第66話 城から逃げるにゃ
「王よ、ミーナ姫の体の中に龍珠かあるとはどういうことです?」
デュークはマリウス王の言葉に思わず聞き返していた。
「黒龍と戦った英雄王の中でも我王家の祖先が金龍から龍珠を託されたのだ。王家の者は代々、龍珠を体内に宿し、その者に子供ができるとその子供に龍珠が受け継がれていった。龍珠を宿した者が死ぬとその者に近い血筋の者が龍珠を宿してきた。そういった訳でミーナに龍珠が宿ったのだ。」
「そんな秘密があったのですね。その事を姫は知っているのですか?」
「いや、ミーナは知らん、教えておらんのだ。成人の日に伝えようと思ってな。まあ、龍珠が体内にあったからと言っても別に身体に害が有るものでもないしな。まさか、魔人が龍珠を狙って来るとは考えていなかったのだ。」
マリウス王はかなり軽い性格のようであった。しかし、黒龍が封印されてから今まで龍珠を狙う者が現れることは無く、王がそう考えても仕方が無いことである。
そのマリウス王とデュークの話を聞いていた者がいた。それは姿や大きさは妖精のエリスに似ていたが肌の色が褐色であった。彼女は│闇の妖精のティアであった。
「龍珠はミーナ姫の体内にあったのか。城を探しても見つからないはずね。マリウス王に張り付いていて正解だったわ。」
ティアはマリウス達に悟られないようにその場を離れると城の一室、主の元へ飛んでいった。
「リディアか。」
「シェード様、良い知らせです。龍珠のある場所が分かりました。」
「そうか。」
「助けに現れたデュークに王が竜珠のありかを喋りました。龍珠はミーナ姫の身体の中です。」
「何、ミーナ姫の体内であったか。そうか、殺さずに逃がしておいて正解だったな。それでドーラ達魔人には、気付れていないのだろうな。」
「大丈夫です。それでマリウス王達は、どうなさいます。」
「放っておけ、龍珠のありかが分かれば用なしだ。ミーナはミシワールに向かったのだったな。」
「はい、ミシワール国に放った密偵から、ミーナ姫がミシワール国に入ったとの情報が入っております。」
「よし、ティア、お前は、ミシワールに向かい、ミーナの行方を探れ。私は、ローマシアとミシワールの前線へ向かう。」
「分かりました。ただ、ミーナ姫が死ぬと龍珠は誰か別の者に移動するらしいですよ。」
「それは厄介だな。ミーナを殺しても、龍珠の封印は解けない上、龍珠のありかも分からなくなるってことだな。」
「そのようです。」
「よし、行け。私も直ぐに出発する。」
デュークはマリウス王と王妃を連れて西の塔の屋根の上に登っていた。
「デューク、こんなところに登ってどうやって逃げると言うのただ。」
「大丈夫です迎えを呼びます。」
そう言うとデュークは小さな笛を取り出すとそれを吹いた。
笛からは何の音もしない。
すると空から人の身体程はある大きなフクロウが屋根に舞い降りた。
「そのフクロウで逃げるのか?それにしては少し小さくはないか。」
「大丈夫です、こいつに直接乗る訳ではありませから。王妃様、失礼。」
デュークはそう言うとロープを取り出し、王妃に結び付けた。
「王様、ロープの端に付いている輪に足を入れてしっかり掴まって下さい。」
デュークはそう言うと自分も別のロープに掴まり、その端をフクロウに掴ませ合図した。
フクロウはその大きさに似合わず力強く羽ばたきデューク達3人と舞い上がり夜空に消えて行った。