春希の初出陣
俺は貴志さんと一緒に道場で組手をしていると、
遠くから足音が聞こえた
「ん?誰だ?」
「はあ、はあ、……やっと休める…」
俺は慣れない組手で、しかも初めての相手でやり合うだなんて、ハードルが高すぎた
疲れのあまり、尻から勢いよく座り込んでしまった
「あっごめんな、つい久しぶりで勢いが止まらなかった」
平謝りする貴志さん
「もう、手加減してくださいよー!」
「俺たちはタメなんだ、敬語も、さん付けもいらない 貴志でいい お前のことが気に入った」
「貴志……」
来客の気配に気づいたのか、貴志は後ろを振り向いた
「そろそろ出てきたらどうです?」
「ふ、気づいていたか 新しい能力者たち」
長い茶髪の髪の毛と、スラリとしたスタイルに、俺はただ見入っていた
「あなたは…」
「はじめまして、君たちのリーダーとなる"杉田壮志"です 去年引退したばかりですが、急遽、司令官から命令が降りました」
杉田さんの挨拶に、唖然とする俺たち
「は、はじめまして!えっと…俺は"赤島春希"です!!」
そういうと、杉田さんはクスクス笑う
「ふふ、分かりやすいね、赤島くんは服装が赤、だからすぐ覚えられそうだ そして、」
貴志は杉田さんに振られると、キッとした表情に変わった
「俺の事は忘れちゃいないだろう?"緑原貴志"だ」
「覚えてるよ同じ仲間だからね 去年まで一緒だったから」
「貴志も、杉田さんも、あの司令官に呼ばれて?」
貴志は顔を横に背ける
「司令官は、俺たちを助けてくれたんだ…」
――回想はじまり
蒼山滝が司令官になった理由は、前の司令官、シルヴァ・トラーズが戦いが終わり、長期のコールドスリープに入る、という理由だった
しかし、シルヴァが司令官をやめた翌年、蒼山滝は能力者の仲間、陽桜瞳と結婚した
その時に、戦いは始まってしまった
「せっかく、幸せになろうとしているのに!!こんな時に!!」
陽桜瞳の母が念じていた
能力者のリーダーが結婚すれば、幸せを妬み敵が襲いかかる、と
強い力を持っていれば持ってる程、その可能性は高くなる
そして、その戦いに混じっていたのが…
赤島春希の父親と、緑原貴志の父親であった
彼らはのちに蒼山滝と合流し、再びリメンバーズチームを結成した――
――回想終わり
「あなたはどのタイミングで蒼山滝さんと出会ったんですか?」
俺たち3人はサロンへ移動した
「俺は、そうだな、敵が過激化してきた去年頃に出会った」
「てことは1年ぐらいの期間だったんですね 能力者になっていたのは」
俺は腕組みをして話す
「その時に司令官の親友、根口智嬉さんも攫われた… 敵の狙い通り、司令官は親友が攫われた時は半狂乱だったんだ 能力も暴走して、旧能力者施設は1部だが破壊されてしまった」
杉田さんは悲しそうな顔で俺たちに訴える
「そして、今度から俺たちが戦う敵の名前は?」
「"リュザ" だ」
「リュザ…?」
その時、サロンの天井から声が聞こえた
「ふははは、久しぶりだな杉田壮志!!」
「来たな…リュザ…リュザ・ドーガズ!!」
テレポートで現れたのは、妖しさ漂う黒い衣装、白い長髪の男性だった
「根口智嬉は私が頂いた 司令官の能力の暴走を引き起こすためにな」
「ふざけるな!! 」
「因みにまだ彼は生きているぞ しぶといやつだ、私のアジトの中で生きれる者は少ないのに っ…くくっ」
杉田さんは、腰のポケットから小さい折りたたみの棍棒を繰り出した
「く、武器は今これしかないっ!!」
すると、司令官室の方向から、司令官の声が聞こえてきた
「あぁぁぁ――っ!!!」
「あの悲鳴は!?」
「司令官!!」
司令官の悲鳴が聞こえると、リュザは不敵な笑みをこぼした
「ふっ…… はじまるぞ…能力の暴走が…」
「お前、司令官になにを!!」
俺はまだ武器もなにもないが、先程貴志とやった組手を思い出し構える
「まだ青い小僧が… 生意気な!!」
リュザは俺に衝撃波を与えた
「くっ!! なんとか、耐えたか…」
俺は咄嗟にサロンにあったカウンターテーブルを盾代わりにして交わした
「頭は切れるようだな これは挨拶がわりだ」
リュザはそう捨て台詞を吐いてアジトへ消えた
「リュザ…リュザドーガズ…」
初めて見た新しい敵に、俺は震えが止まらなかった