第85話 マナスの森のロンにゃ
「しかし、お前、ラッキーだったな。最初に出会えたのが俺で。この森は凶暴な魔物も多いからな。」
「ロンはそんな危険な森に住んでいて大丈夫なの?」
「俺は平気さ。強いからな。」
理沙はロンのぬいぐるみの様な姿に警戒心が薄れるのかごく自然に会話をしていた。
「私以外、他には誰も落ちてきてはいなかった?」
理沙は自分が竜巻に巻き上げられた時、来人のにゃんこ騎士も一緒に巻き上げられるのを見ていた。
「いや、落ちてきたのは理沙だけだ。」
「そう……」
「今日は休みな。夜が明けたら近くの村まで送って行ってやる。」
来人は大丈夫だったかしら?
理沙は自分のことより来人のことを心配はしていた。
「ところでお前、剣も持たずに杖を持っているってことは魔法使いなのか?」
「え、そうね、魔法少女ってことになるのかな。」
理沙は何気に杖を手に取り振った。
カチャカチャ
テーブルの上に置かれたカップやお皿がリズムを刻んで動きだし曲を奏で出した。
お皿達は一曲奏でると元の位置に自分で元の位置に戻った。
「凄いな、こんな魔法は見たことがない。」
「凄いでしょ、魔法少女だもん!」
理沙は自分が一番驚いていたくせに自慢した。
「あれだけ動いて中身がこぼれてない。」
「そっちかよ!」
理沙は役に立つかは別にして本物の魔法少女になっていた。
「ところでここはどういう場所なの?」
「お前、異界人だから何も知らないのか。仕方がない。特別に教えてやる。マナスの森だってことは教えたな。」
「うん。」
「マナスの森はマジリアという国の北西にある魔物の森だ。危険な魔物もいるから、めったに人が立ち入ることはない。森の東に小さな村がある。そこに魔法使いのじいさんが住んでいるからあとはそのじいさんに聞きな。」
「それだけ?」
「それだけだ。」
まぁ、ロンには大して期待はしていなかったのでそれ程、落胆はしなかった。
その魔法使いのおじいさんが元の世界に帰る方法を知っていると良いのだけど。
翌朝、私はロンを案内人にして森の東にある村へ出発した。