの暗い部屋はどこだったのか。なぜ苦悩するあの男が妙に懐かしかったのか。
カイも黙っていたが、それはアキラとは異なり、驚愕のためだった。
円筒形の金属の筒の中には年齢は別々だが、一目で同一人物だとわかる人間が無数に横たわっていた。
カイが絶句しているのは、一番近くにあった筒の中にいる人物を見たからだ。
それは老化する前のアキラの姿に他ならなかった。
「対決が終結する前にここに来た勇者と魔王は君たちのケースが始めてだ」
傍らの机に座った白衣の男は、黒縁の眼鏡を中指で押し上げた。
神経質そうな鋭い目にこけた頬。皮肉気にゆがめられた口元。
細かい部分に異なるところはあっても、それは三十台のアキラ、と言って問題ない容貌をした男だった。
雷鳥に乗って龍王の棲家までやってきた二人だったが、そこには龍の姿はなく、ただ巨大な門が聳え立っているだけだった。
カイの力ではびくともしなかった扉だが、アキラが表面を何かの手順で撫でると音もなく自然に扉は開いた。
導かれるままに長い回廊を通ってここまでやってきた二人の目の前に現れたのが、この部屋だった。
「ここは……いったい」
「まして勇者がここに来るとはね……。ま、とりあえずその辺の事情は三八四号に聞くとしようか。三八四号こっちへ」
「アキラ!」
男に請われるままにアキラは前へ進み出て、掌を男にかざした。
男も同じように掌を重ねる。
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