黄花3
ツクヨミ様は自分が神であることに誇りを持っている。だから滅多なことでは感情を表には出さない。ツクヨミ様はわたしのことをどう思っているんだろう?
友人たちが意中の男子の話をしていたのを思い出す。わたしは最近彼女たちと同じようなことをツクヨミ様相手に考えていた。そんな時、桃花から「まじない花」の話を聞いた。わたしは思い切ってツクヨミ様にその花を手渡すことにした。
ツクヨミ様にまじない花を手渡してから、彼の一つずつの動作、眼差し、言葉を意識してしまう。
両想い。とても甘い響き。ツクヨミ様がわたしと同じように思ってくれているなんて。
この頃にはわたしはほぼ毎日ツクヨミ様に会いに行っていた。ツクヨミ様はわたしに優しく微笑みかけてくれる。わたしもツクヨミ様に会いたくて仕方がない。お互いがお互いを必要としている。一緒にいるとそう感じる。
「きゃっ。」
あんまり急いでツクヨミ様の元にいこうとしたら、大木の根に足を取られ転けそうになった。
「気をつけて。怪我をしたら大変だ。」
わたしはツクヨミ様の胸の中にいた。転けそうになったわたしをツクヨミ様が抱きとめてくれたんだ。ツクヨミ様の匂い、わたしとは違う固い体。わたしの心はときめいた。
「あはは。ありがとう。気をつけるね。」
顔を上げると視線を落とし、優しい眼差しでわたしを見つめるツクヨミ様と目があった。
「今日はねっ…。」
急にものすごく恥ずかしくなって、今日あったできごとを話しなんとか気持ちをごまかした。
「黄花、あんた昼間いったいどこに行ってるの?」
最近外出の多いわたしに桃花が探りを入れてきた。
「どこだっていいでしょ。ちゃんと仕事終わらせてるんだから。」
「ふうん。男のところでしょ?あんた最近よく声かけられるもんね。で、誰にしたのよ?喜伊知?大葉?」
桃花が候補にあげた名前は最近わたしにしつこく声をかけてくる男子たちだ。同い年でつい最近まではいじわるをしてきたやつらなのに好きになれるはずがない。それにどうしてもツクヨミ様と比べてしまう。ツクヨミ様に比べたら彼らは全くガキだ。わたしの心が動くはずがない。
「ま、いいわ。そのうち紹介しなさいよね。」
桃花はご機嫌だ。もうすぐ嫁ぐことになっているから。相手はまじない花を手渡した相手だとか。十六を過ぎた桃花はわたしから見ても幸せそうで輝いていた。好きな人と夫婦になれるなんて羨ましい。
あれから桃花が嫁ぎ、久しぶりに家に帰ってきた。桃花と仲の良かった友人の憂那が会いに来て、おしゃべりに花が咲いていた。
「で、どうだった、アレは?」
「憂那ったらいきなりそれ?」
「だってそれが一番肝心でしょ。今後の参考のために感想聞かせてよ?」
さっきから憂那は桃花にあれがどうだったのかとばかり聞いている。
「あれってなんなの?」
「ほら、あんたがそんなことばかり聞くから、黄花が興味持っちゃったじゃない。」
「黄花も聞きたいよね。だってこの子と同い年の子、先日嫁いだばじゃりじゃない。もう知っていないといけないわよ。月のものだってきているんでしょ?それに自分の身だって守れないとね。いきなり襲いかかってくるやつだっているんだから。」
「んもうっ。」
なぜか桃花はわたしには知られたくないらしい。
「なんの話?」
そうなると余計に知りたくなる。
「男と女の話。夫婦になったらなにするか、あんた知ってる?」
憂那が真剣な眼差しでわたしに問いかける。
「知らない。」
「ほらね?」
憂那は言わんこっちゃないという感じで桃花を促した。わたしの反応に桃花は驚いたのか座ったままよってきてもう一度同じ質問をした。
「黄花、ほんとになにも知らないの?あんたが熱心に通っている男はあんたになにもしてこないの?」
「話してるよ。」
「ちょっと!黄花に男がいるの?どこの誰よ?」
「秘密主義みたいで教えてくれないの。」
「あんた最近綺麗になったと思ったらやっぱり。でもなにもしてこないなんて、そいつ玉ついてるの?二人きりでいるんでしょ。」
憂那の発言に桃花も一緒になってケラケラと笑う。わたしはツクヨミ様がバカにされたように感じ頭にきた。
「きちんとしている人なの!」
「あんたに欲情しないんじゃないの?」
桃花の言葉にわたしは顔か熱くなった。
「欲情って。」
その言葉はとてもいやらしい響きだと思った。
「因みに黄花はどう?そのきちんとしている人に触れたいとかくっつきたいとか思わないの?」
憂那の質問にわたしは思い当たった。
「それは。」
ツクヨミ様に抱き留められらとき、もっとそうしていたかった。
「抱き合ったり、キスしたりってこと。ゆくゆくは子供作らなきゃいけないしね。」
「それは逆でしょ。好きだからアレして子供ができるんじゃない。それでどうだった?やっぱり痛かった?」
「そりゃまぁ最初は。だんだん良くなるわよ。わたし、嫌いじゃないし。」
「もう、のろけちゃって!」
「ねぇ!あれってなに?」
二人の話についていけなくてわたしがひときわ大きな声で問いただすと、二人の会話がピタッとやんだ。
「しょうがないわね。きちんと教えてあげるから覚悟して聞きなさい。」
桃花がまっすぐわたしを見て言った。わたしは桃花と憂那から愛し合う男女がいきつく行為についての説明を受けた。
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