第100話 アリストン山へ挑戦するにゃ
アリストン山の外周には巨大な巨大な壁がきづかれており、ヨーサという老人が入口の扉の番人をしていた。
俺、修一、アリア、エリス、ブリットの5人は扉を抜け壁の内側に入った。
壁を抜けると草原で幅の広い石畳の道が山の麓の林に向けて延びていた。
「この道を外れるにゃということだにゃ。」
「龍は一匹でもかなり強敵だからな、まとめて襲われたらひとたまりもないだろう。」
「修一は龍と戦ったことがあるの?」
「龍騎士と模擬戦は何度かしているけどアリストン山の龍は強力らしい。ダリスの龍は城生まれの城育ちだからな。」
しばらく、石畳を歩いていくと100メートル幅程の石畳で作られた円形の広場に出た。
広場の中央に黄色い龍がゆったりと座り込んでいる。
「ほう、この道を人がやって来るのは、10年ぶりだな。」
「この龍、喋れるみたいね。」
「ランクの上位の龍は皆喋れるよ。龍騎士の龍も喋れるからな。」
「そうなんだ。」
「山の頂上に行きたかったら私に力を示してみせよ。」
「要は倒してみろってことにゃのか?」
「私を倒すとは面白いことを言う猫だ。倒されることは望まないが出来るものであればやってみるが良い。私の名はアバラン、第一の試練を任されたものだ。第一の試練は私をこの円から外に出すか背を地に付けさせることだ。全員でかかってもかまわぬぞ。」
「要するに相撲だね。」
修一はよほどの自信があるのか、余裕の表情である。
「それじゃあ、やってみるにゃ。」
「来人、まずは俺から行くよ。」
「ほう、一人で挑戦するのか、変わった格好の人よ。」
「俺は赤と青の流星だ。」
そう言うと修一はアバランに組み付くと体長30メートルはある龍の巨体を持ち上げた。
「おお、凄いにゃ。」
「なるほど、人らしからぬ怪力だ。それでどうする、流星とやら。」
「こうするのよ。」
修一は勢い良くアバランを円の外に向けて投げた。
アバランはブンと音を上げ、円の外に飛び出したかに見えたが、円を出る直前、空中でピタリと止まった。そしてアバランはゆっくりと背中の翼を動かし円の中央へ戻ってきた。
「えー!空を飛ぶの有りなの。」
「背に翼を持つ龍が飛ぶのは当たり前であろう。力は強いことは認めるがそれだけではだめだ。」
アバランは修一に向けて尻尾をひと振りした。
バシッ!
龍の尻尾に叩かれて修一は円の外に吹き飛ばされた。
円を越え道から外れた瞬間、修一の姿はその場からかき消されたように消えていた。
「修一!」
「心配するな、お前たちも後を追わせてやる。」
アバランは、そう言うと翼を羽ばたき突風を起こした。
一瞬、修一が消えたことに気を取られていた俺たちは、踏ん張ることができず、全員が円の外に吹き飛ばされていた。
そして円の外に出た瞬間、俺たちはかき消されたようにその場から消えていた。
ドサ、ドサ!
次に俺達が姿を現したのはヨーザの小屋の前であった。
「お帰り、やはり、まだ早かったようじゃな。」
ヨーザが目の前で笑っていた。